国際社会は、北朝鮮による2回目の偵察衛星打ち上げ失敗の動きに注目しているが、その陰に隠れ、同国当局はある重大な決定を下した。

新型コロナウイルス対策で国境が封鎖されて以降、中国に足止めされていた北朝鮮出身の留学生に対して帰国命令が出されたことは本欄で既報のとおりだが、彼らは北朝鮮に面した中国の丹東で待機させられ、いつ帰国するかはわかっていなかった。

その帰国がついに始まったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

丹東の情報筋は、カザフスタンで開かれる国際テコンドー連盟世界選手権大会に参加する選手や関係者を乗せて北朝鮮から中国にやってきたバス2台が、16日午後4時、留学生と重病人を乗せて北朝鮮に戻ったと伝えた。

一方、RFAの平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、早ければ26日までに、丹東と新義州(シニジュ)を結ぶ国際列車が運行を再開すると述べた。再開となれば、3年7ヶ月ぶりのこととなる。

留学生に続き帰国させられるのが、海外で営業する北朝鮮レストラン(北レス)の従業員だ。北レスではこの間、美人ウェイトレスたちの韓国への亡命事件などが起きており、本国は従業員の思想状態を問題視しているとされる。

そして帰国後、留学生やウェイトレスたちを待ち受けるのが「水抜き」――つまり、外国生活で染まってしまった資本主義的な生活習慣と思想を、徹底して北朝鮮式に染め直す行為だ。

「水抜き」では、平壌市内の普通江(ポトンガン)ホテルや羊角島(ヤンガクド)ホテルなどで3~4日間かけて、「わが国(北朝鮮)も韓国に劣ってはいない」ということが教え込まれる。同時に、同僚や学友どうしで互いの行動を批判し合う「総和作業」も行われるという。

これは以前から「美女応援団」などに対しても行われていたもので、平均的な北朝鮮国民ならば、こうした苦行にもある程度の耐性を持っている。

だが、今回帰国する人々の場合、海外での暮らしが長すぎた。もしかしたら「水抜き」作業に対し、極度の拒否反応を示してしまうかもしれない。また、よしんばこれをクリアしても、しばらくは当局の厳しい監視下に置かれるはずだ。そこで「資本主義的な逸脱」と取られかねない行動をすれば、厳しいペナルティを与えらえる可能性が高い。

数年ぶりに家族と会える喜びもあるだろうが、それと同時に、帰国の道は「憂鬱な旅路」でもあるのだ。

2016年4月に集団脱北した北朝鮮レストランの女性従業員たち(チャンネルA提供)