「医療ローン」を利用することで、手元にお金がなくても、高額医療を受けられるようになります。しかし、金利や審査の厳しさ、他のローンとの違いなど様々な特徴もあります。本稿では、立山慶之司法書士監修のもと、医療ローンの利用について、基本的な知識とともに解説します。

医療ローン(メディカルローン)は目的別ローンの一種

医療ローンは目的別ローンの一種で、医療費を賄うのに使えます。「メディカルローン」や「医療クレジット」なども同じものです。

医療ローンには、病気を治すための治療だけではなく、クリニックでの美容目的の施術などにも使えます。保険適用外の自由診療でも問題ありません。利用可能な用途の具体例は、以下のとおりです。

手術費用

・入院費用

・先進医療費用

・歯列矯正費用

・美容整形費用

・医療脱毛費用

・豊胸費用

・レーシック費用

・AGA治療費用

医療ローンの借入先は、銀行や医療機関と提携している信販会社です。利用できる具体的な用途や、ローンをいくらまで借りられるかは、借入先によって異なるためあらかじめ確認しておきましょう。

医療ローンの金利相場

医療ローンは、銀行フリーローンや消費者金融カードローンよりも金利が安い傾向にあります。医療ローンは用途が限られている分、低金利に設定されているのです。

医療ローンは、大きく「銀行系医療ローン」と「信販系医療ローン」の2つに分けられます。銀行系医療ローンは、その名のとおり銀行が提供している医療ローンです。金利相場は2.5~10%程度と低めです。実際にいくつかの銀行系医療ローンの金利を確認してみましょう。

銀行系医療ローンの金利

参照:医療向けローン|中国銀行公式サイト

参照:つくばメディカルローン|筑波銀行

参照:ちばぎん医療ローン|千葉銀行

銀行系医療ローンは、金利が低い代わりに審査は厳しい傾向があります。また、審査期間も長めです。

一方信販系医療ローンは、医療機関と提携している信販会社が提供する医療ローンです。金利相場は、平均4~14%です。実際にいくつかの信販系医療ローンの金利を確認してみましょう。

信販系医療ローンの金利

参照:先進医療費クレジット|SMBCファイナンスサービス公式サイト

参照:ジャックスのデンタルローン デントキュア|ジャックス公式サイト

参照:多目的プラン|アプラス公式サイト

信販系医療ローンの金利は、銀行系医療ローンよりも高めです。しかし、審査は比較的緩く、審査期間も短い傾向があります。

医療ローンの審査について

医療ローンの利用を検討する場合は、審査の厳しさや、審査通過のコツなども気になるでしょう。では、医療ローンの審査について解説します。

審査の厳しさ

医療ローンの審査は、銀行フリーローンや消費者金融カードローンなどと比べると厳しめです。基本的に金利が低くなるほど、審査も厳しくなる傾向があります。

特に、金利の低い銀行系カードローンの審査は厳しいため、もし落ちてしまった場合は信販系医療ローンなど他の選択肢を検討してみましょう。

審査基準

審査基準は、他の一般的なローンと基本的に変わりません。具体的には、おもに以下の項目をよく見られます。

・年齢

・年収(申込者本人以外の収入も見られることがある)

・職業

・勤務年数

・雇用形態(正社員契約社員、フリーターなど)

・家族構成(配偶者の有無など)

・他社借入状況(年収の何割程度の借入があるかなど)

・信用情報(信用情報機関ブラックリスト掲載の有無)

要するに、返済能力の有無が問われます。

例えば、年収が低かったり、過去に家賃やクレジットカード利用料の滞納があったりすると、返済が滞るリスクが高いとみなされやすいです。計画どおりの返済が厳しそうだと判断されれば、審査通過は厳しいでしょう。

審査通過率アップのポイント

今からでも対応可能な、審査通過率アップのポイントを紹介します。

1つ目は、転職タイミングをローン審査通過後に遅らせることです。なぜなら転職したばかりだと、いくら収入が高くても安定していないとみなされ、審査に通りにくくなるためです。たとえ前職の勤務期間が長かったとしても、その点は考慮してもらえません。

したがって、医療ローンを利用したい場合は、審査に通るまで転職を我慢した方が良いでしょう。

2つ目は、借入希望額を上げすぎないことです。返済比率(収入に対するローン返済額の比率)が高いと、将来の滞納リスクも上がりやすいと判断される可能性があります。

返済比率の目安は、年収の25~35%程度です。例えば、年収が300万円の場合のローン返済額は、年間約105万円だと考えられます。

3つ目は、家賃やクレジットカード利用料などの支払いを滞納しないことです。数ヵ月にわたって返済が滞ると、信用情報機関ブラックリストに登録されます。そうなった場合は、基審査に落ちる可能性が非常に低くなります。

他にも細かいポイントはありますが、まず最低限上記を守りましょう。

在籍確認について

在籍確認とは、申込者が申告した勤務先に、本当に在籍しているかどうか確認することです。在籍確認は、おもに電話で行います。そのため、勤務先に医療ローンの利用がバレないか心配になる方が多いです。

しかし、在籍確認で医療ローンの利用がバレることは少ないです。なぜなら、担当者は借入先名ではなく、個人名で電話をかけるためです。また、要件を聞かれても「医療ローンの審査です」とはいいません。

したがって、在籍確認のことはあまり気にしなくて良いでしょう。仮に他の方が電話に出て、そのあと「さっきの電話は何?」と聞かれてもごまかすことは可能です。

アルバイトの学生でも審査に通る?

