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はじめに

時流がホットハッチにとどめを刺してきた例は多いように思える。自動車メーカーは、より大きな利益を得るために、大きくて背の高いクルマに力を注いでいる。もはや、みごとな専用サスペンションを備えた手頃なコンパクトカーの登場など、望むだけ無駄なのかもしれない。

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いっぽう、自動車会社に課される総CO2排出量規制により、電動化されていないハイパフォーマンスエンジンを積んだMTも、メーカーを苦境へ追い込む存在となった。それゆえ、ルノープジョーのホットモデルは姿を消し、ゴルフGTIはATのみになろうとしている。シビック・タイプRも、英国では販売を終了した。

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テスト車:アバルト500eツーリズモ    SIMON THOMPSON

しかし、かすかな希望の光はある。それが電動ホットハッチだ。

EVであれば、エミッションは問題にならない。パワーアップも、制御を変えるか、より高性能なモーターを積むかすれば済むので簡単だ。重量には懸念があるものの、それを支える上質なサスペンションを備えるモデルが増えてきているのはいい兆しだ。

そんな希望の最先端にあるのが、おそらくアバルト500eだ。ベースとなったフィアット500のEVは、すでに驚くほどおもしろいクルマで、そのホット版ということになるが、今のところ直接的な競合モデルはミニ・エレクトリックくらい。ひとクラス上にはクプラ・ボーンやMG4 Xパワーがある。

来年には、もっとガチンコのライバルが登場する。それがミニ・クーパーEと、ルノー5がベースのアルピーヌA290だ。

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

アバルト500eが、フィアット500のEVを速くしたバージョンであるのは明らかだ。つまり、ベースはかつてのFCAがPSAとの合併前に開発したEV用プラットフォームである。本来ならFCAのさまざまなモデルに使用されるはずだったコンポーネンツだ。

しかし、ステランティスの成立で状況は変わり、今後は旧PSAのアーキテクチャーをグループ全体で使っていくことになった。ジープの小型電動クロスオーバーであるアヴェンジャーはe-CMP2がベースで、フィアットが投入する新型600も同様のメカニズムを採用することになる。

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電装系のすべてやモーターなどが詰め込まれたフロントに、積載スペースはない。そのぶん、リアにはモーターを積まないので、荷室にはそこそこ深さがある。    SIMON THOMPSON

そのため、フィアットとアバルトの電動500は、今後の発展がない袋小路の技術を用いるクルマということになりそうだが、それはあくまで状況が理由であって、メカニズムに決定的な欠陥があるわけではない。機械面で、もっとも複雑で精巧な部類のEVではないが、ホットハッチのよさは得てしてシンプルさによることが多い。シンプルであるにも関わらず、というよりも。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム。スプリングフィアット版よりハードで、ダンパーも再チューンされている。ホイールはスタンダードな500eが17インチ、ツーリズモが18インチ。いずれもEV用のブリヂストン・ポテンザスポーツを履く。

アバルト版のハードウェアは、フィアット版と大半を共有する。バッテリーは42kWhで、モーターはフロントに1基。35psのアップは、メカニズムの変更ではなく、内部損失の最適化や、単純によりハードな使い方をしたことによって得ている。

合わせて、リダクション比は9.6:1から10.2:1へショート化。多少の効率を犠牲にして、加速性能を高めている。理論上は最高速度も下がるはずだが、155km/hでリミッターが作動するので問題にはならない。

パワーアップと低レシオ化があっても、これが小さなクルマであることに変わりはない。それは、前部が小さく、車重が比較的軽いことにもつながる。テスト車の実測重量は1395kgで、前後配分は58:42。Aセグメントとしては重いが、EVとしては軽いほうだ。

フィアット版との識別点は、ホイールを除けば、よりアグレッシブなフロントバンパーとディフューザーのインサート、サイドスカートだ。また、フィアットではLEDのデイタイムライトとなる眉毛のような部分が、黒いトリムに差し替えられる。

