日本国内では12年ぶりの開催となった2022年大会に引き続き、2023年も「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が11月16日(木)~19日(日)に開催。この大会は、WRC(世界ラリー選手権)2023年シーズンの13戦目で、そのチケットの「一般発売《先着》」が2023年8月25日(金)10時にスタートする。

【写真】駅前の一般道で、ギャラリーの目の前を走行するラリーマシン

今回の記事では「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」について、元SKE48のメンバーで、WRC招致応援団でもある梅本まどかさんにインタビュー。梅本さんは現役のコ・ドライバーでもあり、「TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ」で年間チャンピオンとなった経歴を持っている。今大会にもコ・ドライバーとして参加する予定で、そんな梅本さんだからこそわかる、今大会の魅力やポイントを教えてもらった。

■そもそも「ラリー」って何?

まずは「ラリー」について簡単に説明しておこう。「ラリー」とはモータースポーツの一種で、世界ではF1と肩を並べるほど人気が高い自動車競技。その最大の特徴は“一般道を走る”ということだろう。

ラリーは「スペシャルステージ」(通称SS)という特別に設けられた競技区間を、マシンが1台ずつ、1分~3分程度の間をあけてタイムアタックし、その合計タイムで勝敗を競うモータースポーツ。この「SS」は、公園や林道、民家のある一般道などを交通規制して整備されることが多い。

一方、SSから別のSSへの移動区間「リエゾン」もラリーの醍醐味。リエゾンではタイムアタックで使用した車両に乗ったまま、一般道を通って次のSSへ移動する。時間制限があるなどラリー競技の一部に含まれる「リエゾン」だが、SSのような交通規制は行われないため、競技用のマシンも一般車両に混じって、かつ同じように交通ルールを守って走行することとなる。

競技車両は市販車をベースに製作しなければならないと規定されているため、使用されるマシンは普段一般道で見かける車とよく似ている。このマシンに運転を担当する「ドライバー」と、コースの形状や特徴をドライバーに伝える「コ・ドライバー」(通称コドラ)の2人1組で乗車して競技を行う。

「ドライバーとコドラは、事前にコースを下見して『ペースノート』を作ります。コドラは、当日はこれを見ながらドライバーをナビゲートします。いかにドライバーが気持ちいいタイミングで指示を出せるかが、コドラの腕の見せどころです!」(梅本さん)

■「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」はどんな大会?

一言に「ラリー」と言っても、さまざまなルールの大会が存在している。「フォーラムエイト・ラリージャパン」はその中でも「FIA(国際自動車連盟)」が主催する「WRC(世界ラリー選手権)」の日本ラウンドのこと。WRC2023は1月のラリー・モンテカルロからスタートして、全13ラウンドを行う。ラリージャパンはその13ラウンド目。つまり、各チームの順位が確定するWRC2023のフィナーレなのだ!

フォーラムエイト・ラリージャパン2023」の開催日程は、2023年11月16日(木)から19日(日)まで。紅葉で彩られた美しい里山風景の中を、各チームのマシンが走り抜ける姿が見られるだろう。観戦エリアは「豊田スタジアム」(愛知県豊田市)をはじめ、愛知県豊田市岡崎市新城市・設楽町、岐阜県恵那市中津川市に全16カ所設けられる。

フォーラムエイト・ラリージャパン2023の観戦エリア〉

愛知県豊田市

豊田スタジアムSS

・鞍ケ池公園SD

・伊勢神トンネルSS

・稲武ダムSS(黒田ダム)

・三河湖SS

・旭高原SS(旭高原元気村)

愛知県岡崎市

岡崎市SS(岡崎中央総合公園)

・額田の森SS(千万町楽校)

愛知県新城市

新城市SS(鬼久保ふれあい広場)

愛知県設楽町】

・稲武ダムSS(駒ヶ原分校)

・設楽町SS(天狗棚)

岐阜県恵那市中津川市

恵那市SS(山岡駅観戦エリア)

恵那市SS(田沢観戦エリア)

恵那市SS(恵南林道)

恵那市SS(明智観戦エリア)

・根の上高原SS

■梅本さんが選出する今大会の注目SS

ここからはコドラとして出場も予定する梅本さんが選ぶ、今大会注目のSSを紹介。それぞれの楽しみ方や見どころも解説する。

豊田スタジアム

今大会、最大の注目SSといえば「豊田スタジアム」だろう。普段はサッカーなどの競技場として使用されているスタジアム内の芝生をすべて撤去し、期間限定でコースを新設する。

豊田スタジアムSS」の見どころは、なんと言っても「デュアルSS」であること。2レーンのマシンが同時にスタートしてタイムアタックを繰り広げる、ラリーでは非常に稀なタイプのSSとなる予定で、スタジアムに反響して轟くマシンの爆音も迫力満点だ!

