近畿大学世界経済研究所の客員教授で投資家・ストラテジストの菅下清廣氏は、これまでの歴史が教えている“ある事実”にもとづくと、2023年からは当面は「日本の上昇期」だと予想します。その根拠とは? みていきましょう。

歴史が教えている“ある事実”

1868年(明治元年)、日本は旧幕府軍と新政府軍の戦い、つまり鳥羽・伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争がはじまり、内戦状態に突入します。

その後、江戸城無血開城、長岡城の戦い、会津の戦い、最後の箱館戦争(五稜郭の戦い、1869年5月に終結)を経て、戊辰戦争はようやく終結。これによって明治新政府が日本を中央集権国家として統一しました。

大政奉還、王政復古からはじまって版籍奉還、廃藩置県、四民平等、解放令など、各種の制度改革が怒涛の如く施行されました。激動の時代の幕開けでした。そして明治元年よりちょうど77年目の1945年に、終戦を迎えます。

明治政府の誕生は、260年余続いた徳川幕府が倒れた歴史の転換点です。

尊王攘夷を掲げた倒幕の旗振り役の薩長同盟が、徳川幕府を倒して新政権に就きました。明治の新政府とはつまり薩長の連合政府でもありました。

薩長による明治政府は、富国強兵、殖産興業を掲げて、日清戦争日露戦争第一次世界大戦と大きな戦争で連続勝利。しかし勝利で傲慢になったのか、その後世界情勢をことごとく見誤まって、国際連盟脱退で孤立。ドイツイタリアと三国軍事同盟を結ぶも、最後は原爆投下で無条件降伏という歴史的悲劇を迎えたのです。

これは株でいえばまさに額面割れ。会社なら精算を余儀なくされるような場面といってよいかもしれません。

77年というサイクルが暗示するこれからの日本

その額面割れの状態(1945年)から77年後といえば、2022年です。整理すると、明治維新から77年後が第二次世界大戦終結。その77年後が、世界を揺るがせたコロナ禍終焉となる2022年。

2023年は、次の77年へと向かう最初の年ということになるのです。歴史サイクルの大きな転換点、77年周期のまさに出発点が2023年ということになります。

77年サイクルをさらに詳しく調べてみると、明治政府誕生から太平洋戦争までの77年の前半(約40年間)は、大日本帝国憲法発布、工業化の進展、日清戦争日露戦争の勝利、日英同盟締結、八幡製鉄所操業開始など、日本が発展していく僥倖ともいうべき出来事が次々に起こりました。いわば上昇期でした。

ところが後半の約30年間は、米騒動シベリア出兵、関東大震災満州事変二・二六事件国際連盟脱退、日中戦争など下降期を迎えて、最後が無条件降伏という屈辱的な結末を迎えたのです。

終戦から2022年までの77年間は、どうでしょうか。これも前半は日本国憲法の公布、独立回復のサンフランシスコ平和条約、国際連合加盟、小笠原諸島の日本復帰、沖縄の日本復帰、日中国交正常化と、国の勃興期ともいうべき出来事が連続しました。日本がゼロから立ち上がって廃墟から見事に復活、未曾有の高度経済成長を遂げるのです。

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で評価された日本だったが…

アメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルがその著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で、経済の大発展を遂げた日本的経営を高く評価し、この本は世界的な大ベストセラーとなりました。

こうして日本が黄金期を迎えた前半の約40年間でしたが、後半の30年はどうでしょうか。

日米貿易摩擦問題、消費税の導入、バブル崩壊阪神・淡路大震災東日本大震災など国の衰退を印象づける出来事が相次いで起こり、「失われた30年」というデフレ社会、低賃金、景気後退、半導体などの世界的競争からの脱落など、雪崩を打ったように下降線をたどっています。

そして世界を激変させたコロナ禍という77年の最期の大転換を経てた2023年、いよいよデフレが終わりを迎えてインフレ時代に向かおうとしているのです。

明治維新から第二次世界大戦終焉までの77年間、そして終戦から2022年までの77年間サイクルを見れば、2023年からはじまる77年間の前半約40年は上昇期、後半約30年は下降期と予測することができるでしょう。

このサイクルの77年後は2100年22世紀の幕開けです。歴史にならえば何かとてつもない大きな出来事が起こるのかもしれません。

それが何かは今はわかりませんが、第三次世界大戦勃発か、ロシア・中国連合軍とアメリカの戦いか、世界の支配者が交代=アメリカの崩壊が起こるのかもしれません。

いまは単なる想像でしかありませんが、いずれにせよそういう大きな事態が起こり得るでしょう。

菅下 清廣

スガシタパートナーズ株式会社

代表取締役社長

(※写真はイメージです/PIXTA)