フィアット版で残念だったのは、4色のボディカラーにおもしろみのあるものがないことだ。アバルト版にはより楽しげな、アドレナリンレッドやポイズンブルー、テスト車に塗られたアシッドグリーンなどが用意されている。

内装 ★★★★★★★☆☆☆

内装の変更は、ホットハッチにありがちなそれだ。もっとも目につくのはスポーツシートで、高さ調整を標準装備。それでも、高めの着座位置はカバーしきれていない。ヘッドルームは十分にあるが、背の高いドライバーは視点が高くなり、ルームミラーが視界に入りすぎてしまう。

ステアリングホイールは、フィアット用の2スポークから3スポークに交換され、リムの頂点のマーキングは、フロントシートのフォールドに使うループと同じくポイズンブルーだ。500eのシートやステアリングホイール、ダッシュボードはそれぞれファブリックや合成皮革、プラスティックだが、ツーリズモ仕様はアルカンターラを用いる。

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基本構造はフィアット版と同じだが、素材やパーツなどが変更されている。これは、ICEのフィアット500とアバルト版の違いと同じようなものだ。    SIMON THOMPSON

アバルト仕様のマテリアルは全体的に高価そうな感じだが、隠れキャラのようなディテールはそのまま。ドアハンドルにはヌオーヴァ500のシルエット、ワイヤレス充電器にはトリノの街並みを象ったラインが描かれる。

硬く傷つきやすいプラスティックも目につくのだが、フィアット500EVの発売時には2万1995ポンド(約405万円)からという価格で、それを考えれば、許容せざるを得ない感じがした。しかし、いまやその倍近い価格となったアバルト500では場違いな感じもしてしまう。

アバルトとなっても、コンパクト感はフィアットと変わらない。それでも、前席周りには収納スペースが数多く用意される。ワイヤレス充電器はスマートフォンを置くのにピッタリだが、メガネサングラスを置くのにもちょうどいい。センターコンソールには深さのある小物入れがたっぷりとあり、飛び出し式のドリンクホルダーも設置されている。

ただし、フロントのレッグルームは限られていて、シートスライドをもっとも後方まで下げる必要に迫られたテスターもいた。もっとも、標準的なポジションにしても、その背後にはせいぜい子供用のスペースしかない。いざとなれば助手席をできるだけ前に出して後席を使えるが、それでも2+1がいいところだ。

フラットなフロアとツーリズモに備わるガラスルーフは歓迎すべき開放感をもたらしてくれるが、さらに開閉式キャンバスルーフを備えるコンバーティブルも選べる。

荷室容量はフィアット版と変わらず、通常時で185L、後席を倒せば最大550L。これくらいのコンパクトカーとしては十分に実用的だが、実際には充電ケーブルにいくらかスペースを食われてしまう。

走り ★★★★★★★★☆☆

ICEモデルの基準からすれば、アバルト500eのペースはウォームハッチ以上ジュニアホットハッチ未満といったところだ。テストコースでは、0−100km/h=7秒フラットという公称値に0.3秒及ばなかった。

0−97km/hは6.9秒で、フォード・フィエスタSTの6.6秒には及ばないが、フォルクスワーゲン・アップGTIの8.5秒よりは速い。48−113km/hは6.4秒で、これもフィエスタSTとアップGTIの中間くらいだ。

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強烈な加速、とはいかないが、エンジン車のホットハッチで言えば、Aセグメントより速く、Bセグメントにはやや届かないといったレベルだ。    SIMON THOMPSON

もちろん、500eはEVなので、この速さはさほど激しく感じられるものではない。トラクションコントロールを完全に切ることはできないので、前輪は23.9kg-mのトルクをまったく問題なく扱って発進。そこからは155km/hの速度リミッターが作動するまで静かに加速していく。

計測はバッテリー残量80%以上で行ったが、20%を切ってもパワーが大きく落ちた感じがしないのはみごとだ。

静かではないと感じたなら、それは外部に向けたサウンドジェネレーターのせいだろう。スペアタイヤがありそうな場所には、防水・防汚仕様の円形スピーカーが吊り下げられている。サウンドのチューニングには6000時間以上を費やしたといい、英国のオーナーのコミュニティから非常に好意的な反応を得たので、英国仕様には標準装備となったのだとか。

