「不動産投資すると節税できる」というセールストークがあります。しかし、その本当の意味を知らずに「ワンルーム投資」等に手を出すと、大損するリスクがあります。YouTubeで「不動産Gメン滝島」として“不動産業者に騙されないための情報”を発信している滝島一統氏の著書『誰でも儲かる、わけがない 初めての不動産投資必勝ルール 罠を見抜いてお金を増やす』(KADOKAWA)から、一部抜粋してご紹介します。

「節税効果」があるのは相続税だけ

不動産投資を行う場合、目的を明確にすることが重要です。

基本的に不動産投資は「キャッシュフローを得る」ことが目的です。言い換えれば、不労所得を得ることです。しかし、物件を探したり、不動産会社の営業マンなどから勧められるうちに目的があやふやになってしまったりすることがあります。

たとえば、節税効果があるという謳い文句で不動産投資の営業をしている例も少なくありませんが、不動産投資で節税できるというのは大きな誤解です。

医師など、所得の高い人はとくに注意が必要です。

節税目的の不動産投資として成り立つのは、基本的には相続税対策のみです。

資産が多く、相続税の負担が重い場合は相続税対策の必要性が高いと言えます(相続税を惜しみなく納めたいという人は別です)。

相続税がいくらになるかは財産の内容によって異なり、預金や株式を1億円持っていれば1億円として評価されますが、1億円の不動産を購入した場合、評価額は大きく軽減される場合がほとんどです。

1億円を現金のまま相続するより、賃貸アパートを購入するなど、不動産の形にして相続することで相続税の負担を減らせます。

ただ、この不動産による相続税対策も税務署に近年は認められない可能性もあるので(さすが財務省対応が早い!)、顧問税理士とよくご相談ください。

問題なのは、「損益通算によって税負担が軽減できる」という話です。

ビルやアパートを購入して賃料収入を得ると、確定申告をして税金を納める必要があります。賃料収入は「不動産所得」で、得られた家賃収入から、ローン金利や管理費用、不動産会社に支払う報酬などの経費を引いて計算されます。

不動産所得が黒字なら税金がかかりますが、家賃収入より経費が多く、不動産所得がマイナスだと税金はかかりません。

さらに、マイナス分をほかの所得(給与所得など)から差し引くことができます。これを「損益通算」と言い、所得税や住民税が節税できるというわけです。

たしかに一見、節税にはなります。しかし、よく考えてください。

不動産所得が赤字になるということは、利益が出ていない、ということです。

不動産投資で損をすることによって税金が安くなっても意味がありません。

税制面で旨味がある「減価償却」のしくみ

1つ、税制面で旨味があるのが、「減価償却」です。

減価償却とは、時間の経過とともに建物の価値が減っていく(減価する)分を経費(減価償却費)として認めてくれるものです。金額は建物の取得額や構造、築年数などによって異なります。

減価償却費は実際にその額が消えるわけではありません。

そのため、減価償却費を除いた実質的な収支は黒字になっていて(利益が出ていて)も、減価償却費を引くと赤字になり、税金がかからない、さらに損益通算もできる、というのであれば、たしかに一定の節税効果が得られます。

そうではなく、キャッシュフローがマイナスだけれど損益通算で節税できる、だから不動産投資はメリットがある、というのは変な話なのです。

損益通算でお金が戻るのは、不動産投資で損しているから戻っているだけです。簡単に言えば、「損が出ていて大変ですね。税金をおまけしますね」 ということであり、「税金が安くなるから損した方がいいですよ」ということではないのです。

手出しが月2万円あるけれど、その分、税金が安くなります。しかも不動産という資産が残ります」などのセールストークがありますが、残る不動産の価値が下がってしまえばあまり意味がありません。

また減価償却部分がなくなれば、節税効果は極端に減ります。RC造(鉄筋コンクリート造)では築47年まで、木造では築22年までなど、減価償却できる年数には限りがあります。節税効果があるにしても、一定の期間であり、何年も続くわけではないのです。

以前はワンルーム物件のパンフレットなどにも損益通算によって節税できるなどと書かれていましたが、最近では、損益通算による節税効果には言及せず、相続税対策になることのみが書かれている例が多いようです。

さすがに、書面で堂々と謳うのは控えるようになったのでしょう。それでも、損益通算で節税効果が得られると強調するセールストーク、またそれに魅力を感じて投資したという人も少なくないので、注意が必要です。

滝島 一統

株式会社光文堂インターナショナル

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)