サザンオールスターズ・桑田佳祐

今年で45周年を迎える国民的バンドの『サザンオールスターズ』。 45周年を迎えるに相応しい新曲『盆ギリ恋歌』の凄さについて分析する。


■広瀬香美の解説

サザン45周年、新曲3ヶ月連続リリース企画第1弾『盆ギリ恋歌』。『盆ギリ恋歌』に関しては、広瀬香美が音声プラットフォーム『voicy』で熱い解説もしている。

広瀬の解説で最も注目すべきは、「Aメロがサビ」のようだという部分だろう。まさしく、タイトルの「盆ギリ」という歌詞を含むAメロが、最も頭に残るメロディとなっている。


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■テンションの高いサビ

同曲は一見、いつもの桑田佳祐のおふざけソングに思えるものの、実際はよく練られたクオリティの高い楽曲だ。

「サビのようなAメロ」の後にやってくる本物のサビは、さらにテンションを上げたサビ。桑田の楽曲は、桑田が歌わないと本来の楽曲にならず、意外と難しいと知られる。桑田の歌の上手さがよくわかるエピソード。

そんな桑田の楽曲の中でも同曲は、いつも以上に一段テンションの高い楽曲になっているようにも思われる。

あたかもこれは、「カラオケで歌うことや長年歌い続けることや喉への負担を考えない、昨今の男性アーティスト楽曲の傾向」を、ある程度は反映しているかのようだ。


■亡霊たちのお祭り騒ぎ

同曲の最大の特徴は、やはり歌詞やMVやパフォーマンスが示す世界観にある。同曲の歌詞はかつての桑田と比べても、非常にまとまったストーリーがあるだろう。

MVの冒頭から印象的なように、サザンが黄泉の国から妖怪江ノ電的なものに乗ってやってくるような導入。ご先祖様が帰ってくる日本のお盆の風習において、亡霊たちがお祭り騒ぎをする世界観だ。

■妖しい世界観と王道ポップスの融合

同曲は、妖しい雰囲気を漂わせる楽曲でもあり、サザンらしい尖った曲でもある。同曲は、マニアックになりがちなサザンの妖しく尖った楽曲を、ハイテンポな王道ポップスに仕上げている点が新しい。

『盆ギリ恋歌』は、ハイテンポな王道ポップスと、妖しく尖った楽曲構成と世界観を両立させた、まさにサザン45周年に相応しい数十年来の完成された楽曲なのだ。


■祭りと性愛

また同曲は、「亡霊たちのお祭り騒ぎ」にサザンらしく性愛要素も入れている。お祭りと性愛はサザンらしいだけでなく、日本らしい。

社会学者の宮台真司氏がお祭りと性愛の伝統的な結びつきを、かねてより指摘している。普段は奥ゆかしい日本人だからこそ、「ハレの日」に性愛が結びつく。

お祭りの日の性愛こそ、「みんなに内緒で誰もがやってる」日本の性愛なのだ。ここに同曲は、盆、祭り、性愛、妖怪、仏教までもが見事に結びついた、日本の国民的ソングとなる。


■Mステでの最高の演出

盆踊りパフォーマンスも派手なもので、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)出演時は、浴衣をはだけさせ、上半身下着姿ダンサーが踊り狂った。

曲のラストに扇子を扇ぎながら、踊り歌唱する桑田の姿は、日本の夏の伝統を再生させる呪術師の如く。

『NHK MUSIC SPECIAL』(NHK総合)では演出は抑えめとなったが、今年のサザンは『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に華々しく出演するのだろうか。『盆ギリ恋歌』で毎年紅白を締めることで、同曲が令和の『まつり』となっても面白いかもしれない。


■古きよき令和の夏

既に音楽番組に出演した後で発表される第3弾の新曲が、秋・冬ソングとなり、もっと国民の望む王道サザンの可能性もある。

いずれにせよ『盆ギリ恋唄』は日本の伝統的な夏を見事に表した作品であり、中途半端な少子化政策よりは、同曲が広まることで古き良き日本の再生を望みたくなる程の作品だろう。

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(文/メディア評論家・宮室 信洋

『盆ギリ恋歌』がサザン・オールスターズ45周年にふさわしい理由とは 古きよき令和の夏