4輪駆動(以下:4WD)。今では多くのクルマにラインナップされていますが、この駆動形式が、一般的な存在になるまでには、長い道のりがありました。

4WDの小型化は戦前の日本が元祖?

4つの車輪すべてに、エンジンからの動力が伝わる4輪駆動(4WD)は、オフロードでの走破性はもちろん、ハイパワー車を安定して走らせるためにも用いられる方式です。今では多くのクルマにラインナップされていますが、この駆動方式が一般的な存在になるまでには、長い道のりがありました。

初の4WDが誕生したのは1805年、アメリカのメリーランド州で作られた蒸気機関の水陸両用車といわれており、なんとアメリカを初めて走ったクルマでもあります。その後、ガソリンエンジンを搭載した4WDは20世紀に入った後1902年にオランダで作られますが、クルマの動力形態のとしては、トラックやトラクターなど比較的大型の車両にのみ使われていました。

そうした動きに変化があったのが、1930年代に軍事目的での利点が認められてからです。戦場において、偵察や連絡、人員輸送など幅広い任務をこなす車両として、オフロードを走ることのできる小型4WDは大きな魅力でした。

各国に先駆けてこの4WDに注目したのは、旧日本陸軍です。日本内燃機(現:日産工機)が「くろがね四起」の愛称で知られることになる「九五式小型乗用車」を開発し、1936年から運用が開始されます。

その後、第二次世界大戦が始まると、ドイツの「キューベルワーゲン」という小型の軍用車が、初期の欧州西方での機動戦で大きな役割を発揮。それに注目したアメリカ陸軍が1940年6月、悪路を走行可能な小型4WD車の開発を各企業に命じました。この車両は1941年7月より生産を開始し、「ジープ」と呼ばれることになります。

「ランクル」生んだトヨタ 「ジムニー」生んだのは…?

ジープは戦後、世界中に流通するだけではなく、各国でライセンス生産が行われ、シビリアンジープとして民間にも広まることになります。

このとき、トヨタジープの生産権を獲れませんでした。そのため、独自に4WD車の研究を進め、1951年に「BJ型」を開発。1953年トヨタジープ」として量産が始まります。しかし商標の問題から名称変更を余儀なくされました。

当時の技術部長だった梅原半二さんは1954年、同じくジープに倣って車両を開発し、4WD車として頭角を現していたイギリスの「ランドローバー」にあやかり、「陸を巡行する」という意味を持つ「ランドクルーザー」と命名。以降、「ランクル」の愛称で親しまれ、オフロード4WDを代表する車種となります。

一方で、オート三輪などで実績をあげていたホープ自動車は、独自路線として、1956年4WDをより小型化した軽4WDの構想を立ち上げました。1967年には「ホープスター ON型4WD」という名前の軽4WDを完成させます。しかし、経営難により100台ほどを生産したところで、自動車業界からは撤退。その製造権を鈴木自動車(現・スズキ)が買い取り、改良を加えて1970年4月に本格軽4WDオフロード車として売り出したのが、現在でも根強い人気を博している「ジムニー」です。

そして、1971年には、富士重工業(現・スバル)が、乗用車4WD化した「ff-1 1300Gバン 4WD」を発表。「レオーネ」や「レガシィ」などに続く「シンメトリカルAWD」の礎となり、「AWD」はスバルの代名詞となります。

また、1970年代のアメリカではピックアップトラック4WD化が進みます。1980年代にはSUVという名称も浸透し始め、ステーションワゴンにも4WDのラインナップが増え始め、一般的になっていきました。

4WDの代表格であるランドクルーザー70の復活モデル(画像:トヨタ)。