最近、クレジットカードや電子マネーなど、いわゆる「キャッシュレス決済」に対応する店舗が増えてきました。ただ、「キャッシュレス決済の種類が多く、どのサービスを選べばよいのか分からない」「クレジットカードをたくさん持つのはダメ?」「ポイントをオトクにためる方法は?」などと疑問に感じる人は多いのではないでしょうか。

 こうしたキャッシュレス決済にまつわる疑問について、「1日1分読むだけで身につくお金大全100(改訂版)」(自由国民社)の著者の一人である、ファイナンシャルプランナー(FP)の高山一恵さんが解説します。

キャッシュレス決済のメリットは?

 ここ数年、現金を使わずに買い物をするキャッシュレス決済が広がっています。昔からあるクレジットカードはキャッシュレス決済の一つですが、他にも電子マネーやスマホを使ったバーコード決済、デビットカードなどがあります。

 キャッシュレス決済を使うと、多くの場合、ポイント還元や割引などが受けられ、次回以降の買い物がお得になります。時にはキャンペーンなどが行われ、還元率が大きくアップすることもあります。

 また、キャッシュレス決済を利用すれば、会計時に小銭を出す手間が省けるため、スピーディーに買い物を済ませることができるだけでなく、ウェブ上で利用明細や利用履歴などを確認することで、家計の管理も楽にできます。

 さらに、スマホ決済の中には、割引クーポンなどのサービスが受けられたり、同じアプリを使って無料でお金を送金したり、請求書のバーコードを読み取って支払ったりできるものもあります。キャッシュレス決済は、現金では得られないメリットが満載と言えます。

クレカ持ち過ぎのリスクは?

 キャッシュレス決済の中で、最も利用している人が多いといわれているのがクレジットカードです。多く持っている人も少なくないとは思いますが、クレジットカードの持ち過ぎは危険です。なぜなら、次のようなリスクがあるからです。

■不正利用される可能性
普段利用していないカードの場合、あまり明細をチェックしないことが多く、不正にカードを利用されても気が付かないかもしれません。少額の決済の場合、端末にタッチしたり、差し込んだりするだけで使える店舗があるので、カードを紛失した場合は危険です。

■年会費がかかる可能性
年会費が無料のカードの中には、「初年度無料」「年に1回以上、買い物をすれば無料」というケースも多いため、年会費がかかることを忘れがちです。クレジットカードの明細を見る機会がなければ、気付かずに何年も払い続けていることが起こり得ます。

■新規でカードが作りにくくなる可能性
カードの利用上限金額である「与信枠」は、カードの枚数が多いほど、合計の与信枠も大きくなります。総与信枠が自身の返済能力より大きい場合、新たにカードを作れなくなる可能性があります。

■住宅ローンなどにも影響する可能性
クレジットカードのリボ払いや分割払いの利用のほか、キャッシングを利用しなくてもキャッシング枠を設定した場合、その金額が借入とみなされます。これにより住宅ローンなどの審査に通りにくくなったり、融資額が少なくなったりすることがあります。

キャッシュレス決済を選ぶコツは?

 クレジットカードに限らず、他のキャッシュレス決済もあれこれ使うと管理が面倒になるだけでなく、せっかくたまるポイントも分散し、使いにくくなります。ですから、利用する数を絞って利用しましょう。

 基本的なキャッシュレス決済選びのポイントを3つ紹介します。

(1)使える店が多いかどうか
どのキャッシュレス決済が使えるかは、店舗ごとに異なります。使える店が多いほど、単純に利便性は高まります。チェーン店はもちろん、個人経営の店などでも利用できるとお得ですし、現金決済の手間がなくなります。

(2)生活圏で使えるか
いくら使える店が多くても、自分の生活圏で使える店が少ないのでは意味がありません。特にチャージ(前払い)をして使うサービスの場合、使える店が少ないと、チャージしたお金が使い切れずに残ってしまいます。だからといって無理に使うと、今度は無駄遣いになってしまう可能性もあります。そのため、自分がよく行く店や、よく利用するサービスで使えるのかも確認しましょう。

(3)普段からためているポイントと相性が良いか
例えば、ドコモユーザーで「dポイント」をためているなら「d払い」、楽天会員で楽天ポイントをためているなら「楽天ペイ」という具合に、普段からよく使うサービスに関連した決済手段を選ぶと、ポイントがよりためやすくなります。

