この世界の片隅に』(16)、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(19)と2度にわたって映画化された、こうの史代の名作漫画「この世界の片隅に」。このたび、日生劇場の2024年5月公演として、ミュージカルこの世界の片隅に」の上演が決定した。

【写真を見る】こうの史代による原作「この世界の片隅に」

太平洋戦争下の広島県呉市を舞台に、つつましくも美しい日々とそこで暮らす人々が淡々と丁寧に描き、生きることの美しさを伝えている、こうの史代による原作「この世界の片隅に」。2度にわたる映画化、実写ドラマ化と、様々に形で変えてメディア化されてきた。その名作を、今回新たにミュージカルとして上演。脚本、演出を、漫画「四月は君の嘘」をミュージカル化した上田一豪が手掛け、絵を描くことが大好きな主人公の浦野すず役を昆夏美大原櫻子がWキャストで演じる。すずが嫁ぐ相手の北條周作を海宝直人と村井良大のWキャストで、すずと周作の三角関係となる白木リンを平野綾桜井玲香がWキャストで、周作の姉ですずにとっては義姉の黒村径子を音月桂がそれぞれ演じる。日生劇場で開幕したのち、全国ツアーを展開し、物語の舞台である広島県呉市にて大千穐楽を迎える。

すず役の昆は「初めてこの作品に触れた時、登場人物たちが日々の生活の中でささやかな幸せを見つけながら懸命に生きていた姿が心に残りました」と原作に対してコメント。同じくすずを演じる大原は「台本を読ませていただいた時、ずっと涙が止まりませんでした。そして、劇中に歌わせていただく音楽を聴いて、改めて、この作品ですずを演じたい、と自分の気持ちが強まりました」と本作に関して語った。また、周作役の海宝は「この物語が伝えるものを自らの肉体を通してしっかりと皆様にお届けできるよう、作品と向き合ってまいります」、村井は「この作品の映画版を祖母と一緒に映画館で観ました。上映後に祖母に色々と質問した事を覚えています。当時の食料不足や生活での知恵、戦争の爪痕...そして当時はなにも物が無かった、と言っていました。忘れてはいけない歴史。心に残る作品を創れるよう懸命に向き合いたいと思います」とコメントしている。

名作はミュージカルとしてどのように生まれ変わるのだろうか?ぜひ本作を劇場で目撃したい。

■<キャストコメント>

昆夏美(浦野すず役)

「原作漫画から映画化、実写ドラマ化され、様々な形で新しく誕生を続けたこの作品のミュージカル化ということで、今回はどのような『この世界の片隅に』が生まれるのかと期待に胸が膨らみます。初めてこの作品に触れた時、登場人物たちが日々の生活の中でささやかな幸せを見つけながら懸命に生きていた姿が心に残りました。かつてあった日本の日常と歴史をキャスト、スタッフ一同、舞台上で丁寧に描いていければと思います」

大原櫻子(浦野すず役)

「台本を読ませていただいた時、ずっと涙が止まりませんでした。そして、劇中に歌わせていただく音楽を聴いて、改めて、この作品ですずを演じたい、と自分の気持ちが強まりました。アニメーションなどでも、多くの方に愛されている作品でもあり、今作の内容をお客様に届けるには、日本人として、大きな責任感と覚悟を持って臨まなければならない作品だと思っております。子どもから大人まで、愛され、心に刻まれる作品にする為、一生懸命演じたいと思います」

●海宝直人(北條周作役)

「今回周作を演じさせていただきます。映画やドラマなど様々な形で愛された不朽の名作のミュージカル化初演に携われることを心から光栄に思います。この作品に初めて触れた時、淡々と描かれる日常の中にある生々しい温度感や息遣いに惹き込まれ胸を打たれました。この物語が伝えるものを自らの肉体を通してしっかりと皆様にお届けできるよう、作品と向き合ってまいります。素晴らしいクリエイター、キャストの皆さんと作るミュージカルこの世界の片隅に』にどうぞご期待ください」

村井良大(北條周作役)

「この作品の映画版を祖母と一緒に映画館で観ました。上映後に祖母に色々と質問した事を覚えています。当時の食料不足や生活での知恵、戦争の爪痕…そして当時はなにも物が無かった、と言っていました。しかし、作品の中では様々な人間模様が丁寧に描写されていました。生きていく事の愉快さ、賢明さ、日常の中の小さな幸せ、前向きに生きている日本人たち。その細やかさを、心の奥深くに響く素敵な旋律にのせてミュージカルとして創作される事にとても興味が湧いています。忘れてはいけない歴史。心に残る作品を創れるよう懸命に向き合いたいと思います」

平野綾(白木リン役)

「オーディションで世界観や音楽に初めて触れた時、ストレートプレイではなくミュージカルであることの意味をとても感じ、この作品のメッセージがたくさんの方に優しく降り注げば良いなと思いました。終戦から78年経ち、当時の生活をリアルに伝えることで、過酷な歴史のなかで生きたひとりひとりの人生の喜びや幸せ、葛藤を感じていただけたらと思います。リンとして見えるもの感じるものを大切に、精一杯役として生きていきます」

桜井玲香(白木リン役)

「この世に生きる限り、身近な存在であり、決して忘れてはいけない〈戦争〉。その事実を、優しく、静かな厳しさをもって伝えてくれている作品だと感じました。映画、ドラマに続いてのミュージカル化。きっとまた新たなメッセージをこの作品でお届けできるかと思います」

音月桂(黒村径子役)

「多くの方に愛され、これから先もずっとずっと語り継がれていくであろう作品に触れ、携わることができてとても光栄です。激動の時代を強く美しく生き抜いた人々の物語...全身全霊をかけてお届けしたいと思います。皆さまの心に響くぬくもりのある舞台になりますように」

文/鈴木レイヤ

昆夏美、大原櫻子がWキャストで浦野すず役を務めるミュージカル「この世界の片隅に」/[c]この世界の片隅に[c]こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