中国経済は2023年も厳しい状況に直面している。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために実施されたゼロコロナ政策は、国内消費やサービス業に大きな打撃を与えた。不動産市場は低迷が続き、多くの建設開発会社が資金繰りに苦しみ、建設中の物件の工事が停止し、支払い済みの購入者に物件が引き渡されない事態が発生している。輸出は世界経済の減速や貿易摩擦の影響を受けて伸び悩んでおり、金融機関も不良債権や規制強化などの問題に直面している。

 特に深刻なのは若年層の失業問題だ。中国国家統計局によると、15~24歳の失業率は21%となり、当面、公表を停止することを伝えた。しかし、この数字は都市部に限定されたもので、農村部や非正規雇用者を含めると実質的な失業率は60%を超えるという試算もある。

 若年層の失業は社会的な不安や不満を高めており、政府に対する信頼感や忠誠心が低下しているという指摘もある。一方で、政府は若年層の雇用創出や所得向上を優先する政策を打ち出しているが、効果は限定的だという評価が低い。

 中国経済は、当面回復する見込みはほとんどないというのが専門家の一般的な見方だ。大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは、2023年の中国の経済成長率を4.5%と予測しているが、「この予測には大きな下振れリスクがある」と警告している。

 日本への影響も無視できない。中国は日本の最大の貿易相手国であり、観光客も多く訪れている。しかし、中国経済の低迷や感染症対策の影響で、日本への旅行者数はさほど増えないだろうとの見通しだ。また、中国からの安価な製品や部品への依存度が高い日本企業も、供給不安や価格上昇などのリスクに直面する可能性がある。

 中国経済が再び成長軌道に乗るには、不動産市場の安定化や構造改革、輸出の多様化や内需の拡大、金融システムの健全化など、多くの課題を克服する必要がある。しかし、それらは簡単に解決できるものではなく、時間と努力が必要だ。

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