勝つために残り3名は先送りと決断した。8月15日、『ラグビーワールドカップ(RWC)2023』を戦う日本代表30名が発表された。登録メンバーの締め切りは8月21日(月)。ケガ人の回復具合や出場停止処分の確定を受けて3名を選出することとなった。日本代表メンバー発表会見の冒頭に土田雅人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)会長、藤井雄一郎男子15人制日本代表ナショナルチームディレクター、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは次のようにあいさつした。

土田会長「本日みなさんの前でメンバーを発表できることをうれしく思う。JRFUはラグビーが世界一身近な国を目指し、日本で再び『RWC』を開催して2050年までに世界一になることを目指していきたい。今回のメンバーが日本代表の自覚、桜のジャージの誇りを持って世界の頂に挑戦してくれると思う。ジョセフHCが前回大会以上の成績を収め、ジャパンラグビーの成長していることを証明してくれると思う。ジョセフHCと8年間一緒にやってきて、彼を信じて、チームを信じている。国内5試合は厳しい結果でレッドカードや選手のケガなどいろいろあったが、選手たちが一生懸命取り組んできた姿を信じている。ジョセフHCの活躍を期待し、協会として全面的にサポートすることを約束したい」

藤井NTD「前回大会が終わってから長い道のり、選手も切磋琢磨してここまでたどり着いた。残念ながらメンバーから漏れた選手の分まで選ばれた選手は戦ってくれると思うし、戦ってくれる選手が選ばれたと思う」

ジョセフHC「メンバー発表前に伝えたいことがある。ワイダ―グループとしてハードワークしてくれた選手たちに感謝したい。彼らがいなければ、今回のメンバーが選ばれることはなかった。2023年は大きなチャレンジになる。2019年大会以後、コロナのパンデミック後、1年間ラグビーができずに、その後ティア1とたくさん試合を行ってきた。この5試合は難しい結果になった。レッドカードが出たり、深刻なケガ人も出た。でも現代ラグビーでは起こり得ること。先週もイングランドの(オーウェン・)ファレルにもレッドカードが出た。自分たちもこういうことに慣れていかなければいけない。そういう意味も含めれば、今回の『PNS』はいい準備になった。どのチームもそう思うだろうが、自分たちも『RWC』に勝ちたい。2019年大会での自信を持って、大きなチャレンジへがんばっていきたい。それでは30名のメンバーを発表したい」

(写真左より)藤井雄一郎男子15人制日本代表ナショナルチームディレクター、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ、土田雅人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)会長

『RWC2023フランス大会』ラグビー日本代表登録メンバー30名
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稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)48
クレイグ・ミラー※(埼玉パナソニックワイルドナイツ)12
シオネ・ハラシリ※(横浜キヤノンイーグルス)0
具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)24
垣永真之介※(東京サントリーサンゴリアス)12
ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)25
【HO】
堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)71
坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)36
堀越康介※(東京サントリーサンゴリアス)7
【LO】
ジェームス・ムーア(浦安D-Rocks)16
【LO/FL】
ジャック・コーネルセン※(埼玉パナソニックワイルドナイツ)15
【FL】
ベン・ガンター※(埼玉パナソニックワイルドナイツ)7
姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)28
福井翔大※(埼玉パナソニックワイルドナイツ)1
リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)79
【SH】
齋藤直人※(東京サントリーサンゴリアス)14
流大(東京サントリーサンゴリアス)33
福田健太※(トヨタヴェルブリッツ)0
【SO/FB】
小倉順平※(横浜キヤノンイーグルス)4
【SO】
李承信※(コベルコ神戸スティーラーズ)9
松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)32
【CTB】
長田智希※(埼玉パナソニックワイルドナイツ)3
中野将伍※(東京サントリーサンゴリアス)7
中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)34
ディラン・ライリー※(埼玉パナソニックワイルドナイツ)13
【WTB】
ジョネ・ナイカブラ※(東芝ブレイブルーパス東京)3
シオサイア・フィフィタ※(花園近鉄ライナーズ)12
セミシ・マシレワ※(花園近鉄ライナーズ)4
レメキ ロマノ ラヴァ(NECグリーンロケッツ東葛)16
【FB/WTB】
松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)50
※は『RWC』初選出、所属チームの後の数字は代表キャップ数。

『RWC2023』での目標を問われた指揮官はこう答えた。
「(RWCの目標)どのチームにとっても全員のゴールは試合に勝っていくこと、優勝すること。前回ベスト8まで行った。『RWC』はいろんなことが起こり得る。優勝するためにまずはベスト8へ行きたい」

フランスで見せたいラグビージャパンラグビーだ。
「どのコーチが指揮してもジャパンラグビーのアイデンティティ、マインドがある。素早くボールを回してアタッキングマインドを持って戦うのがジャパンラグビーだと思っている。イタリア、チリ、イングランドサモアアルゼンチンという相手と戦っていくが、相手によって調整していく必要はあるものの、ジャパンラグビーという世界でもユニークなラグビーをしっかりやっていくことが大事」

ジョセフHCは残り3名のメンバーの目途についても言及した。
「LOでワーナー(・ディアンズ)は肩をケガし、アマト(・ファカタヴァ)も足首のケガをした。あと(ピーター・)ラピース(・ラプスカフニ)の出場停止の試合数が確定していないので、そういったいろいろな状況によって考えていきたい」