デュアルSSはラリー競技でもかなりめずらしいのでおすすめです。基本的にラリーはタイムアタックなので自分との戦いという側面が強いのですが、デュアルSSになると直接相手が見える勝負の要素が追加されるので、どんな展開になるか楽しみです!」(梅本さん)

今大会のメイン会場でもある豊田スタジアムでは、11月16日(木)には1台ずつ競技をスタートするセレモニアルスタート、11月19日(日)には表彰式にあたるセレモニアルフィニッシュも開催。また「サービスパーク」としても設定されているため、マシンを整備している様子や選手を間近で見ることもできる。物販やイベントも充実したSSとなっており、観戦しやすいといった点でもおすすめだ。

■鞍ケ池公園SD

昨年も設置された「鞍ケ池公園SD」。WRCにおけるSD(=シェイクダウン)とは、タイムアタック前に行われる、いわゆる“ならし走行”のこと。ラリー本番を前に選手たちがマシンの状態を最終確認する大切なセクションだ。

鞍ケ池公園SDには連続するコーナーや、ラウンドアバウト(環状交差点)などが設けられており、音と煙を上げる豪快なドリフトやドーナツターンを堪能できる。

「鞍ケ池公園は、“世界のアライ”ことドライバーの新井敏弘さんもリタイアしたことがあるほど難しいコース。公園の中なので、普段は走らない道を走るというおもしろさも魅力です。観戦エリアがしっかり整備されていますし、少し高台になっている場所もあって、見やすい点もいいところですね」(梅本さん)

■三河湖SS

「三河湖SS」は、前半は林道、後半は集落や田んぼの中を走り抜けるコース。里山を背景に水田が重なる棚田といった日本の原風景の中を最新のマシンが走る姿は、ラリージャパンの見どころの1つだろう。

「ラリージャパン名物といえば、この三河湖SSにある『熊野神社』。鳥居とマシンが並ぶ写真や映像は、宣伝などでもよく使われるほど有名です。紅葉との共演も美しく、一般道を走るラリーならではの魅力が詰まった場所だと思います」(梅本さん)

■額田の森SS

「額田の森SS」は、観光スポットでもある「ふるさと千万町楽校」周辺の林道を走るコース。民家の目の前を猛スピードで走り抜ける、スリリングなコースでもある。最大のポイントは「ふるさと千万町楽校」前。わずかに坂となっており、マシンがフワッと浮く姿が見られるかもしれない。コーナーが続くため、エンジン音やブレーキ音も楽しめるだろう。

「クネクネとした林道が続くので、コドラとしては楽しいSSです。どこか懐かしい、自然豊かな風景も楽しめますよ」(梅本さん)

■ラリー1に出場する各チームを紹介!

WRCではさまざまな車両の参加が認められているが、使用するラリーカーの種類によって、ラリー1~5のクラスに分けられる。特に最上位グレードの「ラリー1」のマシンは、見た目こそ市販車に近いものの、フレームやエンジンをはじめとする各パーツや駆動、サスペンション形式が変更されており、中身はまったくの別物。さらに2022年シーズンより、ハイブリッドシステムを備えることも条件に加わった。

ここでは「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」のトップカテゴリー「ラリー1」に出場する全3チームを紹介しよう。

TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team

WRC開幕初戦の1973年から参戦していたTOYOTAカローラセリカといった国内では馴染みのある車両をベースにしたマシンで好成績を収めていたが、2000年以降は一度参戦を休止している。その後、2017年より「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」として再びWRCの舞台へ登場。2022年シーズンでは、エルフィンエバンス選手が見事総合優勝を果たし、マニュファクチャラーズランキング(いわゆるチームランキング)でもトップに輝いた。

マシンは昨年と同じく、市販車のトヨタ GRヤリスをベースにした「GR YARIS Rally1 HYBRID」で参戦。8月の第9戦終了時点で、カッレ・ロバンペラ選手が1位、エバンス選手が2位につけており、マニュファクチャラーズランキングでも1位となっている。