そのサウンドは、エンジンを積んだアバルトのエキゾーストノートをかなりうまく再現している。とはいえ、シフトチェンジがないので、まるで2速入れっぱなしで走っているようだ。高速道路は言うまでもなく、B級道路を走っていても、エンジンを回しすぎているように聞こえる。テスター陣は揃って、すぐにスイッチを切った。

走行モードは3つで、ツーリズモ、スコーピオンストリートスコーピオン・トラックと銘打たれた。主に最高出力とエネルギー回生、ステアリングアシストの強さを変更するものだ。

ツーリズモでは136psでスロットルレスポンスはやや緩め。それでもフィアット版を上回る出力で、一般的なドライビングには十分だ。回生ブレーキは強くなり、1ペダル運転も可能だ。

スコーピオンストリートではフルパワーを発揮し、そこから回生レベルを引き下げて1ペダル運転をオフにしたのがスコーピオン・トラックだ。

この設定は適度にうまくいっている。しかし、できることなら強めの回生ブレーキだけを独立してオフにできれば、さらによかったのだが。

ブレーキペダルは、EVとしてはプログレッシブな効き方をする。113−0km/hブレーキングが44.6mという結果はおみごとだ。

使い勝手 ★★★★★★★☆☆☆

インフォテインメント

アバルト500eのインフォテインメントシステムは、ジープアルファロメオ・トナーレ、果てはマセラティMC20にも搭載される、旧FCAが開発したUコネクトで、PSA系のシステムではない。コントロールは軒並み、反応のいい12.25インチのタッチ式ディスプレイに組み込まれているが、それでもわれわれはこのシステムが気に入っている。

メニューは多いが、好みに合わせてセットアップしてしまえば、ほとんど無視できる。ミラーリングはスマートフォンとの統合がうまくできていて、ショートカットは数多い。JBLステレオは十分にリッチなサウンドだが、高速道路ではロードノイズに邪魔されがちだ。

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旧FCA系のUコネクトはタッチ操作依存型のシステムだが、ショートカットが多く使いやすい。トムトム製ナビの性能がもう少し高ければ文句はないのだが。    SIMON THOMPSON

物申したいのはトムトム製の純正ナビゲーション。目的地が見つからないことがあり、渋滞の認識がうまくいかない場合も見られた。また、航続可能距離が30km以上残っていても、充電を促し続ける。しかも、提示してくる充電施設は、充電速度が遅い、わかっているドライバーなら避けるところばかり。頼りにならないのだ。

燈火類

LEDヘッドライトはアバルト500e全車に標準装備で、ツーリズモにはオートハイビームもつくが、マトリックスタイプの用意はない。パワーは十分だが、驚くほど強いわけではない。

ステアリングとペダル

右ハンドル仕様のペダル配置が理想的といかないのは、フィアット版と同様だ。だいぶ左寄りで、不十分なフットレストに接近している。

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

もしアバルト500eが本当に真のホットハッチとみなされようというなら、ハンドリングは重要項目だ。マニュアル操作のギアボックスも、甘美なサウンドを発するエンジンもそこにはないのだから、なおのことである。しかし、結果は疑問符つくものだった。

ホイールベースが短く、サスペンションが引き締まっていて、レスポンスに優れたフィアット500は、なかなか悪くない出発点だ。そこにアバルトが、実のある改良を数多く施したのがこの500eだ。

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アバルトのステアリングはクイックで一体感を得られるので、かなり自信を持ってフロントを操れるが、硬いサスペンションが生む忙しない乗り心地は、日常的に味わうとうんざりするようなものだ。    SIMON THOMPSON

フィアット版の一番の弱点は、生気のないステアリングだが、アバルトのセッティングは手応えもフィールも増して改善されている。どれくらいグリップがあるかを感じられて、前輪が食ってくれることを信じ運任せで走るようなことにはならない。

