「つらいことを一緒に乗り越えてこそ、真の絆が生まれる」。結婚式での神父さんの言葉や、祝辞などでも引用される言葉です。実際に、「不倫の末にお互い反省して夫婦円満になった」「本音をさらけ出すことで、偽りない二人の姿を理解することができた」という夫婦のエピソードはたくさんあります。

「恋人・夫婦仲相談所」所長である私の知る「雨降って地固まった二人」のケースを紹介します。

性欲の強い妻が向かった先は

 里美さん(48歳、仮名)と清志さん(52歳、同)は、大学生と高校生のお子さんを持つ結婚20数年のご夫婦です。お二人とも公務員。硬派な職業に就き、はたから見たら一般的な“平和な家庭”そのものです。

 しかし一歩踏み込むと……実は、里美さんは性欲が異常に強く、性問題に強い私の相談所に来られました。

 里美さんは1年以上、夫と性交渉がないことに真剣に悩み、欲求を抑えるのに苦しんでいました。しっかりとした倫理観をもつ里美さんに、不倫は考えられません。相談に来られたときは、「このまま夫と性的関係がないのなら、きっと不倫してしまう。その候補の人はいる。もう誘われている。私の返事次第で不倫に発展する」と、鬼気迫る表情で訴えました。私は不倫を止める立場なので、もちろん「それはNO」とアドバイスしました。

 夫婦間セックスレスはすぐに解消できる問題ではないため、私の知る、安心な「女性用風俗」という選択もあるとお伝えしてみました。

 女性用風俗は今や、テレビの地上波番組でも取り上げられるほどメジャーになり、私もコメントを求められることが多々あります。女性用風俗は風営法のもと、きちんと営業している店舗であれば、安心して利用することができます。性感マッサージだけのメニューもあります。もちろん、性感染症には注意しなければいけませんが。

 何年間も押し殺していた欲望を、ビジネスとして解消してくれる――。里美さんは女性用風俗を訪れ、すっかりその魅力のとりこになります。このとき、彼女と一度お会いしましたが、つき物が落ちたように優しい顔立ちになっていました。

 普段、帰宅が夜遅くになったり、平日に1人で出かけたりすることのない里美さんがおしゃれをして、よく出かける――。不審に思った清志さんは不倫を疑います。自分の妻に限ってそんなことがあるわけがないと信じていましたが、どうも前と違うライフスタイルになっている、と。

 ある日、清志さんは「不倫をしているんじゃないのか」と切り出します。もちろん否定した里美さんでしたが、「じゃあ本当は何をしているのか」と問い詰められ、答えに詰まったので、ついに女性用風俗のことを打ち明けます。そして、「あなたとセックスレスなのが悲しい、本当はあなたとしたい」と大声で泣きながら伝えたそうです。

 その言葉を聞いて、清志さんは里美さんのことをいとおしく感じ、子どもたちがそろそろ独立し、二人きりになるのだから、妻の欲求に向き合う時期だと考えたそうです。

 女性用風俗に通うことで、以前より身なりに気を付けるようになった里美さん。少し痩せて色気もあり、女性としての魅力が増していました。清志さんは加齢でEDになっていましたが、泌尿器科クリニックで診察を受け、今ではしっかりと夫婦生活を楽しめるようになったそうです。ちなみに、その泌尿器科クリニックも私が推薦しました。里美さんは、風俗通いをピタッとやめて、“円満”熟年夫婦になりました。

 このケースの“雨”は“夫婦間セックス”。セックスレスに特化した夫婦仲相談所を運営していて、確実にいい方向に向かった事例としています。

お互いへの遠慮が「離婚」という言葉を生むはめに

 陽子さん(42歳、仮名)の夫、浩之さん(42歳、同)は服のセンスがよく、人当たりもいい、いわゆる“モテ男”。陽子さんは整った顔立ち、地味でおとなしめのタイプです。付き合ったのは夫が2人目です。二人は中学時代からの同級生で、社会人になってから同窓会で再会し、結婚しました。

 浩之さんは自由人。結婚後も無断で帰りが遅くなったり、休日に1人で出かけたりすることに対して、陽子さんは何も言いませんでした。「すてきな人だからモテてもしょうがない。同僚との飲みもあるだろうし」と、理由すら尋ねません。浩之さんのことが大好きで、「結婚できただけで充分」と思っていたそうです。

 陽子さんが婦人科系の病気で妊娠・出産できないことに対して、浩之さんが全く問題にせず、結婚しようと言ってくれたことにも感謝していました。私から見ると、陽子さんは自己肯定感が低めの人でした。

 しかし、結婚2年目に浩之さんから「僕に興味がないんだろう。毎日、お互いに空気みたいでつまらない。別々に暮らすか」と切り出されます。

「夫は、子どもができない私に愛想を尽かしたのだ」と考えた陽子さん。反論せず、「分かりました」と受け入れました。

 すると突然、浩之さんが涙ぐみます。陽子さんがどうしたらいいのか分からず、ショックを受けていると、「やっぱり陽子は、俺といてずっと幸せじゃなかったんだね。結婚相手を間違ったと思ってたんだろ」と言うのです。驚いた陽子さんは「そんなわけない」と返しましたが、浩之さんはこう言いました。

「じゃあ、なぜそんなに簡単に受け入れるんだ。僕が1人で出かけたり、連絡せずに遅くなったりしても何も言わないし、僕に関心がないんじゃないか。どうでもいいと思っているんじゃないか」

 結局、二人ともお互いに気を使い過ぎて、干渉することができず、それが疑念を生み、状況を悪化させていたのでした。

 夫は「夫婦円満の秘訣(ひけつ)は、1人の時間を大事にする。過干渉にならない」とウェブで読んだことを守っていた、という話も聞きました。それはいいのですが、ご自分たち夫婦に当てはまっていたのか、勘違いの非干渉スタイルではなかったのかと指摘しました。

 陽子さんは、「私のことが重荷になっているんじゃないかってずっと思っていたんです。本当は他に好きな人がいて、子どもも欲しいと思っているのに、私がいるから我慢しているのかな…って。でも、一緒にいたいから何も言えなかった。本当にバカでした。毎日一緒にいるのに、怖くて聞くこともできず、おびえていました。これからは遠慮せずに言いたいことを言い合おうって約束しました」と明るく話してくれました。こちらの“雨”は“ほったらかし非干渉”だったといえます。

 2組のご夫婦とも、お互いへの遠慮や配慮があり過ぎて、すれ違いを生んでしまっていました。勇気を出して本音を伝え合うことで、新しい夫婦のカタチが生まれることもあります。

 長い夫婦生活には、経年劣化しないよう、“荒療治”が必要なときがあります。恐れずやってみて、間違ったらやり直し、上書き更新していくのが理想ですね。時には“雨”も刺激として有効に使いましょう。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

夫婦を円満に導いた“雨”とは…