韓国出身の「DJ SODA」さんが大阪で開催された音楽イベントで胸などを触られたと訴えていた問題で、男性2人が警察に出頭した。

報道などによると、いずれも20代で、8月21日大阪府警へ出頭したという。同日配信されたユーチューブ動画内では、両名とも「酒をたくさん飲んでいた」と当時の状況を説明。「(酒の)勢いで近づいてしまった」「軽い気持ちでやってしまった」などと釈明したうえで謝罪していた。

運営側は8月19日に民事および刑事の法的措置を取るとの声明を出し、21日には不同意わいせつ容疑などで男性2人と女性1人に対する告発状を大阪府警に提出していた。

動画では2人が交番に出頭したとみられる場面も写っていたが、今回の出頭は自首に当たるのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。

●「犯人特定」されていなければ自首成立の可能性も

——出頭と自首はどう違うのでしょうか。また自首はどのような場合に成立するのでしょうか。

出頭とは、捜査機関(検察官又は司法警察員)、裁判所、役所等に自ら出向くことをいいます。

他方、自首とは、罪を犯した者が、事件が発覚していない、または、犯人が特定されていない段階で自発的に捜査機関に名乗り出てその処分を求める行為です。

両者の違いとしては、主に以下の3点があげられます。

(1)罪を犯していてもいなくても当局に出向けば「出頭」ですが、罪を犯している場合は「自首」に該当することがあります。

(2)自首が成立するためには、「事件が発覚していない」または「犯人が特定されていない段階」であることが必要です。「事件が発覚し、犯人も特定されている」場合には自首は成立せず、単に「出頭」したにすぎなくなります。

(3)「自首」が成立した場合には、刑の減軽を受けられることがあります(刑法42条1項)。ただし、自首による減軽は必須ではなく、あくまでも裁判官の任意です。「出頭」には刑の減軽などはありませんが、自主的に「出頭」したという事実は、裁判で被告人にとって有利な情状と判断されることはあり得ます。

——今回のケースで自首は成立するのでしょうか。

事件はすでに発覚していますが、犯人が特定されていたかどうかは報道だけでははっきりしません。

告発状では、男性2名、女性1名が被疑者とされているようですが、男性2名という点が一致するだけで、犯人が特定されていなかった可能性は残されていると思います。犯人が特定されていなかったのであれば、「自首」が成立し得ます。

——動画では男性2人は大阪府内の交番に出頭したようです。

自首は、「検察官または司法警察員」に対してすることが必要とされています(刑事訴訟法245条・241条1項)。

司法警察員とは、警察官の階級でいえば通常「巡査部長以上」が該当します。「巡査(司法巡査)」に自己の犯罪を申告しても、その時点では法的な自首にはなりません。

もっとも、自首する人がいた場合、司法巡査は直ちにその者の身柄を司法警察員に移さなくてはならないとされています(犯罪捜査規範63条2項)。交番にいる巡査に自首しても、その後司法警察員が対応することになるので、要件を満たす限りは自首として問題なく処理されるでしょう。

自首の申告は書面でも口頭でも可能で、犯人自身がしても他人を介してもよいとされています(最高裁昭和23年2月18日判決)。捜査機関に電話をして申告することも可能ですが、申告後は電話した場所でそのまま待つ、警察署へ行くなど自ら捜査機関の支配内に入る状態であることを要するとされています。また、申告先は事件の管轄区域内にある交番や警察署でなくても問題ありません(犯罪捜査規範63条1項)。

【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:https://www.hamakado-law.jp/

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