Hello Sleepwalkers8月9日、新体制初の新曲「幽霊街と逆説」をリリースした。7月28日と30日開催されたライブ『Hello Sleepwalkers ONEMAN LIVE 「アルストロメリア」』をもって、結成からドラムを担当していたユウキが脱退。7月31日よりシュンタロウ(Vo&Gt)、ナルミ(Gt&Vo)、タソコ(Gt)、マコト(Ba)4人での活動がスタートした。MusicVoiceではワンマンライブを終えたばかりの4人にインタビューを実施。ユウキラストステージとなったワンマンライブ『アルストロメリア』を振り返ってもらいながら、新体制への意気込み、原点回帰したアグレッシブな新曲「幽霊街と逆説」の制作背景に迫った。【取材=村上順一】

リスタートをしっかり切れた

――ユウキさんラストライブを終えての心境は?

シュンタロウ まだユウキと会うので、実感はないですけど、次に行く気持ちの準備は昨日でできたと思っています。

――個人的なハイライトは?

シュンタロウ 披露した全曲、作った時のことからライブで各地で演奏した思い出も含めてフラッシュバックしました。この曲のここ一緒にアレンジしたなとか、スタジオで一緒にいたときのことを思い出しながら演奏していましたし、2時間を一気に走り抜けた感覚があります。

――ナルミさんはライブを終えて感じたことは?

ナルミ あのライブで生まれ変わったみたいな感じもありますが、変わらない部分もいっぱいあります。いまのベストは出せたなという達成感があります。「幽霊街と逆説」がすごくカッコいいユウキもMCで言ってくれましたけど、本当にいいのができたので、それを引っ提げて走り抜けるしかない、リスタートをしっかり切れたという清々しい気持ちです。とはいえ、帰ってからも爆泣きしましたけど。

ナルミ

――ライブをやる前までは「今回は泣かない」と決めていたと聞いてますが、それは無理でしたね。

ナルミ 無理だとわかったうえで言ってました(笑)。

タソコ 大阪、東京のライブに向けて、ずっと準備をしていくなかで、全部出し切ることを僕の中で決めていました。そうしないとユウキも全力で来てくれないだろうと思っていて。昨日は最初から最後までずっと100%で演奏していたので、終わってから楽屋で倒れてました。気力も体力も全部出し切りました。今までのライブで一番楽しかったし、一番いいライブだったと思います。

タソコ

――ベクトルがこれまでとは違いますよね。5人での集大成を残したいみたいな。

タソコ 今日、朝にシャワー浴びながら4人かみたいな感じもありました。どういう音楽をこれから作っていくのか考えたりもしましたし、今はまだ不思議な気持ちです。

――マコトさん、ライブを終えての今の気持ちは

マコト ここ2ヶ月ぐらいユウキが脱退する最後の日に向けてずっとやってきて、終わって脱退したという状態なんですけど、実感が全然なくて。ユウキが今ここにないというのもちょっと不思議な感じです。リハに入ってセトリを決めたり、ライブアレンジの話をした時に実感するのかなと思っています。

――ドラマーとベーシストリズム体として関係性は深いと思うのですが、不安とかありますか。

マコト 演奏面でちゃんと合わせられるか心配はありますが、なんだかんだで僕なら大丈夫だと思っています。

――マコトさんがドラマーに求めるものは?

マコト 求めるものは個性です。僕はライブの上でのミスは全然許容できるといいますか、テンションが上がった結果なら、それはそれでいいものだと思っています。ユウキはすごく個性がありましたから。

――ライブでミスをしているイメージはないです。

シュンタロウ 全然ありますよ。

マコト 基本的に思いっきり外すとかはないのですが、ちょっとリズムがずれたりとかはあるので。そういう時にユウキが「あそこが〜」みたいなことを言っているのを聞くと、僕はニッコリします。

シュンタロウ この前のライブでユウキがスティックを落として、脇腹がつって拾えない時に、演奏しながらマコトユウキの横にやってきてニッコリしてたよね(笑)。でも、ベースがリズム体という感じがこのバンドはしないよね。ベースもギターと同じ“竿もの”の一部みたいな。

マコト うん。「ボトムを支えます」という感じではない。

――ドラマーはサポートになりますけど、固定するのか、もしくは何人かに頼む感じでしょうか?

