男子高校生特有の青春が詰まった小沢としおの人気漫画を実写化する映画『Gメン』。映画初主演の岸優太は、本作で男子校ヤンキーとオタクしかいない校内最底辺クラス=G組の転校生・門松勝太を、竜星涼スクールカーストのトップA組だったものの、ワケあってG組に転落してきた学校のプリンス的存在・瀬名拓美を演じる。原作者の小沢が「岸くんは勝太を演じるために生まれてきたのではないか」とコメントするほど、まさにハマリ役の岸。そんな岸とアドリブ満載という息ぴったりの演技合戦を見せた竜星。劇中と同じように気兼ねない関係性を感じさせる2人が、ある意味“規格外”な撮影を振り返ってくれた。

【写真】岸優太、竜星涼らがクセ強高校生に! 映画『Gメン』場面写真ギャラリー

■キャストのほとんどが高校生役 岸「ものすごく深みのある高校生に」

 問題児だらけのG組クラスメートたちが繰り広げる友情、ケンカ、恋…の物語が詰まった本作。モテモテ男子校の中でも、問題児ばかりが集うG組に転入してしまった高校1年生・門松勝太(岸)が、竜星涼演じる瀬名拓美をはじめ、矢本悠馬、森本慎太郎、りんたろー。演じるG組の面々や、高良健吾田中圭が演じる先輩たち、恒松祐里演じるレディースのヘッド、吉岡里帆演じるG組担任教師ら、仲間たちと全力で生きる姿を描いた青春エンターテインメント作だ。瑠東東一郎監督の下、クセ強なキャラクターたちがスクリーンの中で躍動している。

――映画のオファーを聞かれた時はどう思われましたか?

岸優太(以下、岸):最初にお話を聞いた時は、『Gメン』って何なんだ?と思いました。

竜星涼(以下、竜星):ハハハ(笑)。

岸:僕が知っている『Gメン』は万引きGメンだけだったので、そっちのたぐいの作品なのかな…と思いました。周囲からも「万引きGメンだと思ってた」という声を、たくさん聞きましたね(笑)。蓋を開けてみたら、ものすごく男くさい作品。原作を読んで、笑わせていただきました。

竜星:僕も出演のお話を頂いてから、原作を読ませていただいたんです。瑠東さんからお話を頂いて、「すごい“イケメン”の役だ」と聞いた時は、「久々に“イケメン”の役、来たな!」と心が躍りましたね(笑)。

――しかも、高校生の“イケメン”でしたね。

竜星:そうなんです。だから、最初は大丈夫かなとは思いました(苦笑)。撮影時は、まだ20代だったんですけど、公開時にはもう30歳だし…。けど、年上の高良健吾さんや田中圭さんも高校生役ということで、「あ、大丈夫だな(笑)」と思いましたね。

――制服姿のご自身を見た時の感想は?

竜星:僕は爆笑でしたね(笑)。共演の(矢本)悠馬には、ずっと「え、キツイって…」「瀬名は違うって…。いや、厳しい」って言われました(笑)。でも僕は僕で、みんなに対してずっと「厳しい…」って言っていましたし、みんなで「キツイな~(笑)」って言いあっていました。けど、みんな、だんだんとなじんでいったんじゃないかなと思います。岸、(瀬名の制服姿は)キュンキュンしてくれた?

岸:キュンキュンですか? いや、それはちょっと…。

竜星:うわぁ(笑)。

岸:…いや、でも映像で見たらやっぱり高校生に見えるからすごいなって思いました。ただ、近くに居すぎると、いいのか、そうじゃないのか、人ってわからないってことがあるじゃないですか。

竜星:近くにいても「イケメンだな」って、だいたいの俳優さんはそういうこと言ってくれるよ? 

岸:いや、それは嘘を言う方が失礼なんで(笑)。

竜星:嘘? 心外!(爆笑)

岸:キャストの皆さんとたくさん一緒にいた分、正解がよくわかんなくなっちゃったんですよ(苦笑)。もちろん、役者さんは本番だと役が憑依するから映像で見ると高校生なんですけど、制服姿は…やっぱり違和感はありましたよね。鏡でよく見ると青ひげ、残ってるし。

竜星:ハハハ(笑)。

岸:よ~く見ると、ですよ。でも、ものすごく深みのある高校生というか。

竜星:深みはあったね(笑)。

岸:深みのある、どこか哀愁みたいなものが感じられて、すごくいい方向にいったんじゃないかなと思います。

――どなたが一番、制服が似合っていましたか?

