ユーラシア大陸を横断し、東洋と西洋を結ぶ大交易路として重要な役割を果たしてきたシルクロード。2014年に新たにユネスコ世界文化遺産に登録されたことを契機に、ますます調査研究が進んでいるシルクロード文化を大規模に紹介する展覧会が、東京・八王子市の東京富士美術館で、9月16日(土)から12月10日(日)まで開催される。

世界文化遺産「シルクロード:長安―天山回廊の交易路網」は、中国、カザフスタンキルギスの3カ国が共同で申請し、中国では5つの省・自治区にある22の遺跡が登録された。同展は、この世界遺産認定後、中国国外で初めて開催される大規模な展覧会だ。洛陽、西安、蘭州、敦煌、新疆地域など、中国国内 27カ所の主要な博物館と研究機関から、シルクロードの文物と関連資料などが200点出品される。

その内容も、金銀宝飾品、青銅器、ガラス、陶磁器、壁画、絵画、染織、経典、仏像など、実に多岐にわたる。とりわけ今回は、これまでにない規模でシルクロードの優品がもたらされるという。日本初公開の文物もあり、また日本の「国宝」にあたる一級文物は45点も含まれている。

第1章の「民族往来の舞台〜胡人の活動とオアシスの遺宝〜」では、「胡人(こじん)」と呼ばれていた北方や西方の騎馬遊牧民の活動に焦点をあて、中国とローマをつなぐ東西交易や、文化や宗教の交流がもたらした遺宝の数々が紹介される。なかには、奈良の正倉院の宝物とよく似た文物もあり、シルクロードを通った品が日本にも伝来していたことを実感させてくれる。

第2章の「東西文明の融合〜響き合う漢と胡の輝き〜」は、遣唐使の派遣などで日本との縁も深い唐の時代の名品を中心に展観。また第3章の「仏教東漸の遥かな旅〜眠りから覚めた経典と祈りの造形〜」では、西暦1世紀頃にシルクロードを通って中国に伝えられ、経典の漢訳によって広く理解されるようになった仏教に焦点をあて、敦煌をはじめとして各地に収蔵されている仏教美術の優品が一堂に会する。

日中平和友好条約45周年を記念してシルクロード文化の精華を公開する同展は、シルクロードを通じて、日本と中国が長い文化交流の歴史をもつことを改めて感じる機会ともなるだろう。

<開催情報>
日中平和友好条約45周年記念『世界遺産 大シルクロード展』

会期:2023年9月16日(土)~12月10日(日)
会場:東京富士美術館 本館展示室
時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合開館翌日休)
料金:一般1,500円、大高900円、中小500円
公式サイト:
https://www.fujibi.or.jp/

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