不動産投資が「成功した」といえるには、トータルで収支がプラスになる必要があります。そのためには「利回り」「物件の値上がり」よりも重要なポイントがあります。YouTubeで「不動産Gメン滝島」として“不動産業者に騙されないための情報”を発信している滝島一統氏の著書『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール 罠を見抜いてお金を増やす』(KADOKAWA)から、一部抜粋してご紹介します。

「最初の物件」がお金を生めば次に繫がる

不動産投資で成功するために重要なのは、最初の物件を間違えないことです。

最初の投資に失敗して損切りするようなことになると、次のスタートを切るまでに資金や信用を築く必要があり、時間がかかってしまうからです。

反対に、初めにいい物件を買うことができれば、返済も問題なく進み、それが信用になって次の融資も受けやすくなります。そこで得た収益を貯めていけば、それを自己資金にして次の物件を買うことができます。

私が初めて不動産を購入したのは、35歳のときです。

渋谷区内・私鉄沿線の駅から徒歩7分にある地下1階、地上5階建てで、土地面積190㎡、延床面積約600㎡の商業系ビルです。

築38年(当時・昭和42年築)と築年数こそ経っていましたが、フルリフォームしたあとで給排水管も壁もすべて交換されており、まったく問題はありませんでした。かなりいい物件だと判断し、購入しました。

リフォーム代を含めると、価格は1億5,000万円で、頭金は2,000万円用意しました。築年数が深いため、15年ローンしか組めず、返済期間が短い分、毎月の返済額は多くなりました。それでも月70万円のキャッシュフロー(利益)が出て、利回りは14%です。

利回りとは、物件価格に対する年間の収益率です。

月70万円、年間800万円以上のキャッシュフローが生じたため、私は不動産業とは別にメロンパン店の事業をはじめることにしました。1年半で都内3店舗、長野に1店舗開店させました。

店は軌道に乗り、その信用でローンを組み、2017年の末に2棟目のビルを買いました。改造してゲストハウスにしたところ、インバウンド需要の高まりで経営は順調でしたが、コロナ禍で一気に需要が冷え込みました。

そんな状態の時に、過去に取引のあったお客様から「売ってほしい」と電話があり、改装費含めて4億3,000万円で買ったものを、5億6,000万円で売ることができました。税金や手数料を引いても7,500万円程度、利益が出たことになります。

その資金で地熱発電所を購入。利回りは12%程度です。

ほかにも国内にいくつかの不動産を所有し、さらにフィリピンマレーシアのマンションを投資用不動産として保有し、賃貸しています。マレーシアフィリピンは、コロナ禍で苦戦した時期もあります。

最初に「金食い虫物件」をつかめばアウト!

こうして複数の不動産を持つことができたのは、最初に買った渋谷区のビルで収益を得ることができたからにほかなりません。収益率が高いことから価格は上がっており、売却すればキャピタルが得られる状態です。

知人に騙されるという大きな失敗もありましたが、それが活力になって3年で2,000万円の資金を作り、運良く非常に魅力のある物件に出合うことができた。機敏に動いてそのチャンスをつかむことができた、ということです。

最初の物件が肝心で、いい物件ならキャッシュフローを生む。ローンが順調に返済できるので信用力がアップする。利益が出るから自己資金も作れる。そして次の物件を買うことができる。芋づる式に物件を増やしていくことも十分に可能です。

よくない物件を買ってしまうと、赤字になって、補填のために貯蓄も減る。損切りか自己破産しかなく、ゼロまたはマイナスからやり直しです([図表1]参照)。

頭金ゼロ、かつ、ローンも組めて今すぐにでも不動産投資ができる。そんな軽い気持ちで不動産投資をすると大変なことになります。買えるものを買う、というのは大きな間違いです。

「そんなにいい物件はない」「そんなことを言っていたらいつまで経っても投資などできない」と批判されたことがありますが、なければ買わなければいいのです。

ない時は買わない。ないからといって、キャッシュフローがマイナスになるような不動産を買っても何の意味もない。ただ重い荷物を背負うことになるだけで、マイナスでしかありません。

「すべては、最初に何を買うのかで決まる」のです。

毎月黒字であることが絶対条件

価格が上がるかどうか、正確な予測はできないものの、長期的には立地などの特殊事情がない限り、日本での不動産価格は下がるとみるのが妥当でしょう。

毎月のキャッシュフローから見てみましょう。

たとえばローン返済や管理費などの諸経費を引いたあとの手残り(手元に残る額)が20万円(年間240万円)、30年で7,200万円とします。しかし1億円で買った物件が30年後には5,000万円になったとします。

頭金は2,000万円を支払い、8,000万円のローンは家賃収入から返済できています。

そのうえで、30年で7,200万円のキャッシュフローがあり、さらに物件を売却すれば5,000万円が入ってきます。

1億200万円の黒字であり、諸経費や税金を差し引いても、不動産投資としては成功です。

つまり、キャッシュフローがあれば、価格がある程度下がってもいい、ということです。家賃収入から手出しなしでローンを完済でき、キャッシュフローがプラスの状態を30年などの長期で維持できるなら、その物件は超優良物件と言えます。

対してキャッシュフローがマイナス月10万円・年間120万円という場合、30年持っていると3,600万円の赤字です。その場合、3,600万円以上に物件価格が上がらなければトータルで損、ということになります。

成長率の低い日本において、値上がりしないと利益が出ない、あるいはキャッシュフローの累積赤字を解消できない不動産はかなり問題です。

「キャッシュフローが赤字の物件=価格上昇に賭けるギャンブル」であり、かつ負けの可能性がかなり高いのです。

成長率が低く、価格上昇が見込みにくい日本においては、キャッシュフローがプラスになることがとにかく重要です。立地がいい、5年後に駅前再開発がある、何らかの事情があって価格が極端に安いなど、特殊な事情があれば価格上昇もあり得るでしょう。

そうでなければ基本的には値上がりは難しく、キャッシュフローがプラスでなければ投資する意味がない、ということになります。

滝島 一統

株式会社光文堂インターナショナル

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)