竜星:どうですかね…僕ですかね。

岸:いや…違いますよ(即答)。

竜星:分かってる! 自分でも分かってるよ!(笑) 最初のカツラ合わせから、ちょっと違和感あるなって思ってたよ(苦笑)。

岸:最初、何か自分の中でハマってなかったですよね(笑)。

竜星:だから言ってたじゃん、みんなに「(自分が)大丈夫?」って。

岸:みんなでお互いを確認し合ってましたね。

竜星:気づけば、周りに「大丈夫!」って言っていましたね(笑)。けど、それぞれみんなキャラクターに近しい部分があったよね。悠馬や森本(慎太郎)くんはビジュアル的にもできあがっていたと思う。岸も勝太そのものという感じがした。原作の勝太のキャラクターにそっくり。これだけ、髪を切ったのは初めてだよね。

岸:このために切ったんですよ。役作りです。

竜星:「(そんなに切って)大丈夫か?」って、みんなが言ってたよね。

岸:そうですよね。それ…褒めてくれてるんですよね? いじってないですよね?

竜星:褒めてるよ(笑)。あと、一人、タクシードライバーみたいな人もいたな…。

岸:タクシードライバー? りんたろー。さんですか?(笑)

竜星:うん。

岸:ハハハ(笑)。

竜星:ずっと「タクシードライバーにしか見えない」って言われていましたね(笑)。

岸:でも、ちゃんとなじんでましたね。


■岸はテンパると面白い? 竜星「監督から『岸を困らせてくれ』って言われていました(笑)」


――現場ではアドリブも多かったとうかがいましたが、撮影はいかがでしたか?

竜星:僕と岸のやりとりはほとんどアドリブのような気がします。僕が瑠東さんから言われたことは一つです。「岸を困らせてくれ」って(笑)。だから僕はずっとあられもないことを言っていました。

岸:そうそうそうそう(笑)。毎回、台本にないことを言ってくるんですよ。こっちはもうドッキドキですよね。心臓バクバクですよ。

竜星:でも、岸の返しが予想をはるかに超えてくるんです(笑)。一緒に芝居をやっていると分かるんですけど、岸は型にはめるよりも泳がせる方が数倍すごい奇跡が起きる時があるんですよ。瑠東さんもそれを察知していたし、僕もその方が面白いと思ったので、アドリブで演じていました。

岸:僕はずっと現場でテンパってましたね(苦笑)。

竜星:一生懸命、テンパってるんですよ。それが面白いんです。そんな役者、なかなかいないですよ。本人がただただテンパっているんだけど、それが面白いし、魅力的だし、勝太のキャラクターにすごく合っています。

岸:だって、毎回お芝居を変えてくるんですよ。リハーサルで何となく形になっていたものを、本番でガラッと変えてくるから、こっちはただテンパる人になっちゃっていましたね。基本的にみんなアドリブをやっているんです。アドリブをやっていない人がいないですね(笑)。

竜星:どれだけ現場で自分が目立てるかという勝負になっていたからね(笑)。もはや、そういうショーだったよね(笑)。現場でも、そういう方が面白そうだという話を、G組メンバーや瑠東監督も含めて、みんなでしていたんです。「現場でぶち込むので、面白かったら採用するスタイルでやっていこうぜ!」みたいな感じで(笑)。それがすごく良かったんですよ。

岸:現場の“生”感、“ライブ”感が、すごくシーンとして生きてましたよね。

竜星:何でもありで「どうやってつなげるんだろう」と思うぐらい自由だったよね(笑)。

岸:僕も、本当にこの役に演じられてるのかなと思っちゃうぐらいでした。

――岸さんそのものが出ちゃってるんじゃないか、と。

岸:そうですね(笑)。

――再共演されたキャストの方も多かったと思うので、キャストの皆さんの関係性もすごくよさそうですね。

岸:田中圭さんとはすでに関係もでき上がっていたのでフラットな感じで一緒にいられました。でも、お芝居の時は、また違う新たな部分の計算を見られたので、出会った時に「やっぱりプロだな」と思ったその気持ちを、また感じさせていただきました

――そんな和気あいあいとしつつ、自由度が高くて、かつキャリアのある俳優の皆さんがいらっしゃる現場で、岸さんは座長としてどんな思いがあったんですか?

