静岡県御殿場市に、陸上自衛隊が管理しているものの、アメリカ軍ヘリコプターも発着している空港があります。富士山に最も近い空港といえる「滝ヶ原飛行場」とはどのような施設なのでしょうか。

選ばれし人しか利用できない飛行場

富士山に最も近い飛行場というと、「富士山静岡空港」を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、実は富士山には規模は小さいながらも、国際基準によって定められた別の飛行場もあります。それが御殿場市にある「滝ヶ原飛行場」です。

あくまでも「滝ヶ原飛行場」というのは通称であり、正式名称は「富士場外離着陸場」といいます。ただ、誰でも利用できるわけではありません。ここは在日米軍キャンプ富士」の敷地内に設置された陸上自衛隊が管理する飛行場だからです。

そのため、ここに所在するのは、三重県の明野駐屯地に本部を置く陸上自衛隊航空学校の隷下舞台である飛行教導隊の一部である「富士飛行班」、そして東京都の立川駐屯地に本部を置く東部方面管制気象隊の「第2派遣隊」です。配備されている航空機は富士飛行班のUH-1J多用途ヘリコプターのみですが、航空機事故などに対処可能な空港用の大型化学消防車なども配置されています。

この滝ヶ原飛行場ですが、冒頭に記したように国際基準で定められた飛行場のため、「国際民間航空機関(ICAO)」によって国が定める「RJAT」という4桁のコードが割り当てられています。こうして見てみると、離着陸場とはいえ、立派な飛行場として認められていることがわかるでしょう。

どんな航空機なら発着できる?

では飛行場としてどれ程の規模かというと、滑走路の長さは約750m、幅は約17mです。東京都内にある調布飛行場の滑走路が長さ800m、幅30mであるため、それよりも短く狭いです。そのため、軽飛行機もしくは小型の双発プロペラ機程度であれば降りられるものの、一般的な旅客機は無理でしょう。STOL短距離離着陸)性能に優れた航空自衛隊C-1輸送機ならばギリギリ離着陸できる長さですが、過去に同機が滝ヶ原飛行場に降り立ったという話はありません。

普段は富士飛行班の訓練が行われるだけの静かな飛行場ですが、ここは陸上自衛隊の東富士演習場に隣接しているため、陸上自衛隊在日米軍が訓練で使用する時には、さながら航空祭のような様相になります。

訓練が行われる際には、アメリカ海兵隊垂直離着陸機MV-22B「オスプレイ」や攻撃ヘリコプターAH-1Z「ヴァイパー」、多用途ヘリコプターUH-1Y「ヴェノム」などが数多く飛んで来ます。また、横田基地に所在するアメリカ空軍の特殊作戦機CV-22B「オスプレイ」も時々姿を見せることから、滝ヶ原飛行場は在日米軍にとっても重要な施設であることが伺えます。

ちなみに、滝ヶ原飛行場と道路を挟んで反対側には陸上自衛隊の滝ヶ原駐屯地があります。ここには富士学校富士教導団隷下の普通科教導連隊を中心に、評価支援隊や教育支援施設隊など、陸上自衛隊にとって重要な役割を持つ部隊が多く所在しています。

なお、滝ヶ原飛行場そのものは陸上自衛隊が管理していますが、キャンプ富士は在日米軍の管理下にある施設です。撮影のため、側溝を越えてフェンスに張り付くのはキャンプ富士の敷地内への不法侵入とみなされますので、撮影する際には側溝を越えて芝生に入らないよう気を付けましょう。

滝ヶ原飛行場(富士場外離着陸場)の管制塔と格納庫、敷地の一部(武若雅哉撮影)。