長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『モヤモヤさまぁ~ず2』(毎週火曜夜11:06-、テレビ東京系)をチョイス

すべてのテレビ番組は心霊特集をやるべき「アンタッチャブるTV」/テレビお久しぶり#63

■”出来事”に愛されたい…キング・オブ・テレビ「モヤモヤさまぁ~ず2

この『テレビお久しぶり』の連載も早いもので64回目を迎え、多くのテレビ番組を見ては好き勝手に感想を書いてきたのだが、結局のところ一番面白いのは『モヤモヤさまぁ~ず2』である。モヤさまってこれまで4回くらいしか見たことがなくてよく知らないんだけど、それでも一番面白い。見るたび、明らかに違う風というか、別格の空気感が漂っている。キング・オブ・テレビ。こういうのは連載100回目記念とかで言うべきなのだろうが、ともかく、連載64回目で、王者が決定してしまった。

モヤさまの何が凄いって、まるで”人生で一番良かった散歩”が毎度映し出されるような、そんな出来事性にある。4回しか見たことないんで毎度かどうかは分からないけども、少なくとも、今回鑑賞した8月22日放送の軽井沢編では、ずっと面白いことが起こり続けている。演者のすばらしさというのは大前提なのだが、もはや、さまぁ~ずとか、田中瞳アナとか、制作スタッフの力というのだけでは説明がつかないような、出来事そのものの魅力にあふれているのだ。

軽井沢をブラつく一行は、のっけから、軽トラの荷台に鹿の頭蓋骨が並んでいる光景を目撃する。ホラー映画ばかり見ていると鹿の頭蓋骨は悪魔崇拝的な匂いが感じられてテンションが上がるのだが、私のような持たざる者が軽井沢を散歩したところで、並んだ鹿の頭蓋骨を目撃することなんてないだろう。次に一行は、ある男性の首から下を大量のハチが覆っている衝撃的な写真に『ハチひげおじさんの店』という文言の添えられた看板を目撃する。防護服を着て看板の先の養蜂場へ赴き、色々あって、また一行が歩いていると、どこからかオペラのような歌唱が聞こえてきて…という、とにかく出来事の目白押しなのだ。演者がそれを見つけるというよりは、光景が突如として彼らの前に現れるような印象。私も、一度でいいからこんな、めくるめく散歩がしてみたい。

まあ、実際のところは、道順はある程度決まっていて、訪れる場所も決まってあるのだろう。そうでなければ、こんなに楽しくなるわけがない。しかし、道順や場所がすべて演出だったとしても、出来事そのものは決して嘘ではないのだし、世界は少し歩くだけでこんなにも面白いと、そう思わせてくれる演出であるというわけで、一層グッときてしまう。陳腐な言葉より、モヤさまを見るほうが、よっぽど外に出たくなるというもの。出来事に愛されることなど望むべくもないが、外に出て、歩いてみれば、きっと何かは起こるはず。そんな希望を、無根拠にも与えてくれる番組である。

「テレビお久しぶり」/(C)犬のかがやき