岸:主演というプレッシャーが、いい意味でも、悪い意味でもなかったんです。クラスの一員という感じでその場に居させていただいている感覚でした。周りも、先輩が多くて経験もキャリアも全て上の方ばかりだったので、僕はむしろ身を委ねていましたね。でも、自分のできることは最善を尽くしたつもりです。座長として、カフェカーとかは用意したかったんですけど…。

竜星:ハハハ(笑)

岸:自覚がなかったです。すみません!(苦笑) 差し入れ1つや2つぐらいですかね、できたのは。最低限のことしかできなかったです。

竜星:でも、やっぱり岸の人柄がすごくみんなを和ませていたと思う。座長として引っ張っていかなきゃっていうこともあるかもしれないけど、岸の場合は、みんなが応援したくなる、かわいがりたくなるというチャーミングさがあったからすごく親近感が持てる。あとは、アクションもあったんですけど、やっぱり機敏で瞬発力があるんですよね。瞬発力って、絶対芝居には大事なことだと思うので、それは彼の感性の素晴らしさ。やっぱり真ん中に立つべき人間なのかなって思いました。


■今この瞬間を生きる高校生のリアルな青春が詰まった本作 岸「友達や家族、その瞬間に一緒にいる人たちと楽しんでいただきたい」


――ヤンキーものの作品は根強い人気があってさまざまな作品が上映されていますが、本作は他の作品とは一線を画す青春映画になっていますね。映画をご覧になってどう感じられましたか?

岸:この作品は、緩急が面白いですよね。ヤンキー作品としても面白いんですけど、ずっと戦っているというわけでもないし、恋愛や友情…いろいろなストーリーがあるので、そういった意味でさまざまな角度から刺激をもらえる作品。なので、見終わった後、疲れると思います(苦笑)。

竜星:(笑)。女性キャストの皆さんも今回は結構いらっしゃるので、そういうところは新しいかもね。あと、高校生たちの日常、常に中二病みたいな空気感があったよね。学生ノリが楽しいというか…。「男って、バカだな~」みたいなことで、現場でもずっと盛り上がっていたし。本当に…フフフ(思い出し笑い)。

岸:常に笑ってましたよね。

竜星:うん(笑)。現場がとにかく和気あいあいとしていて楽しかった。

――そうした空気感がスクリーンにもでていますよね。

岸:ある意味、リアルな学生っぽさがあるのかな。

竜星:喧嘩よりもどちらかというとコメディな部分でね。

――周囲の反応はいかがでしたか?

岸:(高橋)海人(※「高」ははしごだかが正式表記)が試写を観てくれて、めちゃくちゃ褒めてくれました。ちゃんと観てくれていたっていうのがありがたかったので、僕も感謝を伝えました。超、褒めてくれましたね。映画のことも、僕のことも。

竜星:(岸から)僕には連絡来てないけど…(苦笑)。

岸:そりゃそうでしょ、一緒に試写を観てたし、一緒に出てたじゃないですか(笑)。

竜星:「竜星くん、瀬名、めっちゃ良かったですね」とかないの?(笑)

岸:いやいや、恥ずかしいですよ(照)。

竜星:会った時とかあるでしょ。僕はあるよ(笑)。

岸:いやいや、気まずいっす(苦笑)。舞台あいさつでトークしましょうよ。

竜星:ハハハ(笑)。

――(笑)。映画では登場人物が激変するシーンが印象的だったんですが、お二人は普段、自分が激変してしまう“スイッチ”はありますか?

竜星:僕はスポーツや格闘技をテレビで見ていると、自分がやってるわけじゃないのに、体が勝手に動いちゃうんです。特にボクシングとか相手がやられそうになると、パンチを避けちゃうみたいな(笑)。そういうふうに体が動いちゃうことはありますね。

岸:僕はあれですね…エナジードリンク! シンプルに!

竜星:ハハハ(笑)。

岸:普段からエナジードリンクをあまり摂らないようにしてるんですよ。その分、いざとなった時に摂ると吸収がめっちゃいいんで、マジで翼が生えかけます。

――(笑)。気持ちは熱くて、どこか爽快さもある青春映画に仕上がりましたね。映画公開が待ち遠しいです。

竜星:撮影ではずっとカメラを長回ししていたので、「結局、どこが使われるんだろう」と僕らも演じていて仕上がりがわからなかったんです。めちゃくちゃ笑っているところもあるし(笑)。そういうところも使ってくるのが、瑠東さんらしいんですけど…。そんな瑠東さんのやり方がハマった作品だと思います。“イケメン”な僕と映画館でお会いしましょう(笑)。

岸:この作品は、真剣になりすぎないでずっと観ていられるというところが好きなんです。観ていていろいろな感情になることができて飽きないというか…。夏の上映ですし、皆さんに良い思い出になってほしいです。友達や家族、その瞬間に一緒にいる人たちと楽しんでいただきたいなと思います。

(取材・文/齊藤恵)

 映画『Gメン』は、8月25日全国公開。

映画『Gメン』場面写真 (C)2023「Gメン」製作委員会 (C)小沢としお(秋田書店)2015