ギア比はやや速くなり、動きの俊敏さも加わったが、やりすぎるほどではない。ただし、スコーピオン・トラックモードでは、やや操舵が重すぎで、このパワーと回生レベルのままステアリングだけツーリズモモードのパラメーターにしたいところだ。

500eは真っ当な乗用車としては、現在の新車市場でもっとも小さな部類に入る。英国の、生垣に挟まれた狭いB級道路を走るには理想的なサイズだ。言い換えるなら、道幅に余裕が生まれ、障害物や路面の穴を避ける余地も大きく取れるということになる。そうした場所でも、小柄さを生かし飛ばして楽しむことができる。

アバルトにとって不都合なのは、平均的なB級道路にはバンプが多すぎることだ。そうなると、500eはやや路面を扱いあぐねる場合が出てくる。スプリングダンパーも硬めで、サスペンションのトラベルもさほど大きくないので、結果として忙しない乗り心地が続いてしまう。

それが本格的な問題になるのは、かなり劣悪な舗装の道路においてだが、不意にそういう状況に出くわすと、ドライバーは自信を挫かれる羽目になる。

快適性/静粛性 ★★★★★☆☆☆☆☆

硬いサスペンションは、日常使いでの快適性に問題を引き起こす。高速道路でも市街地でも、落ち着いた乗り心地は決して得られない。バンプはことごとく身体に感じ、ワインディングを飛ばすなら楽しいだろうが、それ以外のシーンにはそぐわない。

この容赦ない硬さは、テスター陣からもやりすぎだという声が上がったが、いっぽうで明らかにスポーティさが売りのAセグメントとしては許容範囲じゃないかとの意見もあった。

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アバルトの性格を考えれば、乗り心地に文句を言うのは詮ないことだ。しかし、ドライビングポジションの不自由さは、どうにか改善してもらいたい。    SIMON THOMPSON

少なくとも減衰は十分に上質で、粗いものではないので、許せると言えば許せる。40タイヤを履いていても、セカンダリーライドはかなりいい。

はっきりしているのは、シティカーがベースであっても、500eは決して快適性を前提においていないこと、また、ほかにも多少の不満があることだ。まず、より上位のクルマのような静粛性がないので、高速道路での長距離移動は疲れる。

また、すでに述べたように、ドライビングポジションが理想とはほど遠い。背の高いドライバーの場合はとくにそうだ。しかし、事態を悪化させているのは、右ハンドル化の弊害がひどいこと。フットレストはセンターの張り出しに干渉され、フットウェルそのものも狭い。

そこにきてシートが高いので、イタリア車らしい腕を伸ばして脚を窮屈に押し込むポジションを強いられる。それを避けるためにはシートバックを立て気味にせざるを得ないが、それがまた長距離乗るには身体に辛いのだ。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

3万4195ポンド(約629万円)からという500eの価格は、航続距離の短い小型車としては高額だ。ツーリズモ仕様は4000ポンド高の3万8195ポンド(約703万円)で、コンバーティブルはそれぞれ3000ポンド(約55万円)高となる。航続距離385kmのMG4 Xパワーが3万6495ポンド(約672万円)であることを考えると、アバルトの価格を素直に受け入れるのは難しい。

残価予想も芳しくない。せめてもの救いは、コンバーティブルが設定されていること。これなら値落ち幅は多少小さいはずだ。月々の支払いも、17ポンド(約3100円)程度の上乗せで済む。

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500eの残価予想はなかなか厳しく、4年後の残存価値は33%。コンバーティブルなら、事態はやや好転するはずだ。

もしもパワーソースを問わず経済的なクルマがほしいなら、小さくて、比較的軽くて、パワフルすぎないものを選べばいい。500eならその3つの条件を満たす。公称電費は5.5km/kWhと控えめだが、動力計測を含む1週間のテスト時の平均値はそれを上回る6.1km/kWhを記録。現実的な航続距離は229kmほどとなる計算だ。

穏やかに走れば、6.4km/kWh以上も見込めるので、WLTP値の254kmも無理な数字ではない。コンパクトなクルマで、テスト時より気候に恵まれれば、もっといい数字が出たかもしれないが、今のままでもこれまでテストしたEVの中ではもっとも高効率だ。

