65歳以上の高齢者の割合が人口の21%を超え、「超高齢化社会」を迎えた日本。高齢化に伴う問題はさまざまあるが、その中でも介護問題は個人にとっても社会にとっても重要だと言える。介護する側も高齢で共倒れの危険がある“老老介護”、子供にもかかわらず大人が担うようなケア責任を引き受ける“ヤングケアラー”という言葉も生まれているが、いずれにせよ介護問題は家庭内だけに留めるのではなく、社会との連携が必要不可欠なのだろう。

【漫画】ショック、同居中の祖母から泥棒扱いされた!徐々に進行した祖母の認知症

同居する祖母が認知症になり、学生ながら介護を余儀なくされた体験を描いたコミックエッセイ「嫌いから可愛いになった私のおばあちゃん認知症介護実録〜」でも、外部との連携が大事なことがわかる。しかし、作者のさとみさん(X、旧Twitter @satomi_qoljojo)によれば、さとみさんは祖母・きみ子さんに異変を感じるようになっても、なかなか周囲の理解を得るのが難しかったそうだ。当時の心情をインタビューした。

■周囲からは「気にしすぎ」と言われた中、祖母の異変を突きつけられた出来事

――祖母のきみ子さんとは何歳から同居されていたんでしょうか?

18歳からです。進学がきっかけで、高校を卒業してから居候させてもらうことになりました。

――認知症の症状が出る前は、きみ子さんとの同居はスムーズだったんでしょうか?

当時はとにかくパワフルで声も大きくて世話焼きだったので、圧倒されていました。気にかけてくれるのはうれしいことでもありますが、鬱陶しいときもあって。1人になりたい私 VS. 構ってあげたい!祖母の抗争がたまに起きていました。

――73歳できみ子さんは認知症と診断されたそうですが、診断がつくどれくらい前から様子がおかしいな?と思うようになりましたか?

1年前くらいでしょうか。家にあるのを忘れて同じものを買うことが増えたんです。そういったことは私もやっちゃうことがあるのですが、おばあちゃんが「また買っちゃった」と言うならまだしも「さとみが買ったんでしょ?」と言うことが増えてきて「これはただの物忘れじゃないかも」と思うようになりました。

――「私のお財布盗ったでしょ!!!」と言われたときに、「これは認知症だ!」とピンときた感じでしたか?

その前から若干感じていたのですが、年相応の衰えなのか認知症なのかが私には判断できなくて。ただ、これを言われたときはさすがに「ただ事じゃない」と感じました。

――「もの盗られ妄想」のぶつけ先はさとみさんだけで、一緒に住んでいた彼氏さんにはなかったんでしょうか?

なかったそうです。カアっと感情が上がることはあったそうですが。なので、私とおばあちゃんの間に彼氏くんがいるのが個人的に一番平和でした(笑)

――泥棒扱いされるのは、「これは認知症の症状だ」というのを知っていたとしても少なからずショックだったと思いますが、どのように感じましたか?

実際に言われたときの衝撃はとても大きかったです。家族に疑われた悲しみと怒り、それ以上におばあちゃんに異変が起きていてそれが進行している現実を突きつけられたことが一番ショックでした。前々から疑いつつも周囲の人からは「気にしすぎ」と言われ萎縮していたので、私がもっと行動すべきだったのでは…と自分を責める気持ちもありました。たくさんの負の感情でグルグルでした。

「もの盗られ妄想」とは大切なものを「盗まれた」と思い込んでしまう認知症の症状のこと。認知症の初期に見られるとも言われている。ほかにも、同じものをいくつも買ってきてしまったり、料理がうまく作れなくなったりといったきみ子さんの行動は、認知症の初期症状の典型的なものと言って差し支えないようだ。もし身の回りの人に同じようなことが起きたら、ただの老化と思わず受診のサインだと知っておくのがよいだろう。

取材・文=西連寺くらら

認知症への偏見が強い祖母のきみ子さん。自分に認知症は関係ないと言い張るが、数々の行動は認知症の症状に合致していて…。「嫌いから可愛いになった私のおばあちゃん 〜認知症介護実録〜」より/(C)さとみ/毎日が発見