北海道新幹線の総合車両基地である「函館新幹線総合車両所」が、いよいよ設備の増強に向けて動き出すようです。延伸の終着地となる札幌にも車両基地ができますが、どのようにすみ分けられるのでしょうか。

札幌延伸に向け「函館新幹線総合車両所」が増築

北海道新幹線では、2030年度の開業を目指し、新函館北斗~札幌間の延伸工事が進んでいます。トンネルだけでなく、北海道新幹線唯一の総合車両基地である「函館新幹線総合車両所」も、いよいよ設備の増強に向けて動き出すようです。鉄道・運輸機構は2023年8月8日(火)、車両基地の増築に関する設計業務を委託する事業者の公募を開始しました。

函館新幹線総合車両所」は、2016年3月の北海道新幹線開業に合わせて開設された車両基地です。敷地面積は約36万平方メートルと広大で、北海道新幹線の車両「H5系」3編成30両が所属しています。

敷地内には、新幹線4編成を収容可能な「着発収容庫」、日常的な車両検査を行う「仕交検庫」、車両を分解する大掛かりな「全般検査」が可能な工場機能、保守用設備などを備えています。「着発収容庫」や「仕交検庫」はいずれも屋根で覆われています。また、2022年3月に発生した福島県沖地震で廃車となったH5系が、10両編成から6両編成に短縮されたうえで社員教育用として敷地内に留置されています。

新幹線の札幌延伸時には、車両も増えることになります。そこで「着発収容庫」に線路を8本増設し、最終的に新幹線を12編成収容することを可能にします。さらに、電気・軌道総合試験車の機器類検修などを行う「総合試験車線」も1線新設されるほか、保守用車庫なども増築される計画です。

函館新幹線総合車両所」は、開設当初から札幌延伸時の増強を前提に建設されており、新設される設備の用地は既に確保されています。ただ鉄道・運輸機構によると、増築に向けた工事スケジュールは未定で、今回の増築により延床面積がどれくらい増えるのかについても、今後設計を行うなかで精査していくとしています。

異形の「札幌車両基地」との違いは?

北海道新幹線をめぐっては、「函館新幹線総合車両所」だけでは札幌延伸時に車両基地が足りなくなるため、「札幌車両基地」も着工しました。こちらは高架形式で、防雪上屋によってすっぽり覆われた細長い構造が特徴。新幹線札幌駅から、在来線の次の駅である苗穂駅付近まで、札幌市の中心市街地を縫うように延々と伸びていく異形の構造となります。

「札幌車両基地」には車両を留置する「着発収容庫」、車両検査や融雪作業を行う「仕業検査庫」、保守用車両の整備・留置する「保守基地」を設け、複数の目的を持つ作業エリアが直列に並ぶ形となります。着発収容庫に2編成、仕業検査庫に2編成、全体で4編成を収容可能とする計画です。ただ、工場機能は設けられないため、全般検査などの大掛かりな検査は引き続き「函館新幹線総合車両所」が担うことになります。

すでに工事が始まった札幌車両基地も話題を集めていますが、北海道新幹線で最も重要な総合車両基地である「函館新幹線総合車両所」も札幌延伸時に本領発揮となります。

北海道新幹線(画像:写真AC)。