なかでも注目すべきは、今大会のラリー1に唯一出場する予定の日本人ドライバー、勝田貴元選手。愛知県長久手市の出身で、昨年は総合3位入賞という成績を残している。テレビやYouTubeなどで見せる気さくな人柄でファンも多く、サービスパークで快くファンサービスに応じるその姿も、人気の理由だろう。

「勝田選手は元々ラリーではなく、レーシングドライバーの出身。だからこそ恐れずにアクセルを踏んでいけるスピードと安定感が魅力だと思います」(梅本さん)

■Hyundai Shell Mobis World Rally Team

HyundaiのWRC初参戦は1998年。2003年を最後に一度撤退したものの、2014年に競技復帰した。マシンは「ヒョンデ i20」モデルを使用。2016年のラリーモンテカルロでi20が初めて表彰台に上がり、2019年には念願のWRC初優勝を果たしている。

WRC2023で使用しているマシンは、2022年シーズンから導入したハイブリッドモデル「i20 N WRC Rally1」。新マシン導入直後こそ苦戦したものの、すぐに調子を上げ昨シーズン終盤には5勝、マニュファクチャラーズランキングでは2位となった。

今年はHyundaiにとってWRC参戦10回目となる記念のシーズン。WRC準優勝経験のあるティエリー・ヌービル選手がチームをリードし、新加入のエサペッカ・ラッピ選手がサポートする。第9戦終了時点でマニュファクチャラーズランキングは2位。ドライバーズランキングでは3位と5位に入っており、ラリージャパンまでにどのような順位に変動するか楽しみだ。

■M-Sport Ford World Rally Team

長年WRCトップカテゴリーへの参戦を続けているM-Sport。元WRCドライバーのマルコムウィルソンが創設し、1997年からFordWRCプログラムを担当している。以降、一貫してFord車両で参戦しており、2006年・2007年には、2年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。

ここ数シーズンはなかなか好成績を残せなかったが、2022年のラリーモンテカルロでは、9度の世界チャンピオンを経験しているセバスチャン・ローブ選手がステアリングを握り、WRCハイブリッド時代初のラリーで勝利を収めた。

使用するマシンは「Ford Puma Hybrid Rally1」。ベースとなるモデルはコンパクトカーフォード・フィエスタで、ラリー1では唯一のSUVだ。WRC2023ではカラーリングを新調。Fordを象徴するブルーを基調に、ビビットなピンクとエレクトリックブルーのネオンボルトを配している。

■「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」を観るには?

フォーラムエイト・ラリージャパン2023」を観るには、大きく分けて2つの方法がある。

■1. SS観戦エリアのチケットを購入する

本格的にラリーを楽しみたいなら、やはりSSで観戦するのがおすすめ。SSで観戦するには、各SSごとに販売されているチケットが必要となる。

公式Webサイトでの一般発売は、2023年8月25日(金)10時にスタート。チケット価格は「豊田スタジアムSS」が大人4000円~、「山間SS」と「岡崎SS」が大人1万3000円~となっている。一部、先行販売で完売となっているSSもあるため、詳細は公式Webサイトで確認を。ほかにも各プレイガイドや、ふるさと納税の返礼品で手に入るほか、宿泊ツアーチケットの販売も行っている。

■2. リエゾンで観る

迫力満点のタイムアタックは見られないが、SS間の移動区間「リエゾン」で観ることも可能だ。大会前にはリエゾンでのルートが公開されるため、これを参考にしてほしい。

リエゾンの中では特にゆっくりと走る区間が決められており、そういった場所であれば選手に手を振って応援したり、マシンを至近距離で観たりすることもできるだろう。

「リエゾンの中で確実に見るなら給油ポイントがおすすめです。給油する場所が決められているので、そこなら停車しているマシンをゆっくりと堪能できます」(梅本さん)

いきなりSSで観戦するのはハードルが高いと感じる人は、まずはリエゾンで楽しむのもいいだろう。リエゾンでの観戦であればチケットは不要で、無料で観ることができる。開催日は1分~3分おきにマシンが通るので、1日中楽しめるのもラリーの特徴。詳細は公式Webサイトをチェックしよう。

梅本まどかさんプロフィール】

1992年愛知県名古屋市生まれ。SKE48でのアイドル時代を経て、現在は地元名古屋を拠点にタレントとしてマルチに活動中。大型二輪免許、国内Aライセンスを取得しており、モータースポーツ関連のメディアにも多数出演。WRC招致応援団に参加し、WRC日本開催をPRしている。

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民家のすぐ近くを走り抜けるコースもあり、迫力満点!/※写真は2022年開催時の様子 (C)WRC Promoter GmbH