有人・無人問わずロケットで宇宙にモノを撃ち上げる際、速度はどの程度必要なのでしょうか。実が用途によって大きく3タイプの速度に分けられるようです。

宇宙に行く人工物になるには決まった速度が必要

JAXAの古川聡宇宙飛行士ら4名が参加する有人宇宙飛行ミッション「Crew-7(クルー7)」の打ち上げ日が2023年8月17日に決定したことが7月末に報じられました。

クルー7の乗って打ち上げられるスペースXの「クルードラゴン」は、国際宇宙ステーション(ISS)へ向かうわけですが、有人・無人問わず、ロケットで宇宙にモノを撃ち上げるには、どの程度の速度が必要なのでしょうか。

実は、宇宙ではどこまで行くかによって、出さなければいけない速度がだいぶ変わってきます。

探査機などの人工物を、ある条件のもとで宇宙で航行させるとき必要になる速度のことを天文学では「宇宙速度」といいます。2023年現在では第一、第二、第三と、3タイプの宇宙速度があります。

まず、第一宇宙速度は地球上で物体を水平投射した際、地面に落下せず地球の表面を回り続ける速度です。つまり、地球の大気スレスレ位置を人工衛星やISSが回っている衛星軌道まで物体を送り込む速度になります。

気象観測衛星やISS、また「クルードラゴン」やロシアの「ソユーズ」といった多くの有人宇宙船が向かうのは、衛星軌道の中でも一番低い位置にある低軌道といわれるところで、JAXAによると、約8km/sとなっており、時速に直すと2万8800km/h。地上ではまず出ない速度となっています。

太陽系を離脱するのに必要な速度とは?

第二宇宙速度は、地球の重力を完全に振り切るために必要な速度です。地球の重力上に安定するよりさらに速度が必要で、そのスピードは約11.2km/s(4万300km/h)となります。

この速度を出しているのは全て無人の探査機のみです。唯一、この速度に近い数値を有人機として出したのは、アメリカのアポロ計画に使用されたサターンVロケットで、その速度はマッハ33(11.08km/s)。これは2023年現在も有人の乗りものでは最速になっています。

第三宇宙速度は、太陽の重力圏を振り切り、太陽系から離脱することができる速度です。これまで人類が打ち上げた数ある探査機の中でも、この第三宇宙速度を出しているのは、パイオニア10号、11号とボイジャー1号、2号、ニュー・ホライズンズの5機のみで、全てNASAが打ち上げたものです。

その速度は、約16.7km/s(6万100km/h)と、1秒間に17km近く移動するとんでもない速度です。「スイングバイ」と呼ばれる、天体の重力を利用した加速を繰り返し行わないと出すことができません。

ちなみに、地球から最も遠くに到達している探査機はボイジャー1号ですが、同機は1977年9月に打ち上げられ、ようやく2012年8月に探査機として初めて太陽圏を脱しました。しかしここは星間空間といわれる場所で、まだ太陽系からは離脱していません。ボイジャー1号が隣の星系につくのは約4万年後といわれており、宇宙が途方もない大きさなのがうかがえます。

国際宇宙ステーション(画像:NASA)。