マコト 何人かに頼むことになると思います。ありがたいことに、知り合いのバンドマンから紹介もちょこちょこあったりして、サポートしてくれる方々に恵まれています。

シュンタロウ いま、サポートに入っていただいている方とは打ち解けてきていますが、課題は僕らがどこまでドラマーの方と仲良くなれるかです。

ナルミ メンバー全員、人見知りなので(笑)。

僕らがバンドをやめたら何が残るんだろう

――シュンタロウさんは考えた結果、ユウキさんの脱退を止めなかったと聞いていますが、3人はユウキさんが脱退するという話が出たときはどのような心境だったのでしょうか?

マコト ユウキが「このままだとドラムが嫌いになりそう」と言っても、脱退は止めようと思ったのですが、3歳ごろからドラムをやっていたユウキが、ドラムを嫌いになってしまうというのは、もはや人生の否定になるじゃないですか。ですので、そこを尊重しないといけないなと思い、止めたい気持ちを我慢しました。

ナルミ ドラムを叩いてさえいてくれればまた会えるじゃないですか。もしかしたらまたバンドに戻ってきたいと言うかもしれない。それを考えた時にドラムをやめてしまったらその可能性もなくなってしまうと思いました。それはユウキの心のためにも、私が友達という目線で見た時に、そういう心境だったらバンドはやめた方がいいなと思いました。もし違う理由でやめたいとかだったら、「ちょっと待って」と全力で引き止めていたと思います。メンバーとしては脱退は止めたかったけど、友達としてこれは仕方ない決断だと思っています。

タソコ このままユウキと一緒にHello Sleepwalkersの活動を続けていったら、何か障害になる可能性もあるし、ユウキ自身もそのストレスを抱えて生きていくというのも問題になっていく。お互いにそれはどちらもメリットがないというか、むしろデメリットの方が大きいと思いました。だったら、ユウキが生きたいように生きていく方がいいなと思いました。

――ユウキさんが脱退して、バンドが解散する可能性もあったと聞いています。それを食い止めたのがタソコさんだった?

ナルミ タソコも最初は解散の雰囲気だったよね?

タソコ そうだったね。

シュンタロウ 何回か話し合いをしていて、最初はタソコも僕と同じようなマインドで、何回か話し合いを重ねていくうちに改めて考えなおして。

タソコ 冷静になって、僕らがバンドをやめてしまったら何が残るんだろうって。きっとバンドをやり続けた方が楽しいだろうなという気持ちに切りかわりました。

ナルミ ユウキが脱退したいという話になった時に、私もみんなも鬱々したのですが、基本的に1人がそうなるとみんなに伝染していくんです。タソコが言っていたように、自分たちから音楽をとったら、本当に何も残らないなって。もったいないから絶対やめない方がいいし、私はこのバンドが終わったとしても、曲を書き続けるなら歌うし、サポートもするよ、形は変われどなんかやろうよとは言ってました。でも、できるならこのバンドを続けたいと伝えたら、みんなちょっと元気を取り戻してくれて。

――ほぼナルミさんの一声で存続が決まって。

ナルミ でも、ダメ押しになったのはタソコです。

――ナルミさんはこれからの活動、どう感じていますか。

ナルミ ライブをまだやれていないので、まだふわっとしています。(※取材時)いろいろ不安はありますが、もちろん期待もあります。ドラマーが変わるとよくも悪くも変化はするので、いい方向に転ぶといいなと思っていて、ファンの皆さんから「今のHello Sleepwalkersカッコいい」と思ってもらえるようにしたいです。

タソコ サポートしてくれる方は、ユウキとはスタイルが全然違うので、アレンジ面とかライブでこれからいろいろ考えなければいけないこともありますが、それも楽しめるんじゃないかなという期待もあります。僕は楽曲がブラッシュアップされていく過程が好きなので、そういう作業も楽しみです。

改めてバンドの姿勢について再確認した

――新体制に向けてメンバーでミーティングを行ったと聞いています。行ったことで変化はありました?

