氷河期世代1993年から2005年に学校を卒業、またはこの時期に就職活動を行った人を指しますが、実にその間10年以上。その厳しさには濃淡があります。大学卒であれば、2000年の就職内定率が最も低く、どん底だったといえるでしょう。彼らが歩んだ20年余り、そしてこれから歩む20年ほどを考えたとき、そこには絶望しかありませんでした。みていきましょう。

就職氷河期「どん底世代」辛酸をなめ続けた人たちの20年

2000年4月。大学卒業者の就職率は91.1%でした。大学を卒業しても就職できないという、いわゆる就職氷河期が最も厳しかった年のひとつだといえるでしょう。

大学を卒業したのに無職……この年の春に辛酸をなめた人たちは(大学を現役で合格し4年で卒業したのなら)1977年生まれ。バブル崩壊から始まった日本の転落は不良債権問題が深刻化するなかで、さらに深刻なものになります。山一証券北海道拓殖銀行といった大手金融機関までもが潰れるという異常事態を前に、大卒就職率は下落を続けました。

たとえ就職できなくても、生きていかなければなりません。幸い、都会であればパート・アルバイトでも十分に生きていける……そうやって「大卒・フリーター」として多くの人が社会人の第一歩を踏み出したのです。

就職氷河期は2005年3月に学卒の人までを指します。以降は、一時的に雇用環境が改善。2000年に大学を卒業した人たちは、30代手前になっていました。第二新卒とされる時期は過ぎてしまいましたが、30代手前なら未経験でも若さで何とかなるタイミングだったかもしれません。

しかし、そういっているうちに、2008年9月15日を迎えます。アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻。いわゆるリーマンショックで、回復傾向にあった雇用環境は一気に悪化します。さらに2011年、東日本大震災が日本を襲い、アベノミクスで再び日本経済が上昇傾向となるのは、2013年以降の話。このとき、就職氷河期〈どん底世代〉は30代後半に突入します。

30代後半で正社員経験なし……なかなか厳しい条件です。同世代で正社員として歩んできた人たちは、マネジメント経験が問われ始める年齢です。そこで、正社員経験なしのフレッシュさなど誰も求めることはありません。

――面接、100件受けたけどどこも受からない

そんな話も決して大げさではありません。20年以上も辛酸をなめ続けた人たちは、今年46歳。40代も後半に突入しています。

就職氷河期「どん底世代」…これから20年も底辺の行き着く先

厚生労働省令和4年賃金構造基本統計調査』によると、40代後半、大卒・男性・非正規社員の月収(所定内給与額)は25.7万円。中央値は22.6万円です。保険料や税金を引くと、独身で手取り18万円に届かない程度でしょうか。大卒の初任給と同じ程度か、それ以下の金額です。

最近、氷河期世代正社員化を後押しする流れもありますが、40代後半で初めて正社員になったとしても、平均的な給与を手にすることができるわけない……ならば、このまま非正規社員を続けていっても変わらない、と考える人も多いでしょう。もう時はすでに遅し、というわけです。

大学を卒業以来、非正規社員の中央値程度の月収しか手にしてこなかったら。生涯年収は正社員に比べて半分以下。65歳まで働いたとして、手にできる厚生年金は月5.5万円程度。国民年金と合わせて月12万円程度となります。厚生年金受給者の65歳以上男性の平均は17万円程度ですから、月5万円程度の差となります。

給与ほどは差がない年金ですが、片や正社員として歩んできた人生、老後に備えて十分な貯蓄もあるでしょう。一方で、大学を卒業して以来ずっと非正規社員の人が、将来を見据えて貯蓄できる余裕があったとは思えません。“預貯金ゼロ”のその日暮らし、ということも十分に考えられます。

さらに厚生年金への加入を前提にしていますが、厚生年金の適用拡大はつい最近のこと。いままで厚生年金に入ったことがない、ということも考えられますし、今後も未加入ということも考えられます。40年間、国民年金保険料を払い続けたとしても、65歳から手にできる年金は月6.6万円。保険料の滞納等があれば“それ以下”という、なんとも絶望的な未来もありうるのです。

年金月6.6万円以下で貯蓄なしでは、65歳以降も働き続けることは確定です。しかし、もし月々の給与だけで暮らしていけるなら、65歳以降も年金を受け取らず、繰り下げ受給で年金の増額を狙うのも手です。75歳まで年金を受け取らずにいたら、増額率は84%。65歳で国民年金満額支給=月6.6万円を手にできるとしたら、「6.6×1.84」で月12万円程度の年金を手にできる計算です。

見捨てられた世代となることが確定の氷河期世代のさらにどん底の世代。「繰り下げ受給で年金およそ2倍」がせめてもの救いかもしれません。

(写真はイメージです/PIXTA)