フィアット版と同じく、500eの充電性能は最大85kWで、このサイズのクルマならなかなかいい。最終的には、100kW対応のシトロエンe−C4Xより高い平均充電量となったが、これは充電量が40%に達するまで80kW、60%充電まで67kWを維持したからだ。悪くない結果だ。現実的な3ピンプラグでの充電も可能だが、200ポンド(約3.7万円)のオプションだ。

スペック

レイアウト

アバルト500eはフィアット500のEV版と同じEV専用プラットフォームがベース。今のところ、この2車種以外では使用されていない。前輪駆動のみで、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームだ。

2サイズのバッテリーに対応するが、アバルト版は大容量仕様のみ。前後重量配分は、実測で58:42だった。

パワーユニット

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プラットフォームはフィアット500のEV版と同じもの。前輪駆動のみで、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム。バッテリーは大容量版のみの設定だ。

駆動方式:フロント横置き前輪駆動
形式:永久磁石同期電動機
駆動用バッテリーリチウムイオンニッケルマグネシウム・コバルト)・408V・42.0kWh(グロス値)/37.3kWh(ネット値)
最高出力:154ps/-rpm
最大トルク:23.9kg-m/-rpm
最大エネルギー回生性能:-kW
許容回転数:-rpm
馬力荷重比:109ps/t
トルク荷重比:17.0kg-m/t

ボディ/シャシー

全長:3673mm
ホイールベース:2322mm
オーバーハング(前):775mm
オーバーハング(後):576mm

全幅(ミラー含む):1870mm
全幅(両ドア開き):3740mm

全高:1605mm
全高:(テールゲート開き):2020mm

足元長さ(前):最大1010mm
足元長さ(後):530mm
座面~天井(前):最大970mm
座面~天井(後):860mm

積載容量:185~550L

構造:スティールモノコック
車両重量:1410kg(公称値)/1395kg(実測値)
抗力係数:0.32
ホイール前・後:7.0Jx18
タイヤ前・後:205/40 R18 86H
ブリヂストン・ポテンザスポーツ・エンライテン
スペアタイヤ:なし(パンク修理剤)

変速機

形式:1速リダクションギア(各モーター毎)
ギア比
リダクション比:10.2:1 
1000rpm時車速:11.4km/h
113km/h/129km/h時モーター回転数:9816rpm/11218rpm

電力消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:6.1km/kWh
ツーリング:6.0km/kWh
動力性能計測時:3.2km/kWh

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):-km/kWh
中速(郊外):-km/kWh
高速(高速道路):-km/kWh
超高速:-km/kWh
混合:5.5km/kWh

公称航続距離:254km
テスト時航続距離:229km
CO2排出量:0g/km

サスペンション

前:マクファーソンストラットコイルスプリング、スタビライザ
後:トーションビーム/コイルスプリング、スタビライザ

ステアリング

形式:電動機械式、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.6回転
最小回転直径:9.4m

ブレーキ

前:281mm通気冷却式ディスク
後:278mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS
ハンドブレーキ電動式・センターコンソールにスイッチ配置

静粛性

アイドリング:-dBA
全開走行時(145km/h):74dBA
48km/h走行時:60dBA
80km/h走行時:67dBA
113km/h走行時:71dBA

安全装備

ABS/ESC/LKA/眠気アラート/AEB/4エアバッグ
Euro N CAP:5つ星(フィアット500
乗員保護性能:成人76%/子供80%
交通弱者保護性能:67%
安全補助装置性能:67%

発進加速

テスト条件:乾燥路面/気温18℃
0-30マイル/時(48km/h):2.8秒
0-40(64):3.8秒
0-50(80):5.2秒
0-60(97):6.9秒
0-70(113):9.1秒
0-80(129):11.9秒
0-90(145):15.5
0-402m発進加速:15.6秒(到達速度:145.2km/h)
0-1000m発進加速:29.5秒(到達速度:155.9km/h)