マコト お互いにそこがダメとか話し合った中で、間違いなく僕が一番言われました(笑)。集中攻撃を受けたわけですが、それはまあ、そうだなと。

――その事実を受け止めて。

マコト はい。例えば、遅刻をしないようにと言われるということは、実際に遅刻していたということですから。あと、メールの返事をちゃんと返すとか...。

――人としてみたいな(笑)。

マコト そうです。

ナルミ マコトは人として欠落している部分が多くて、以前から指摘はしていたのですが、全然刺さってなくて。私たちはそういった話し合いのことを「棚上げトーク」と呼んでいるのですが、自分も遅刻したりするけど、あなたも遅刻しすぎだよ、みたいなことを言い合うんですけど、マコトは「いや、おまえもこの前、遅刻してたよね」みたい感じなので結果、刺さらない(笑)。

マコト 大人としてというかちゃんとした人としての部分。今まではちょっと軽視していて、ベースがうまければいい、曲が作れればいいといったマインドだったので、今後それでやっていくのはさすがに許されないんだなと思いました。でも、言われたことは今のところちゃんと頑張れていると思います。

――現在バンドとしての目標、スタンスみたいなものは変化していますか。

シュンタロウ ずっとメンバーと一緒に生活していたんですけど、改めてバンドの姿勢について再確認をしました。近くにいたのに深くしゃべる機会がなかったので、ユウキが脱退する、しないの瀬戸際になって、ちゃんと話し合うことができました。このままカッコいい音楽を変わらずに続けてやっていこう、というのはそこで改めて固まりました。

――いま、音楽もそうなんですけど“音+α”がより求められる時代だなと思っていて、+αの部分で考えていることはありますか。

シュンタロウ 僕がまだそこまで考えきれていないというか。部屋で曲を作っていてめちゃくちゃカッコいい曲ができたからみんなに聴いてもらいたい、という気持ちからバンドを始めたので、エンタメ性という部分に関しては、今のところ深くは考えてはないです。

タソコ でも、たまに変なアイディアは出してくるよね。

シュンタロウ トランポリンとかね。ステージに置いてあったら楽しそうだなと思って。

タソコ 他にもマッチョな人が出てくるMVを作ろうみたいなこともあった。

ナルミ 突拍子もないことで言うと、宇宙でライブができたら楽しそうだよねとか。空気がないから音も聞こえないし、絶対できないような気がするけど、そんなことができたら絶対面白い、みたいなことを言い続けてるという印象です。

――めちゃくちゃファンタジックな構想で(笑)。

シュンタロウ でも、現実的なものもあって、例えばナルミが高速でラップをするとか、音楽的に突拍子もない変わったことをやってみたいなって。それがエンタメ性と呼ぶのかはわからないですけど、新しいHello Sleepwalkersの引き出しを開けることは、常にやっていくと思います。

音の原点、その最新版を一発目に出したかった

――「幽霊街と逆説」を新体制一発目に選んだ理由は?

シュンタロウ 原点回帰と言いますか、今までやってきたものをさらに尖らせて、疾走していくような曲を作りたくて。「幽霊街と逆説」は、ユウキがバンドを脱退したいと話した後に作り始めた曲でした。新体制一発目の候補曲はいくつかあったのですが、これまでHello Sleepwalkersがやってきたもの、音の原点、その最新版を一発目に出したくて、この曲を選んだという経緯があります。

――Aメロは7拍子ですよね?

シュンタロウ もともとは4拍子だったんですけど、アレンジしていくうちにこうなっちゃいましたね。

――どうやったらそうなるのか、シュンタロウさんのロジックがよくわからないですよね。

マコト 最初は1番のAメロだけ4拍子で、2番のAメロから7拍子だったんですけど。

シュンタロウ 当初は展開をつけていたのですが、1番のAメロが大人しすぎない? みたいな話になりアグレッシブにしました。でも、乗れる7拍子だと僕は思っています。ギターフレーズがこの曲で1番好きなポイントで、ミックスしていくうちにそのフレーズはほとんど聞こえなくなったのですが、しっかり役割は果たしていて。最初はそのフレーズを4/4拍子で作っていたのですが、3/4に変えなければいけなくなり、よりプレイが難しくなりました。

――ナルミさん、初めて聴いたときの印象はいかがでした?

ナルミ また変な曲を作ってきたというのが第一印象なのですが、デモの段階から私は歌うので、サビを歌った時に「この曲ムズっ」と思いました。<なんつって>と言っているところが好きです。シュンタロウが「なんつって」なんて言わないかもと思い、そこはちょっとシュンタロウっぽくなくていいなと。あと、デモを作っている段階で最後の3行はけっこう変わりました。歌メロも変わったし、常に無理難題を押し付けられているみたいな感じで(笑)。「これカッコよくない? できる?」、「じゃあ、やってみますか」みたいな感じでできてしまうんですけど。

マコト 一回全員で「これは無理」とか言ってみたいよね(笑)。

――そういうパターンはないんですね。

ナルミ その場合はそれよりいいアイディアをみんな持ってきます。

――そもそもライブのことは考えてます?

