国連の安全保障理事会が17日、6年ぶりに、北朝鮮における人権侵害を議論する公開会合を開催する見通しだ。

北朝鮮における人権侵害に最も責任があるのは、言うまでもなく金正恩総書記だ。そして今後は、妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長に対しても責任追及が強まる可能性が高い。

米国政府は2017年1月、北朝鮮の人権侵害への関与が疑われるとして、すでに金与正氏を制裁指定している。現在、金与正氏は米国や韓国に向けたメッセージを発することが多く、外交面での存在感が大きいが、もともとは党宣伝扇動部でキャリアを積んできたと見られている。

宣伝扇動部は思想統制を司る部署であり、韓流コンテンツの取締りとからんだ人権侵害について、金与正氏に責任があると見るのは自然なことだ。またそれ以前に、体制の実質的なナンバー2として、国内のあらゆる人権侵害に責任があると言っても過言ではない。

当面、金正恩氏に不測の事態が起きた場合、金与正氏が国家の指導を担うのは確実だろう。米韓に対して強硬な発言を重ね、コワモテのイメージを作っているのも、いざという時になめられないためだろう。

しかし国内では、金与正氏の「権威づくり」は成功しているとは言い難い。例えば、金与正氏は昨年8月10日に開かれた全国非常防疫総括会議で、国内に新型コロナウイルスが流入したのは韓国から脱北者が送り込んだビラなどが汚染されていたことによるものとして、韓国に対する報復を示唆する内容の演説を行った。

この様子は、国営メディアを通じて報じられたが、その内容に、北朝鮮国民から大ひんしゅくを買ったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

演説の中に、人民生活(民生)への言及はひとつもなく、朝鮮半島の情勢を悪化させるものばかりで「多くの人が失望した」とRFAは報じた。

そんな具合だと、金与正氏が指導力を発揮する方法はひとつしかない。兄と同じ恐怖政治だ。そして恐怖政治こそは、人権侵害の根源である。金与正氏は体制のナンバー2として存在感を大きくするほどに、宿命的に、人権問題で国際社会の圧迫を受けていくことになるのだ。

朝鮮労働党第8回大会に参加した金与正氏(朝鮮中央テレビ)