ロシアによるウクライナ進行により、世界的な緊張が続いていますが、それに伴い、世界では武器の取引が活発化しています。そして武器の輸出・輸入の現状をみてみると、日本の微妙な実情が浮き彫りになってきました。

武器輸入・輸出、それぞれの世界ランキング

ロシアによるウクライナ侵攻を発端とする地政学的な緊張。それに伴い、世界各地で武器取引が活発化しています。

世界銀行によると、2022年、武器の輸入が最も多かったのは「カタール」。以下、「インド」「ウクライナ」「サウジアラビア」「クウェート」と続き、「日本」は世界第7位の武器輸入国。上位には中東をはじめ、地政学的に不安定な地域の国が目立ちます(関連記事:『【2022年】世界「武器輸入・輸出額」ランキング…上位30』)。

【世界「武器輸入額」上位10】

1位「カタール」33.42億米ドル

2位「インド」28.46億米ドル

3位「ウクライナ」26.44億米ドル

4位「サウジアラビア」22.72億米ドル

5位「クウェート」22.49億米ドル

6位「パキスタン」15.65億米ドル

7位「日本」12.91億米ドル

8位「ノルウェー」8.48億米ドル

9位「米国」8.37億米ドル

10位「イスラエル」8.29億米ドル

出所:世界銀行 資料:GLOBAL NOTE

一方、武器輸出についてみていくと、トップは「アメリカ」で圧倒的。また西側諸国による経済制裁が続いている「ロシア」は世界3位。輸出先はインド、中国、エジプトなどですが、どの国もロシアからの輸入を抑制しているといわれ、ウクライナ進行以降、大きく輸出額を落としています。また1位の「アメリカ」は、圧倒的な「武器輸出超過国」。武器で相当稼いでいるという実情が、改めて浮き彫りになりました。

【世界「武器輸出額」上位10】

1位「米国」145.15億ドル

2位「フランス」30.21億ドル

3位「ロシア」28.20億ドル

4位「中国」20.17億ドル

5位「イタリア」18.25億ドル

6位「ドイツ」15.10億ドル

7位「イギリス」15.04億ドル

8位「スペイン」9.50億ドル

9位「イスラエル」8.31億ドル

10位「ポーランド」4.52億ドル

出所:世界銀行 資料:GLOBAL NOTE

※武器輸入・輸出共通事項

・販売・援助・贈与によって供給された武器輸入・輸出額

・航空機、装甲車両、火砲等、主要な通常兵器が対象で、小火器、軽火器、小口径砲、弾薬、トラック、技術移転、支援装備などは含まない

・金額は標準的な製造コストベースで見積もった値で実際の販売価格ベースでの金額ではない

世界38位…ルール変更も輸出額は伸びず

世界において「日本」は、武器輸入の上位国の常連。2010年代前半は輸入額を減らしていましたが、近年、安全保障の重要性が増し、2017年以降は増加傾向にあります。

一方、武器輸出については、「日本」は世界38位。圧倒的な輸入超過となっています。

――えっ、日本って武器を輸出していいの⁉

そう驚いた人もいるかもしれませんが、安倍政権時代の2014年、「防衛装備移転三原則」を決め、それまで原則的に武器輸出を禁じてきたルールを変更しました。それにより、防衛産業が活性化すると期待されましたが、国際競争力は極めて低く、当初の思惑通りには進んでいないようです。「防衛産業はわが国の防衛力そのもの」という政府の見解とは裏腹に、国内企業の防衛事業からの撤退が相次いでいます。

そんななか議論となっているのが、「殺傷能力のある武器輸出」。現行ルールでは不可能で要件緩和が必須とされていましたが、現行ルール上でも可能という新解釈が出てきているのです。

日本では憲法に基づき、武器輸出を原則禁じる「武器輸出3原則」を確立する一方で、例外措置を積み重ねてきました。そして前出の通り、2014年に「防衛装備移転三原則」を決定。さらに拡大解釈により、武器輸出を加速しようとしています。

政府与党内には、新解釈に対し慎重論も根強く、先行きも不透明。武器の輸出により、経済が活性化する可能性もありますが、日本の安全にも関わること、議論の行く末をきちんと注視していきたいものです。

(写真はイメージです/PIXTA)