アスリートにとって大切な集中力。競技センスやスキル、運動能力がどんなに素晴らしくてもここ1番の場面で集中力がなければ、良い成績を残すことができません。もちろんアスリート以外においても勉強や仕事などでパフォーマンス向上を目指したいという人も身につけたい集中力。まずは集中力とは何なのか、集中できない原因などを深く理解することが必要です。そして克服するためのトレーニング方法などを実践すれば誰でもパフォーマンス向上へのステップアップとなります。特に短期間でも効果が出やすいのが”一点集中法”。今回は、集中力や一点集中法についてお話します。

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精神疾患も予防、”集中力の重要性”

勉強や仕事、もちろんスポーツにおいても重要な要素ともなる集中力。”一つの事柄に注意して物事に取り組む能力”と定義されています。何かに集中することで”外から受ける刺激を一切無視してしまう精神状態”なのです。

この集中力があるのかないのかによって物事の進行に差が生まれます。それだけではなく近年、集中力の有無が精神疾患の要因にもなることも明らかになりました。うつ病や不安障害、統合失調症などを患っている人の多くは”物事に集中して取り組めない=集中力が低下している”状態になります。

逆に言えば、集中力があれば困難な状況でもポジティブに捉えることもできます。物事を無駄なく判断し、効率的にこなすことも可能になる重要なものです。また集中力があることで真面目な人が陥りやすいとされるメンタルの不調、 “燃え尽き症候群”までも防ぐことができます。

これほどまでに大切な集中力。「自分には無い」と悲観的になることはありません。人が何かに集中できる時間は、大人の場合でたった20分だと言われています。人間の脳は、元々”集中しにくい構造”であり、集中力が長く続くようにはできていないそうです。

もちろん生まれつき性格や才能などによって集中力を維持しやすい特性を持つ人もいます。しかし人間の脳の仕組みや特性を理解すること、集中力が続かないことをカバーすることである程度コントロール可能にすることができます。同時に自分の集中力が続かない原因や弱点を克服することで誰でも集中力を高めることができるのです。

メンタル安定、”環境音楽の効果”

誰もが身につけたい集中力。途切れてしまったり続かない原因として”周囲に気が散るものがある、段取りを決めれていない、必要性を感じないまま取り組んでいる、一度にたくさん抱えすぎ、ながら作業、長時間の作業、体調や精神が不安定”など実にさまざまなものが挙げられます。

集中力を高めるためには、まず気が散るような雑念を排除することが必要です。日々の食事に気を遣い栄養を取ることも効果的です。そしてビデオゲームや音楽を聞くこと、もちろん運動をすることも効果的と言われています。気持ちをリラックスさせることもできるため、音楽の中でも特に効果ありと言われるのが”環境音楽”です。

アコースティックギターやピアノ、自然音や電子音などの心地良い楽器が含まれるシンプルな音楽のことです。突然中断をしたり、急激なテンポの変化などがなく安定したリズムが理想です。

環境音楽によって心が落ち着きを保つだけではなく、集中力を妨げるような雑念をシャットアウトすることもできます。さらに思考を分析したり脳内を活性化させることでより新鮮な情報を吸収しやすくなります。

集中力のみならず脳の能力まで高める環境音楽のメリットです。メンタルが落ち込んだ時や忙しく予定が立て込んでいる時には、特に効果を発揮できるのです。

スランプでも心強い、”一点集中法”

集中力を高める方法の中で最も手軽なのが一点集中法になります。メンタルトレーニングの一種で道具などを一切使用しないため、簡単に行うことができます。この方法のメリットは、短期間で集中力をあげたり、途切れた集中力を回復させることも可能なことになります。

たとえば起きてすぐや今から練習したり、試合に挑む前に有効なトレーニング方法です。また頭がしっかりしている状態でもやるべきことが多く注意力が散漫になってしまいそうな時にも使える手段です。

その際、この方法を行う前に物事の優先順位などを定めたり気が散ってしまうようなものはなるべく見えないようにすることが事前準備として必要です。すると、ミスなく、効率的に物事を進めることが期待できます。

最も厄介でアスリートが頭を悩ませるスランプのようなメンタルが安定せず、気持ちが弱ってしまっている時にも非常に心強いトレーニング方法でもあります。

作業効率が悪くなってきた時、集中できない時に是非試してもらいたい2種類の一点集中法をご紹介します。

腹式呼吸
まず1種類目は、ワードやグラフィックソフトを活用する方法。最初に行うのが時間にしておよそ10秒ほどの腹式呼吸です。心の中でゆっくり10秒数えて腹式呼吸することで気持ちを落ち着かせます。

次にワードやグラフィックソフトにて中央に点を一つ書きます。背筋を伸ばし、目線より少し下あたりに点が来るように調整します。そのまま静かに呼吸し、この点を集中して凝視します。

しばらくすると黒い点の周りにぼんやりと白い輪郭が現れます。それでも1分以上この黒い点を見ることに集中します。最後に1分ほど目を閉じて瞼の裏に残った残像に集中します。目を開ければ終了です。

カードを使う
もう1種類は、一点集中カードを利用して視覚を活用する方法。カードをお持ちでない方でも検索すれば画像が出ますので同じように作ることができます。

まずカードを20秒ほどじっと見つめた後に目を閉じ、残像を思い浮かべます。いずれの方法も最初は数秒で消えてしまう残像です。しかし繰り返していくことで1分以上も残像が残るようになってきます。30秒以下だと集中しにくい状態で60秒程度は集中できている状態になります。90秒以上であればかなり集中できている状態です。

まとめ

このように一点集中法のトレーニングを行うことで脳のエネルギーを一点に集中させることができるようになり、結果的に集中力がアップします。そして、恐怖心や不安、緊張状態までほぐします。

”集中すること”と”リラックスすること”は表裏一体です。どちらかが強すぎてもうまく行かず、絶妙なバランスの上に成り立っています。

他にもレモンの香りを嗅ぐことで交感神経は優位になり脳をスムーズに集中できる状態に導く、またコーヒーに含まれるカフェインと緑茶に含まれるテアニン2つの成分を一緒に摂ることでも集中力が高まると言われています。一点集中法と同じくメンタル的なものとして”自分は集中できる人間だ”と強く抱くセルフイメージを持つことも効果的なのです。

その点においてはセルフイメージの形成時にメンタルコーチングを受けることをお勧めします。

今回は、集中力や一点集中法についてお話しました。勉強や仕事、スポーツをする上でスキルや知識を身につけるために努力することが一番大切なことです。この土台に集中力が合わさることで完成度が更に高まります。

しかし、”人は長時間集中できない”という良い意味での開き直りも必要です。その上でお手軽に集中力を上げ、メンタルまで安定させる画期的な手法の一点集中法を是非一度試していただきたいものです。

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム(https://re-departure.com/index.aspx)]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

1983年イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。

アスリートにオススメ、お手軽メンタルトレーニング”一点集中法”