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 穏やかな空気が流れ、落ち着いた品のあるイギリスらしい雰囲気が漂うウェルズには、大聖堂に隣接した主教宮殿(Bishop's Palace)に白鳥が住んでいる。

 救済団体に救助され宮殿に運び込まれた白鳥は、宮殿からファミリーの一員として迎え入れられ、大切に保護されている。

 ここの白鳥のユニークなところは、餌がほしいとき、門番小屋の窓からぶら下がっている2つの鐘の1つを鳴らすよう伝統的に訓練されていることだ。この伝統は約170年の歴史がある。

【画像】 1850年代より続く、ベルを鳴らして餌をもらう宮殿の白鳥

 イギリス・サマセット州ウェルズは、国内で一番小さなシティー(市)として知られている。というのも、イギリスでは大聖堂がある場所は、人口が少なくても「街」ではなく「市」とみなされるからだ。

 ウェルズの大聖堂に隣接した司教宮殿と庭園の堀に住む白鳥は、餌やおやつが欲しいときには、いつでも鐘を鳴らすことで有名だ。

 現在、白鳥の鐘は2つある。1つは門番小屋の左側の窓のすぐ下に、もう 1つは右側にあり、白鳥が引っ張るためのロープが垂れ下がっている。

 門番小屋の窓からぶら下がっている2つの鐘のうちの1つを鳴らす白鳥の行為は、実は1850年代にまでさかのぼる伝統となっている。

 白鳥に鐘を鳴らして餌を求めるよう最初に教えたのは、司教の娘だと伝えられている。

 ここで暮らす白鳥は幸せで、健康を維持できるように、特別に配合された餌を与えられているという。

 親鳥となる白鳥は、毎年、生まれたばかりのヒナが鐘を鳴らせるように訓練する方法をちゃんと知っていて、だからこそそれは古くからの伝統となってきたようだ。

救済団体に救助された白鳥が宮殿で保護されて暮らしている

 宮殿は、白鳥の救済団体『Swan Rescue South Wales(スワン・レスキュー・サウス・ウェルズ)』を通じて、長年にわたって白鳥を救出し、宮殿ファミリーの一員として迎え入れてきた。

 現在のコブハクチョウのペア、グレースガブリエルも、同団体に救助され、2019 年 5 月に宮殿に運び込まれて以来、堀の住民に愛されている。

 2羽は毎年巣作りを改善していて、幸運なことに毎年堀にはかわいいヒナたちの姿を見ることができる。

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 ガブリエルは毎年、ヒナたちが冬から春にかけて、堀から出て独立生活を始める前に、餌を求めて門番の鐘を鳴らす方法を教えている。

 次世代のヒナの巣作りは、2月から3月に始まり、産卵は3月後半となる。

 グレースが巣に約40日間留まって卵を温め、ヒナは5月の第1週頃に孵化する傾向にあるという。

 かつての白鳥のペア、ブリンとウィンは、長年愛されたが、悲しいことに2018年4月に亡くなり、ウィンは同年10月に残りの4羽のヒナたちとともに堀から去った。

 この白鳥一家は、白鳥の群れに人気の別の土地へ向かったと考えられている。その後、ウィンは2019年1月に一時的に堀に戻ってきたが、また飛び去って行ったそうだ。

 だが、今はグレースガブリエルが生まれてくるヒナたちに伝統を受け継いでいる。

何世代にもわたる伝統は今後も続いて行く

 ウェルズの大聖堂や司教宮殿は歴史的にも有名だが、何世代にもわたって白鳥たちが鐘を鳴らし餌をもらう伝統は、間違いなく宮殿の最も魅力的な光景となった。

 現在は、一部の宮殿は住居として使用されているが、多くは訪問者用に一般公開されていて、たくさんの観光客が訪れる名所になっている。

 そんななかで、鐘を鳴らして餌をねだる白鳥のかわいらしい姿は、見る人々に笑顔をもたらす。

 宮殿の全員が白鳥をファミリーの一員として大切にしていて、非常に世話に献身的であることを、訪問者は学ばずにはいられない。

 敷地内には白鳥をテーマにしたさまざまなアート作品も展示されているという。

 以前は、白鳥のライブ配信「スワンカム」が公開されていて、白鳥の様子をウェブサイトからも観察できたが、残念ながら現在は未公開となっている。

 しかしながら、現地へ足を運べばいつでも白鳥に会える。

 宮殿の非公式白鳥調教師モイラアンダーソンさんは、グレースガブリエルと協力してヒナたちに鐘を鳴らす訓練をしているそうで、このかわいらしい伝統が今後も多くの人の目に触れることは間違いないようだ。

References:Royal Swans Ring A Bell Whenever They Decide They Want A Treat / written by Scarlet / edited by parumo

 
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ベルを鳴らしてごちそうをもらう白鳥たち。170年の伝統を持つ英国宮殿のロイヤルスワン