ライバルの発進加速

ライバルの発進加速
フォード・フィエスタST−3 3ドア・パフォーマンスパック(2018年)
テスト条件:乾燥路面/気温20℃
0-30マイル/時(48km/h):2.8秒
0-40(64):3.8秒
0-50(80):4.9秒
0-60(97):6.6秒
0-70(113):8.5秒
0-80(129):10.4秒
0-90(145):13.3秒
0-402m発進加速:15.2秒(到達速度:155.8km/h)
0-1000m発進加速:27.4秒(到達速度:197.6km/h)

キックダウン加速

20-40mph(32-64km/h):2.0秒

30-50(48-80):2.4秒

40-60(64-97):3.1秒

50-70(80-113):3.9秒

60-80(97-129):5.0秒

70-90(113-145):6.4秒

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温18℃
30-0マイル/時(48km/h):8.0m
50-0マイル/時(80km/h):22.7m
70-0マイル/時(113km/h):44.6m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.41秒

ライバルの制動距離

フォード・フィエスタST-3 3ドア・パフォーマンスパック(2018年)
テスト条件:乾燥路面/気温20℃
30-0マイル/時(48km/h):8.8m
50-0マイル/時(80km/h):23.1m
70-0マイル/時(113km/h):45.3m

結論 ★★★★★★★☆☆☆

フィアット版の500EVをテストしたとき、これはアバルト版を作って、楽しいコンパクトEVの先駆者とするベースにうってつけだと思った。たしかにアバルト500eは、ファン・トゥ・ドライブという点では狙いどおりのクルマに仕上がっている。

小さくてすばしこく、レスポンスがよく、ステアリングの出来もいいので、排気音で歩行者を驚かすことなく、B級道路にアタックして思いっきり楽しめる。もっとも、サウンドジェネレーターをオンにすれば、音のほうは話が変わってくるが。

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結論:スタイリッシュで楽しいコンパクトEVだが、価格が高く、洗練させるべき余地も大きい。    SIMON THOMPSON

スタイリングは最高で、マルチメディアから実用性、経済性までよく考えられている。ベースとなったフィアット版と同じくらい、Aセグメント車としてはよくできている。

われわれとしては、シャシーの自由度をもう少し高めて、昔ながらのホットハッチ的な挙動を見せるようにすることを、エンジニアたちに望みたい。また同時に、妥協なく硬くした乗り心地も改善に期待するところだ。さらに言えば、3万4195ポンド(約629万円)からという価格設定も、手頃で楽しいというホットハッチの要件からはほど遠い。

アバルト500eは、電動ホットハッチとしては称賛に値する。しかし、完全体とは言い難い。値段が高すぎることも重ねて訴えたい。アップデートを重ねて、また今後登場するライバルに刺激を受けて、リファインされていくことに期待したいところだ。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

もしもサウンドジェネレーターが、一部のEV懐疑主義者をアバルトのショールームへ呼び込むなら、それはそれでいいことだ。しかし、EVに作りもののエキゾーストノートを加えるのは、ごく初期の自動車に馬車を引く馬の頭のレプリカをつけていたことを思い起こさせる。そんなものが定着していないことは、いうまでもないだろう。

リチャード・レーン

フィアット500のEVモデルに、スポーティなタイヤを履かせたらどうなるのか、試してみたいと考えている。もしそれで、アバルトに近いステアリングの手応えが加わっても、驚くほどのことはないだろう。アバルト500eに買い替えるよりはずっと安く済むので、試す価値はある。

オプション追加のアドバイス

コンバーティブルを選びたい。ハッチバックより高い残価を見込めて、月々のローン支払い額もたいして変わらないからだ。しかも、ロール式キャンバストップによって、小さいキャビンに開放感が加わる。ツーリズモ仕様は高価だ。

改善してほしいポイント

・サスペンションをチューニングし直して、バンピーな道での追従性と、スロットルでのアジャスト性を高めてほしい。
・もう少し太ももを支えてくれるシートがほしい。
・価格を下げてほしい。人工サウンドジェネレーターはオプションにしてもらってかまわない。


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