キャプテンには姫野を任命した。
「姫野にしっかりチームをリードしてほしい。彼はパッションを持っている。またしっかりリードするだけではなく、ほかの選手のことも信じて任せるところは任せてほしい。『RWC』でしっかりパフォーマンスを出すためにチーム一丸となって、同じ絵を見て戦っていく必要がある。リーチも主将としてたくさん経験があるし、堀江も4回目の『RWC』。30名で半分以上の選手が『RWC』を経験している。このチームにはリーダーがたくさんいることをうれしく思う」

ジョセフHCはユーティリティ性を重視し、今回のメンバーを選出したと言う。
「セレクションでは半分のポジションはすぐに決まった。スペシャリストのフロントローと9・10番。スペシャリストのポジション以外はいくつものポジションをカバーできるのが大事だと考えている。レメキは試合に出ていないが、10番、FB、CTBもカバーできるし、マシレワもWTBだけではなくFBもカバーできる。長田もCTB、WTBをカバーでき、ジャックもLOも7番もカバーできる。そういうユーティリティ性を重視し、セレクションした」

(写真左より)流大、リーチ マイケル、姫野和樹、坂手淳史

首脳陣によるメンバー発表会見第一部に続き、第二部には選手たちが登場。姫野主将、リーチ、坂手、流がメンバー入りした感想を語った。
流「もちろん光栄に感じているし、責任を感じている。一番思うのは選ばれなかった選手たちの努力を無駄にしないよう僕らは結果を出すしかないと覚悟している」

リーチ「選ばれることは光栄だし、前回大会以上の責任を感じている。ここまでこれたのは自分の中で奇跡。いろんなケガをして地獄まで落ちてがんばってここまできたので、大会でしっかり結果を出すことしか考えていない」

姫野「光栄。落選した選手たちの思い、ファンのみんなの思いを感じながら、その期待も楽しみながらプレーしたいと思っている。
(主将として) 自分のリーダーシップが代表に必要なんだと感じた。ジェイミーにも期待していると言われたので、自分の持っている情熱や愛情でチームを引っ張っていきたい」

坂手「非常にうれしく思うし、光栄に思う。メンバー発表の時間はこの4年間でも一番タフな時間だった。その中選ばれた責任を持って『RWC』を戦い抜きたい。」

国内強化試合5試合では1勝4敗と結果は出なかったが、主将はここから巻き返すと誓った。
ラグビー的な課題もあるが、ここからデスゾーンに行くので生きるか死ぬかの戦い。生き残るためにチームとして過ごしていくことが大事。イタリア戦で自分たちのパフォーマンスを取り戻していきたい」

4名は目標は「優勝」だとキッパリ。
坂手「このチームが始まってから優勝を目標に掲げてきた。まずはグループステージが大事になるのでみんなで一戦一戦成長して、自分たちの目標に近付いていきたい」

姫野「優勝です」

リーチ「同じ優勝です」

流「たぶん今聞いたみなさんは現実的だと思っていないと思うが、でも僕らはできると信じている。2019年も僕らがアイルランドに勝つとは、スコットランドにも勝って全勝でベスト8に行くとは思われていなかったと思う。僕らはそれをできる準備をしている。見ていてください」

4選手それぞれに今大会の位置付けを口にした。
流「僕は今回が日本代表の最後だと決めている。でも個人的なことで関係ない。何も恐れる必要はない。しっかり前回大会を超えて、日本のラグビー、日本人は強いと見せていきたい」

リーチ「2011年からここまできて、弱い日本代表から優勝を狙える日本代表を経験し、また日本代表が強いと証明したい。そのための準備を集中してやりたい」

姫野ラグビー選手の夢の舞台。自分の夢を叶える場所。だから優勝して、ラグビーを日本の国技にしたいと思っている。この舞台で勝ちたい」

坂手「ラグビーを始めた時から『RWC』は特別な目指す場所。全ラグビー選手にとって特別な場所。最高のパフォーマンスを見せて、見ている人に夢を持ってほしい」

姫野和樹 (C)JRFU

HC、代表選手一同はその後「ラグビー日本代表BRAVE壮行会2023 #選手もファンもひとつになって世界へ」に出席。姫野主将は集まった881名のファンに約束した。
「暑い中これだけ多くのファンに集まっていただき身の引き締まる思いです。我々日本代表は4年間をかけて準備してきた。ともに時間を過ごし、ともに汗を流し、たくさんの犠牲を払ってここまできました。すべては『RWC』で勝つためです。我々は歴史を変える準備はできています、歴史を変える自信があります。2019年よりもたくさんの感動や勇気を感じてもらえる試合をすることを約束します。ともに戦いましょう」

日本代表は8月26日(土)・イタリア トレヴィーゾでの『リポビタンDツアー2023』のイタリア代表戦を経て、『RWC 2023』へ突入。9月10日(日)・フランス トゥールーズにてチリ代表戦、17日(日)・ニースにてイングランド代表戦、28日(木)・トゥールーズにてサモア代表戦、10月8日(日)・ナントにてアルゼンチン代表戦とプールDを戦う。チリ戦とアルゼンチン戦では秩父宮ラグビー場をはじめ、札幌ドーム赤レンガパーク、スカイホール豊田、花園ラグビー場など『RWC2019』開催12都市にてパブリックビューイングを実施する。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

「ラグビー日本代表BRAVE壮行会2023 #選手もファンもひとつになって世界へ」に出席したラグビー日本代表