学生の方でも、脱毛や美容医療などで医療ローンを利用したくなることがあるでしょう。しかし、収入源がアルバイトの給料しかないと、審査に通らないのではないかと心配になりますよね。

結論からいうと、アルバイトの学生でも20歳以上であれば問題ありません。18歳、19歳の方は、銀行系医療ローンの利用はできませんが、信販系医療ローンは利用可能です。

一方未成年の方は、保護者の同意がないと利用できません。また、保護者を連帯保証人とする必要があります。申込名義も、両親の氏名とするのが一般的です。

医療ローンの2つのメリット

医療ローンならではのメリットは、おもに以下の2つです。

・保険適用外の医療行為にも使える

・高額な医療費も分割払いできるためすぐに医療行為を受けられる

1. 保険適用外の医療行為にも使える

医療ローンの用途は、医療行為であれば保険適用されるかどうかは問われません。例えば、美容整形や医療脱毛の費用にも問題なく使えます。

2. 高額な医療費も分割払いできるためすぐに医療行為を受けられる

ガンの治療など、緊急性が高いものはすぐに受ける必要がありますが、資金がなくて困っている方もいるでしょう。

しかし、医療ローンを利用することで医療費を分割払いできるため、すぐに治療を受けられます。他にも歯列矯正やAGA治療など、緊急性は低くてもなるべく早く治療を始めたい場合にも便利です。

医療ローンの4つのデメリット

医療ローンのデメリットは、おもに以下の4つです。

・用途が限られている

・銀行系医療ローンは即日融資不可

・融資が下りるまでの資金は自身で賄う必要がある

・転院の際に全額返済を請求されることがある

1. 用途が限られている

医療ローンは目的別ローンであるため、契約で定められた用途以外には使えません。具体的にローンを利用できる医療行為は、借入先によって異なります。

2. 銀行系医療ローンは即日融資不可

銀行系医療ローンは、当日の融資は受けられません。なぜなら、審査の際に警察庁データベースを使って「申込者が反社会的勢力の関係者ではないか」確認する義務があり、この業務だけで最低1営業日以上かかるためです。

一方で信販系医療ローンは、最短1時間以内に審査結果が出ることもあります。

3. 融資が下りるまでの資金は自身で賄う必要がある

医療ローンによっては、申し込みから融資まで数日~2週間程度かかります。その間に発生する費用は、自身で賄う必要があります。

4. 転院の際に全額返済を請求されることがある

信販系医療ローンの場合は、医療機関と契約を結ぶことになります。よって、転院する場合はローンの継続ができず、残債を一括請求される可能性があります。後悔しないためにも、医療機関選びは慎重に行いましょう。

医療ローンと他のローンとの比較

医療ローンの比較対象として、消費者金融カードローンを取り上げます。これらの違いは、以下のとおりです。

医療ローン手続きの手順6ステップ

医療ローン手続きの一般的な流れは、以下の6ステップです。

1. 医療機関から医療費の見積りを出してもらう

2. 医療ローンを申し込む

3. 仮審査を受ける

4. 必要書類を提出する

5. 本審査を受ける

6. ローンを借り入れる

1. 医療機関から医療費の見積りを出してもらう

医療ローンを利用するには、医療機関から医療費の見積りを出してもらう必要があります。なぜなら、医療ローンは目的別ローンであるため、利用目的を証明する必要があるからです。

2. 医療ローンを申し込む

銀行の窓口やWebなどから、申込手続きを行います。

3. 仮審査を受ける

仮審査とは、年齢や収入など限られた情報で行う簡易的な審査です。仮審査の通過=融資決定ではありませんが、仮審査に通らないと先の段階に進めません。

また、仮審査の際に申告する情報は虚偽のないようにしましょう。本審査の段階で確実にバレてしまい、審査に通らなくなります。

4. 必要書類を提出する

一般的に必要な書類は、以下のとおりです。

・本人確認書類(運転免許証や個人番号カードなど)

・銀行通帳やキャッシュカード

・銀行届出印

・収入証明書類(給与明細や源泉徴収票など)

・資金使途証明書類(医療費用の証明に必要なもの)

金融機関や医療機関によって、何が必要なのか異なるため、事前に確認しておきましょう。

5. 本審査を受ける

本審査では、必要書類を基に詳細な審査を行います。また、仮審査の際に提出した情報との整合性も確認します。

本審査にかかる期間は、数日~2週間程度です。銀行医療ローンのほうが、時間・日数がかかる傾向があります。

6. ローンを借り入れる

本審査に通ったら、手続完了です。あとは口座に資金が振り込まれるのを待ちましょう。

医療ローンとは、医療行為の分割払いに使える目的別ローンです。金利は2.5~14.0%程度と、銀行フリーローンや消費者金融カードローンよりも低めです。

ただし審査は厳しい傾向があり、かつすぐに融資を受けられないこともあるため、さまざまな事情を考慮したうえで、より良い選択をしましょう。

記事監修

岡山県司法書士会 司法書士

立山 慶之

画像:PIXTA