スティーブマーティンマーティン・ショート、セレーナ・ゴメスがトリプル主演するドラマ「マーダーズ・イン・ビルディング」。同作のシーズン3が、この8月にスタート。新キャストとして名優メリル・ストリープ、映画「アベンジャーズ」シリーズのポール・ラッドを迎えた物語。スタート日に同時配信された第1話・2話で、もうワクワクが止まらない展開を見せている。(※以下、ネタバレを含みます)

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■「マーダーズ・イン・ビルディング」をおさらい

マーダーズ・イン・ビルディング」は、ニューヨークの高級アパートを舞台に、ポッドキャストの実録犯罪番組マニアという共通点で意気投合した男女3人が殺人事件の謎を追うミステリー・コメディ。アメリカの歴史あるエミー賞やゴールデングローブ賞などでノミネート&受賞し、大きな反響を呼んでいる作品だ。

3人組を演じるのは、スティーブマーティン(以下スティーブ)、マーティン・ショート(以下、マーティン)というアメリカコメディ界の大御所と、Instagramフォロワー数4億2000万超えで俳優・歌手・実業家と多才なセレーナ・ゴメス

スティーブは過去に大ヒットしたドラマ作品を持つ俳優チャールズマーティンは落ち目の舞台演出家オリバー、セレーナは2人と孫ほど年の離れたメイベルに扮(ふん)し、絶妙な掛け合いで物語を盛り上げる。

日本ではディズニープラスの「スター」にてシーズン1から最新のシーズン3まで独占配信中。シーズン3は日本語吹き替え版も同時に毎週火曜に最新話が公開される。日本語吹き替え版は、チャールズ羽佐間道夫オリバー山寺宏一メイベル林原めぐみが担当している。

■またも衝撃的なシーズン3の幕開け

シーズン1では実録犯罪番組マニアの3人が住んでいるアパートで起きた殺人事件にのめり込みながら、もしかしたら自分たちの中に殺人犯が?という展開で視聴者を引き込んだ。シーズン2は、遺体を発見したメイベルが血まみれという衝撃の姿から始まり、他のアパート住人から3人が殺人犯だと疑われる中で真犯人を追い詰めていった。

そしてシーズン3は、15年前に失敗して以来、演出家として低空飛行だったオリバーに再びチャンスが巡ってきた舞台の初日に、主演俳優のベン(ポール・ラッド)が舞台上で倒れて死んでしまうという幕開け。卒倒寸前のオリバーだが、初日後に予定していた自宅でのアフターパーティはそのまま開き、そこで対応を考えることに。

■今回はアパート内での殺人ではない!?

舞台の出演者の一人だったチャールズオリバーと客席にいたメイベルも一緒にアパートに戻ってくる。そこでシーズン1から登場している皮肉たっぷりの女性住人が「今回はアパートで殺人が起こらなくてよかった」とチクリ。

そう、前2作までタイトル通り、アパートの建物内で起きた殺人事件が軸だった。シーズン3ともなれば変わってくる一面があるのは仕方ないかもしれない。ところが、彼女の言葉は盛大な前フリなのだ。

ネタバレ少なく楽しみたいという方は、ここまでで読むのをとどめ、鑑賞後にまた戻ってきていただきたい。ただ、この先のネタバレを踏んでも、俳優陣の演技と謎に満ちた演出力・構成力で十分に楽しむことができるとは思う。

■新たな事件に巻き込まれるチャールズオリバーメイベル

アフターパーティでベンの死より自分のキャリアを心配したことに落ち込むオリバーを励ますチャールズメイベルだが、メイベルはすぐさま自分たちのポッドキャストで追えば話題になると提案。そこには、しばらく舞台にかかりっきりだったチャールズオリバーと一緒に過ごせなかった寂しさもあった。

ところが、そこでパーティ参加者たちが絶句する出来事が。ベンが姿を現したのだ。心臓の“鼓動”が止まっていたのは確かで、死因は毒殺かと思われていたが、病院で胃の中の物を吐き出したら復活したのだという。

すると、そのベンが共演者たちに詫びて回る。死んでいる間、稽古中にひどいことをしたことがよみがえり、「まだ死ねないと思った」とベン。生き返って舞台を成功させようと意気込むが、彼といざこざのあった共演者たちの間には何やら不穏な空気が流れている。チャールズに対してベンの口調がとげとげしかったのも気になる。毒殺しようとした人物は誰なのか…。

パーティ解散後、メイベルチャールズオリバーをいつものダイナーに誘い、3人そろって向かおうとしたとき、新たな殺人事件に遭遇することになる。やはりアパートの建物内で事件は起きるのだ!

■新キャストを交えての展開にワクワク

新シーズンの追加キャストとなったポール・ラッドとメリル・ストリープが、物語に新たなエネルギーを加える。ポールは代表作「アントマン」で身長1.5センチとアリのように小さくなるヒーローを演じているが、本作でふんするベンの代表作では6mのコブラに変身するヒーローという設定が映画ファンとしては楽しいところ。第2話では、チャールズとの因縁が明らかになり、その苦悩を吐き出す演技が胸を打つ。いやな奴と言われるが、苦しみも抱えているという複雑な役どころだ。

一方、アカデミー賞主演女優賞も獲得し長年にわたり第一線で活躍しているメリルが長い間“売れない”俳優だったというキャラクターもひねりが効いている。オリバーの舞台の読み合わせで、役を探るためにせりふの言い回しを変化させるところはさすが(物語ではそれがベンの不評を買うのだが)。また、映画「マンマ・ミーア!」(2008年)などで披露している優れた歌唱力が本作で聞けるのも見どころだし、きっとこの後何らかの仕掛けがあるのだろうと期待が高まる。

そして主人公3人は、巻き込まれた事件以外に人生と向き合う。なんとか舞台を成功させてキャリアを再び輝かせたいオリバー。ベンとのことで自分を振り返るチャールズメイベルは、叔母にアパートの改装を依頼されて住んでいたのだが、叔母が部屋を売ることになり、4週間で出て行かなければならないという状況で、モラトリアム期から抜け出す人生を考える時にきている。ちなみにメイベルが改装完了させた部屋のゴージャスさもすばらしく、物語の舞台となっているアパートの魅力を引き立てている。

新たな事件と密接にチャールズオリバーメイベルが関わり合いながら、紆余曲折のある人生をどう進んで行くのかも気になるところだ。もちろん、中心となる3人の楽しいやりとりは期待を裏切ることはない。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

新キャストのメリル・ストリープとマーティン・ショート/「マーダーズ・イン・ビルディング」シーズン3より (C)2023 Disney and its related entities