どれだけ月日を重ねても、夏になれば子供の頃の夏休みを思い出すもの。今回は、平成初期に小学生時代を過ごした人ならノスタルジーに浸ること必至の漫画を紹介したい。

【漫画】「平成時代の夏休みの思い出」を読む

「びわっこ自転車旅行記」「漫画アシスタントの日常」(竹書房)、「射~Sya~」(スクウェア・エニックス)などの作品がある漫画家の大塚志郎(@shiro_otsuka)さん。そのかたわら、オリジナル同人誌「漫画の赤本」シリーズなどの自主制作作品も発表しており、その中の一つに平成初期の小学生の日々や文化を描いた「平成小学生の日常」シリーズがある。今回取り上げるのは、同シリーズの一作「平成時代の夏休みの思い出」だ。

■「冷房つけっぱなしはNG」だった!?90年代の夏を漫画で追体験

猛暑日や熱帯夜が増え、今では夜間もつけっぱなしが当たり前になった冷房。だが平成初期は「体に悪い」という風潮もあり主人公の少年のようにクーラーを親が切ってしまい、夏休みの朝は暑さで目覚める…というのは珍しくない光景だった。

同エピソードは、そんな平成初期の夏休みを過ごす小学生の日常を描いた内容。今ではあまり見かけなくなった日中のアニメの再放送や、友人たちと過ごす駄菓子屋でのひと時といったノスタルジーを感じさせる一幕をはじめ、テレビゲームに興じる姿や避けて通れない夏休みの宿題など、現在にも通じる光景まで、夏を謳歌する姿を切り取っている。

平成一桁年代に子供時代を過ごした30~40代なら思わず頷く内容も多いだろう同作。昨年7月SNSに同エピソードが投稿された際には「子供の頃の記憶が蘇ってきた」「メチャクチャ分かる!」「懐かしすぎて泣いた」と共感のコメントが多く寄せられた。

■平成初期から約30年、なくなっていったものや変わったものへのまなざし

2021年から一次創作同人誌のイベント『COMITIA(コミティア)』にて発表されている「平成小学生の日常」シリーズ。作者の大塚さんに話を聞くと、「平成時代の夏休みの思い出」は、2冊目の「メダルゲーム編」に掲載したものを加筆修正したものだという。

作品には大塚さんの思い出が反映されているそうで、「90年代初期の頃の、都会から少し離れたよくある田舎の町の空気感を出そうと思い、当時住んでいた自分の家をできるだけ再現して描いております」と話す。登場人物もフィクションを交えつつも、90年代初期の小学生というコンセプトで描いているという。

同シリーズでは夏休みの過ごし方をはじめ、駄菓子屋ガチャガチャやおもちゃ屋に置いてあったメダルゲームといった当時の子供にはなじみ深いものから、宿題の思い出や登下校での子供の遊び話のように、形は変えつつ今の小学生に共通するものまで、幅広い題材で描いている。

その中で大塚さんは「令和の現代になくなったり少なくなってしまったようなものを、できるだけ取り上げようとしています」と話す。流行のゲーム機やおもちゃ、公園の遊具、スポーツなどを実体験に加え、当時の資料を振り返りつつ作品に取り入れているという。

世代直撃の人はもちろん、当時を知らない人にはきっと新鮮に感じられるだろう同シリーズ。自分が体験した夏休みの過ごし方と比べて楽しむのも一興だ。

取材協力:大塚志郎(@shiro_otsuka)

直撃世代には懐かしく、知らない世代には新鮮な平成一桁年代の小学生の夏/大塚志郎(@shiro_otsuka)