「結婚」は人生において大きなライフイベントのひとつです。婚約や挙式には多くの出費が伴うため、近年はあまりお金をかけずに結婚する夫婦も多いようです。本記事では、Aさん(28歳・OL)の事例とともに、貯金ゼロの状態から結婚する方法について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。

親の看護で貯蓄なし…年収400万円の28歳Aさん

28歳でOLのAさんは、賃貸の一軒家に62歳の母親と二人暮らしでした。6年前に亡くなった父親は自営業だったため、遺族年金もありませんでした。母親もここ数年病気で寝たきりでしたが、昨年亡くなったため、一人暮らしになってしまいました。

Aさんは専門学校を卒業後、正社員としてアパレル系の中小メーカーに勤めてきました。現在年収は400万円ですが、長年寝込んでいた母親の医療費や家賃の支払いなどで、ほとんど貯金もない状況です。

母親の看護のために結婚を待ってもらっている彼氏もいるのですが、これ以上待たせるのも心苦しいAさん。しかし、貯蓄もなく、結婚費用を彼にばかり負担させるのも申し訳なく悩んでいます。

増える在宅療養

Aさんのお母さんのように、訪問診療を受ける患者数は大幅に増加しています。 そのため、面倒をみるために負担の増える家族も増えています。訪問診療を受ける患者の大半は75歳以上の高齢者ですが、ほかの年代についても増加傾向であることがわかります。

また、在宅療養支援診療所の増加傾向は収まってきていますが、在宅療養支援病院は増加傾向にあります。

さらに、訪問介護の利用者数も次のグラフのように増加傾向となっています。

*厚生労働省第2回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ令和4年3月9日参考資料「在宅医療の現状について」より引用

今後もAさんのように、家庭のなかでの看護や介護のケースは増えてくるものと思われます。

結婚にはどのくらいのお金がかかるのか?

さて、結婚となるとどのくらいの費用がかかるのか、(株)ゼクシィによると次のようになっています。

婚約~結婚~新婚旅行までにかかった費用  371万3,000円

※主な支出

■婚約      結納式  16万6,000円

       婚約食事会  6万6,000円

■指輪     婚約指輪 35万8,000円

        結婚指輪 26万1,000円(2人分)

■結婚式  挙式・披露宴 303万8,000円

■新婚旅行     旅費  29万6,000円(2人分)

        お土産代  4万3,000円

※【結婚式のお金はいくら?】相場や項目別平均費用などまるっと解説!*

*出典:「ゼクシィ結婚トレンド調査2022(全国推計値)」および「新婚生活実態調査2020(リクルートブライダル総研調べ)」

もちろん、あくまでも目安の金額ですから、必ずしもこれだけの金額がかかるわけではありません。結婚指輪だけ購入してもいいし、2人で旅行だけ行ってもいいと思いますし、籍だけ入れてもいいでしょう。どんなに立派な式を挙げても、離婚する人は離婚してしまいます。

新型コロナで激減した結婚費用

「ゼクシィ結婚トレンド調査**」によると、結納・婚約~新婚旅行までにかかった費用(首都圏)は、

**出典:ゼクシィ 結婚トレンド調査2021調べ(首都圏

・2019年 487.6万円

・2020年 493.8万円

・2021年 393.4万円

と、新型コロナの影響からか、2021年には前年に比べると100万円も減っています。近年は、お葬式にもお金をかけなくなってきています。物価高もあり、今後も冠婚葬祭にお金をかけない風潮は続くと考えています。

「どうしてもウェディングドレスを着たい!」Aさんの結婚資金計画

筆者は、籍だけ入れるだけでも幸せではないか、とも考えましたが、「ウェディングドレスを着て、天国のお父さんとお母さんに見せてあげたい」というAさんの希望もあり、結婚式の資金計画を考えることにしました。

結婚式や新婚旅行の費用の折半分として、200万円を目標とした資金計画を立てることにしました。年収400万円のAさんの手取りは、毎月の手取りが約20万円の給料とボーナス分になりますが、短期間での資金作りなので、収益はほとんど見込めません。

1年半(18ヵ月)で200万円を作るとすると、

・毎月5万円×18ヵ月=90万円

ボーナス40万円×3回=120万円

と、合計で210万円を作ることができます。

ちなみに総務省の「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」によると34歳以下の女性単身世帯の1ヵ月の消費支出は次のようになっています。

支出項目 支出額(円)
食料 30,921
住居 41,613
光熱・水道 8,957
家具・家事用品 4,259
被服及び履物 8,039
保険医療 4,655
交通・通信 20,508
教育 0
教養娯楽 20,877
その他 23,301
合計 163,130

Aさんは長年苦労されてきたので節約にも慣れていますから、今の生活のままでも工夫をすれば1年半で200万円を貯めることも難しくないでしょうが、大きい支出は家賃ぐらいなので、

・小さい部屋に引っ越す。 ・結婚後に2人で住む部屋を探して、先に引っ越してしまう(家賃は折半してもらう)。 ・彼氏の住まいに同居させてもらう。

といった方法で、家賃を節約することができます。家賃を節約することができれば、毎月の積み立てはさらに増やすことができますので、もう少し早く目標は達成することも可能です。

なお、新型コロナの影響もあって、現在は数万円~で可能な「フォトウェディング」というものもあります。結婚式や披露宴は行わず、名前のとおり写真だけのウェディングになります。花嫁姿などを思い出として写真に残すもので、撮影場所はスタジオだけでなく、チャペルや海外など希望や予算に応じて撮影してくれます。

相手のご両親等の理解も必要ですが、こういったプランを利用すれば、貯蓄がなくてもすぐに結婚をすることは可能です。私も母親の介護を十数年してきた経験がありますので、Aさんには是非幸せになってもらいたいと願っています。

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)