タソコ まあなんとかなる、みたいな感じです。世界最速で弾けと言われてるわけではないので、練習すれば物理的にはいけると思っていて。もし無理だったら、改めてライブアレンジを考えようかとなりますから。

――タソコさんが今回注目してほしいところは?

タソコ サビの感じがすごく好きです。サビのエモさ、エネルギッシュな感じをライブでも再現できるようにしたいなという気持ちです。

――この曲のドラムはどなたが叩かれているんですか。

シュンタロウ BACK DROP BOMBというバンドのMasuoさんです。ユウキレコーディングドラムテックとして入っていただいていた方で、いつもセッティング、音作りを手伝っていただいていたので、「今回、この曲を叩いていただけませんか?」とお願いしました。

――マコトさん、Masuoさんと一緒に演奏してみていかがでした?

マコト シンプルにうまいなあと思いましたし、すごく音が良かったです。

――重心が下がってユウキさんとはまた違ったロックサウンドで、ラウドな方向に行ったような感じがしました。マコトさんのお気に入りポイントは?

マコト 好きなところはギターソロです。ソロ全体がすごく良くて。そのセクションを抜けてからのCメロがめちゃくちゃ好きで、流れが気に入っています。

シュンタロウ もともとドラムがガンガン入ったところも全部なしにして、Cメロの前半はドーンと広い世界に1人ポツンと立っているみたいなイメージにしたので、狙い通りにできました。

――タイトルはどのような経緯からつけられたのでしょうか。

シュンタロウ これは歌詞からそのままとりました。主人公は1人ガラッとした街にいて、それこそ音楽をやり始めた時の破壊衝動のような感じ、青さともいうのかわからないですけど、そういうものを入れたくて。 1人の主人公が何もかも壊したいけど、愛してもいたいという逆説、自分も過去にこういう気持ちのときがあり、それをサビに落とし込みました。その感じがバンドのリスタートにいいかなと思ったんです。

――いろんな意味で原点回帰みたいなところがあるわけで。

シュンタロウ そうですね。最初は別に打ち出したいなと思ってなかったのですが、最終的にそうなったという感覚です。

――幽霊街というワードが面白いなと思って調べたら、『マジック・ザ・ギャザリング』(戦略トレーディングカードゲーム)に「幽霊街」のカードがあるのですが、そこからインスパイされたのかなと思ったり。

シュンタロウ あー、確かに土地カードで「幽霊街」ってありました。でも、そこからではないです。ファンタジーっぽい要素とか『マジック・ザ・ギャザリング』みたいな壮大でもあり、退廃的な景色みたいものは昔から好きです。ずっとやってきたことで自分の気持ちが入っているけど、どこか現実じゃないというか。僕は違う世界の話みたいなものが好きなので、それも今回は入れたくて。変わらずやっていくよという意思表示でもあります。

――さて、2024年3月に東名阪ツアー『Hello Sleepwalkers ONEMAN TOUR 2024(仮)』が決定していますが、どんな姿を見せたいですか。

シュンタロウ 楽曲もそろいはじめてきました。ワンマンライブ『アルストロメリア』のMCでも話したのですが、変わらずカッコいい音楽を作っていく、これまでのHello Sleepwalkersよりも4人になってより研ぎ澄まされた、そういう音楽を作って、それをステージで見せたいと思っています。それをまたみんなと一緒に楽しめたらと思っているので、来年のツアー、期待して待っていてほしいです。

――ちなみに現在のHello Sleepwalkersは、第何章くらいのイメージですか。

ナルミ Hello Sleepwalkersになる前が第1章で…。

シュンタロウ Hello Sleepwalkersになってからが第2章、活動休止明けが第3章だと思うので、今は第4章ぐらいかな? 

タソコ 第3章がめちゃくちゃ短い(笑)。

ナルミ 殻を破り続けてきているバンドです!

シュンタロウ 4人での第4章、期待していてください。

(おわり) 

ライブ情報

Hello Sleepwalkers ONEMAN TOUR 2024
公演日時
2024/03/16(土)大阪 梅田Shangri-La
2024/03/17(日)愛知 名古屋ell.FITS ALL
2024/03/20(水・祝)東京 代官山UNIT