宮城県警が8月19日道路交通法違反(呼気検査拒否)の疑いで60代男性を現行犯逮捕したのは誤認逮捕だったと発表した。仙台放送8月19日)が報じた。

報道によると、多賀城市の路上で男性と知人がトラブルになり、警察官2人が状況確認していたところ、男性が車を運転して現場を立ち去ったのだという。

約5分後に徒歩で現場に戻ってきた男性からアルコールのにおいがしたため、警察官が呼気検査(飲酒検知)を要求。応じなかった男性を現行犯逮捕したが、近くに車はなく呼気検査拒否罪の要件を満たしていなかったため、約1時間半後に釈放された。

ネット上では「アルコールのにおいがしててもダメなの?」「戻る前は飲酒運転していたのでは」など、なぜ誤認逮捕なのか疑問の声があがっている。警察は何がいけなかったのだろうか。

●呼気検査の対象者ではなかった

警察官がアルコール保有量を調べるためにおこなう呼気検査について、道路交通法67条3項は「車両等に乗車し、又は乗車しようとしている者が第65条第1項(飲酒運転禁止)の規定に違反して車両等を運転するおそれがあると認められるとき」に実施できると定めている。

この規定は、ドライバーが実際にアルコールを保有していなくても、酒気を帯びていたと疑うべき徴候があれば足りるとされている(東京高裁昭和58年9月6日判決)。検査を拒否・妨害した場合には、「3月以下の懲役または50万円以下の罰金」となるおそれがある。

「車両等に乗車し、又は乗車しようとしている者」とは、すでに車に乗っている者や車のドアに手をかけて今まさに車に乗り込もうとしている者を指すとされる。

今回のケースでは、検査を拒否した段階では近くに車がなかったとされており、男性が「乗車しようとしている者」に該当しなかったとみられる。道交法の要件を満たさないと拒否罪が成立せず、逮捕する「現行犯」も存在しないため、「誤認逮捕」という扱いになった。

●「刑事責任を追及する目的のものではない」

道交法に基づく呼気検査は「酒気を帯びて車両等を運転することの防止を目的として運転者らから呼気を採取してアルコール保有の程度を調査するもの」で(最高裁平成9年1月30日判決)、飲酒運転に関する刑事責任を追及する目的のものではないという位置づけだ。

もし、今回のように「車両等に乗車し、又は乗車しようとしている」に該当しない者のアルコール保有量を検査するなら、道交法に基づく呼気検査ではなく、酒気帯び運転や酒酔い運転の嫌疑に対する捜査(任意を含む)として調べる必要があった。

たとえば、二日酔いで事故を起こし、いったん帰宅後に現場へ徒歩で戻ってきたような場合も「車両等に乗車し、又は乗車しようとしている」には該当しない。ただし、捜査の一環として任意の呼気検査を求められることは考えられ、頑なに拒否しても、令状を取ったのち血中アルコール濃度をチェックされることにはなるだろう。飲酒運転が見逃されることはない。

アルコール臭ぷんぷん+飲酒検知を拒否、それでも逮捕してはいけなかった理由