 お勧めは、「クレジットカード2枚」、「電子マネー1つ」、「スマホ決済2つ」の計5つに絞ることです。お金の流れが分かりやすくなりますし、たまったポイントも生かしやすくなります。

ポイントをおトクに獲得するコツは? 二重取り・三重取りも可能

 それぞれのキャッシュレス決済で、お得にポイントを獲得するコツを解説します。例えば、クレジットカードは、自分がよく使うサービスに応じたカードを選びましょう。お勧めの選び方は次の通りです。

デパートやスーパーで買い物をする場合
対象の店舗で割引の適用が受けられる「流通系カード」がお勧め。イオンカードやエポスカードなどが該当。

■鉄道や飛行機をよく利用する場合
ビューカードJALカードなどの「交通系カード」がお勧め。

■ネットショッピングをよく利用する場合
楽天カードPayPayカードなどの「ネット・通信系カード」がお勧め。

 クレジットカードを選ぶ際は年会費無料のカード、還元率が高いカードを優先します。カードのブランドも分けておくと安心です。1枚はVisa、もう1枚はMastercardまたはJCBという具合です。

 電子マネーは、お住まいの地域で使える交通系電子マネーがお勧めです。使える店舗が多い上に、電車やバスにも乗れます。あるいは、地元のショッピングセンターで使えるものもよいでしょう。

 例えば、スマホアプリの「モバイルSuicaスイカ)」は、JR東日本在来線に乗車する際、50円ごとに1ポイントの「JRE POINT」が手に入る上に、ビューカードなどのクレジットカードでチャージするときにもJRE POINTが付与されます。JRE POINTは、モバイルSuicaにチャージして使えます。

 そして、スマホ決済もクレジットカードや電子マネーと同様、生活の中で使えることが大切です。その点で考えると、利用できる店舗が多い「PayPay(ペイペイ)」は利用したいところです。

 もう1つ選ぶなら、先述のように普段利用しているサービスと相性の良い決済サービスを選びましょう。例えば、楽天ポイントをためているなら楽天ペイ、メルカリをよく使っているなら「メルペイ」という具合に、自分の生活に合ったスマホ決済を利用すれば、同じポイントがためやすくなります。

 ポイント還元のお得度をアップさせるためには、ポイントの二重取り・三重取りが欠かせません。キャッシュレス決済を組み合わせたり、店頭で所定のポイントカードを提示したりすることで、1回の買い物でもらえるポイントを増やすことができます。

 例えば、電子マネーやスマホ決済の支払い方法にクレジットカードを指定すれば、電子マネーやスマホ決済のポイントとクレジットカードのポイントの両方がもらえます。また、ポイントカードを提示してクレジットカード払いをすれば、ポイントカードのポイントとクレジットカードのポイントの両方がもらえます。これがポイントの「二重取り」です。

 このほか、電子マネーやスマホ決済の支払い方法にクレジットカードを指定し、買い物時にポイントカードを提示することで、ポイントの三重取りも実現可能。実質的なポイント還元率を大幅にアップできます。

キャッシュレス決済の注意点は?

 キャッシュレス決済は、今後私たちの生活にさらに浸透していくと思いますが、利用する上で注意点も知っておく必要があります。

 まず、キャッシュレス決済の場合、現金が減っていく感覚がありません。そのため、つい使い過ぎてしまう可能性が高いということです。「毎月の予算を決め、定期的に管理する」「キャッシュレス決済の中でも、買い物の支払いと同時に金融機関の口座から代金が引き落とされるデビットカードを主に利用する」などの対策を考える必要があります。

 また、セキュリティーの問題もあります。クレジットカードの磁気ストライプに記録されている情報を盗み取る「スキミング」によるカードの不正利用など、カード情報を不正に入手されてしまうリスクがあります。不正利用に気付いた場合は、すぐにカード会社に連絡をしてください。多くのカード会社では、不正利用に対する補償制度を設けているので、確認しておきましょう。

 スマホ決済の場合も、スマホにさまざまな個人情報が保存されているので、紛失すると不正に利用される可能性があります。スマホを利用する際は、顔認証や指紋認証といった生体認証の設定を忘れないようにしましょう。

 今回は、キャッシュレス決済のさまざまな疑問について解説しました。キャッシュレス決済が私たちの生活に浸透するだけでなく、国がNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を推進するなど、お金を取り巻く状況はかなり変化してきています。時代の変化に適用できるように、ぜひ、お金の知識を身に付けてくださいね。

ファイナンシャルプランナー、Money&You取締役 高山一恵

キャッシュレス決済の注意点は?