神木隆之介主演の連続テレビ小説らんまん」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)。第21週「ノジギク」で、万太郎(神木)の前に立ちはだかっていた大きな存在・田邊(要潤)の訃報が伝えられた。(以下、ネタバレを含みます)

【写真】あまりにも象徴的な、万太郎(神木)と田邊(要)のワンシーン

■田邊の訃報、そして遺された言葉

幕末から明治、そして激動の大正・昭和を舞台に、高知出身の植物学者・槙野万太郎(神木)が植物学の道を突き進む「らんまん」。第21週では、田邊によって大学への出入りを禁じられた万太郎が、妻の寿恵子(浜辺美波)と二人三脚で植物学研究を続ける日々が描かれている。

そんな中、第101回では田邊が帝国大学教授を免官となったことにショックを受ける万太郎や藤丸(前原瑞樹)の様子が描かれた。万太郎が「ご恩を忘れちゃあせん」と感謝を口にすれば、藤丸も「想像つかないよ…あのユーシーが、もう青長屋にいないだなんて」と心にぽっかりと穴が開いた様子。そんなやり取りからも田邊の存在の大きさが伝わってくる。

さらにその回ラストで田邊の死が伝えられ、第102回では「私の蔵書は槙野に譲る」という田邊の言づけが妻・聡子(中田青渚)によって伝えられた。

■「私の植物学は終わった。この先は…」

田邊の最後のシーンは、自宅で聡子や子供たちと海に出かけようとしている場面だった。

はしゃぐ子どもたちに「私が海を見たいんだ、お前たちと」と笑顔を見せ、いつもより少しおしゃれをした聡子に「きれいだ。よく似合ってる」と優しく語り掛ける姿は、良き父であり、良き夫。“教授”と呼ばれている頃には見せることのなかった晴れやかな笑顔が、下ろした荷物の重さを物語っている。

そして自分の蔵書を万太郎にゆずりたいと聡子に伝える場面でも、「私の植物学は終わった。この先は、Mr.Makinoに」と口にする田邊の表情は澄み切った青空のように穏やかだ。

■最後は“愛の人“として…

新種を発見し、咲かないはずの花まで咲かせ、自分にはできないことを軽々とやってみせる万太郎に嫉妬するあまり、田邊は万太郎に非情な仕打ちをしてきた。「虫けら」と激しい言葉で万太郎を否定し、万太郎がすべてを失うと知りながら大学への出入りを禁じた。

普通なら完全なるヒールの役回りだが、このドラマは田邊を悪役のままで終わらせることはしなかった。最後は、家族を愛し、万太郎の才能に期待し、植物学の未来を想う穏やかな人物として描いた。今思えば、留学から帰った徳永(田中哲司)に向けた笑顔と「おかえり」の言葉も、植物学を修めてきた徳永への素直な期待と労いの現れだったのだろう。

■惜しむ声続々「これがロスというものか」

田邊の退場に、視聴者からも惜しむ声が上がった。「田邊教授の退場がこんなに悲しいなんて」「田邊教授の本当のお人柄がわかってよかった」「田邊教授こそが、万太郎と志を同じくする同志だったんだなぁ」「放送を見てからずっと田邊教授のことを考えている。これが田邊ロスというものなのか」といった声が上がり、訃報が伝えられた第101回では田邊のあだ名“ユーシー”がSNSでトレンドトップ10入りする反響も…。あらためてその存在の大きさを証明した。

どんな人間も、一つの面だけでは語れない。万太郎の信念である「雑草という名の植物はない」や、徳永が口にした「どうやってここに来たかは問わない。だが、そこから変わっていけるかどうかだ」など、繰り返し描かれてきたすべての存在へのあたたかい眼差しが、田邊へも注がれている。

田邊(要潤)の訃報が伝えられた/(C)NHK