金利とはなんでしょうか? 説明がなくとも「それぐらいはわかっている」という人が多いと思いますが、金利の意味とその仕組みをきちんと理解していない人は意外と少なくありません。その本質を正しく理解していなければ金利の支払いで失敗することも……。本連載では、経済コラムニストとして活躍する大江英樹氏の著書『50歳からやってはいけないお金のこと』から、借金をする際の金利について、一部抜粋してご紹介します。

借金をすることで払う「金利」は非常に無駄な支出

人生の無駄な支出で最も大きなものは不要な保険ですが、次に無駄なものは金利です。

今はほとんどゼロ金利の時代ですが、ここで話題にする無駄な金利というのは、言うまでもなく、受け取る金利ではなく、自分が支払う金利のことです。場合によっては非常に無駄なお金を使ってしまいかねないのがローン、リボ払いといった借金をすることで払う金利なのです。

具体的にどれぐらい無駄になるのかを考える前に、そもそも金利というのはどういう意味を持っているのかについて考えてみましょう。

金利とは「お金の使用料」

今さら「金利とは何か?」 などと説明を受けなくても、それぐらいはわかっている、という人が多いと思いますが、金利の意味とその仕組みをきちんと理解していない人は意外と多くいます。その本質を正しく理解していないと金利の支払いで失敗することも多いので、すごく基本的なことからお話ししていきたいと思います。

金利とは何か?ということをひと言で言えば、「お金の使用料」です。

本来お金というものは、自分が持っていて、そのお金でモノやサービスを購入するわけですが、今お金がなくてもそれらの物を手に入れたければ、お金をどこからか借りてきて購入するしかありません。つまり、人のお金を使わせてもらうことになります。その使用料が金利です。

もちろん、借りなくても時間をかけてお金を貯めてから購入するということもできますが、一刻も早く手に入れたいのであれば、お金を借りるしか方法がありません。別な言い方をすると、「お金を貯める時間」を買うのがお金を借りるということですから、その時間の対価が金利であると言ってもいいかもしれません。

その借金が有益かどうかを見極める判断基準

一般的に経済行為をやるべきかどうかの判断には大原則があります。それは費用を上回る利益があるかどうかということです。お金を借りる場合、金利はその費用です。つまり、金利という費用を上回る利益があるのならお金を借りる意味はありますが、そうでなければお金を借りて金利を払う意味はありません。

具体的に考えてみましょう。企業の場合がわかりやすいでしょう。ある企業が新しい事業を始めるとします。その事業で見込める利益率は10%だとします。すると、自己資金が1,000万円あって、そのお金を事業に投資するとすれば、100万円の利益が得られます。

一方、その企業が銀行から1億円のお金を借りてその事業に投入したらどうなるでしょう。その場合のお金の使用料(=借入金利)が5%だとすると、金利(費用)は1億円の5%で500万円です。

でも、利益率が10%ですから、1億円を投入すれば1,000万円の利益が出ます。金利の500万円を差し引いても利益が500万円出ますから、自己資金だけで事業を始めた場合に比べ、5倍の利益が得られるということになります。

個人の場合、借金は不要?

ところが個人の場合は、自営業でもない限り、事業をするためにお金を借りることはありません。自分が買いたいもの、例えば住宅を購入するために住宅ローンを組んだり、自動車の購入にオートローンを使ったりといった、何らかの商品やサービスの購入にまとまったお金が必要となる場合には、お金を借りることになると思います。この場合も、前述の経済行為の大原則、「費用を上回る利益があるか」を考えることが必要です。

例えば家を買う場合の利益は、「歳をとっても自分が住む家があるという安心感」が一番大きなものでしょう。自分にとってその安心感に価値があると思えば、住宅ローンを組んでお金を借りればいいのです。よく「持ち家」か「賃貸」かで、両派の間で議論がおこなわれていますが、これはそもそも価値の異なる人たちの議論ですから、おそらくいつまで経っても結論は出てこないでしょう。

同様に、旅行に行ったり自動車を買ったりする場合にローンを利用するのは、「今すぐ行きたい」とか「今すぐ車が必要」だけど、現在手元にお金がない場合です。「欲しいものは欲しい」と言って金利を払ってでも借金するのか「金利という費用は無駄だから我慢して貯めてから買おう」と考えるかは、その人の価値観次第です。

ただ、私は何でもかんでもローンを使って手に入れるべきだという考えには賛同しかねます。なぜなら人間の欲望には限りがないからです。欲しいものを手に入れてもまた新たに欲しいものが出てくる、ということを繰り返していると、借金がいつのまにか膨れ上がってしまいます。

個人向けローンの金利が高いワケ

それに、個人が利用するローンは、これほど低金利の時代であっても異常に高いのが問題です。本来、金利というものは、お金を借りる人の信用度によって高くも低くもなります。返済リスクの低い借主ほど金利が低くなるのは当たり前です。

ところが個人のローンの場合、その多くは細かい信用調査などをおこないません。あらかじめ金利の水準を表示しています。住宅ローンの場合であれば、融資する物件を担保に取りますし、団体信用生命保険に加入したりしますから、貸す側にはあまりリスクはありません。したがって金利水準もかなり低くなっています。

ところがカードローンや消費者金融、リボ払いなどの場合、住宅ローンとは比較にならないくらい金利が高いのが普通です。なぜ高いのでしょうか? それは借りる相手の信用度をかなり低く設定しているからです。

普通、こうした借金の場合、担保は取りません。一定の信用調査をすることもありますが、簡単な身分証明書だけで借りられることも多いです。したがって、貸した先のうち、一定割合は返済できないということを見越して、金利を決めているのです。

いくらあなたが一流企業に勤めていて土地をたくさん持っていても関係ありません。それなら何も金利の高いカードローンや消費者金融を利用する必要はないでしょう。個別に銀行との相対取引を申し込めばいいだけです。

一般向けのローンは、現実には貸し倒れリスクのかなり高い人に対しても貸し出しているので、そういう人たちに貸し倒れが発生するリスクの分まで、 他の利用者が高い金利を払うことによってカバーしているということです。

考えてみれば、本来貸す方が負うべきリスクを他の健全な利用者に負担させるというのは納得がいかないとも思えますが、小口の融資においていちいち信用調査をするのはコスト的にとても合わないからでしょう。

特に気をつけるべきは借金は「リボ払い」

中でも気をつけるべきなのが、「リボ払い」と呼ばれるものです。これは名前にローンとかクレジットとついていませんので、払い方のバリエーションの一つのように聞こえますが、まぎれもなく高利の借金です。

年利15%といった極めて高い金利が適用されます。ご存じのとおり、リボ払いというのは毎月一定額の返済ですから、それほど返済額が増えている感覚がないのですが、実は相当負担が大きいのです。

大手クレジットカード会社のWEBサイトで返済のシミュレーションをしてみました。借入金が100万円で、毎月の返済額を1万円と設定した場合、現在の金利で計算すると返済するのが8年3ヶ月後となり、支払う金利と手数料は62万9,099円となります。

つまり、借りたお金の6割以上も余分にお金を払わなければならないのです。さまざまな家電製品や洋服を欲しいがままにリボ払いで購入し、その金額が合計100万円になった場合、あなたは62万円も余分にお金を払わなければならなくなるのです。いくら欲しいものがあるからといって、それだけのお金を余分に払う価値があると思いますか?

リボ払いが始末に悪い理由を整理すると次の4つです。

1.借入金が増えても毎月の返済額は変わらないため、借金しているという意識が薄れる

2.その結果、知らず知らずのうちに借入額が増えがちとなる

3.借入額が増えると返済期間が長くなるため、返済完了までの利息の負担が大きく増える 

4.返済総額がわかりにくいため、いかに多くの利息を払っているかが実感しにくい

繰り返しになりますが、借金をして金利を払っても、それを上回る利益(金銭的のみならず精神的な満足感も含めて)があると思えば、ローンを利用するのもいいでしょう。

ただ、目先の欲望のためだけに必要以上にローンを利用するのはやめた方がいいと思います。間違いなく、金利も人生における大きな無駄の一つですから。

大江 英樹

株式会社オフィス・リベルタ

取締役

(※写真はイメージです/PIXTA)