JRのBRT転換としては、2例目となります。

いよいよ「専用道バス」として復活

被災したJRの鉄道路線がバス専用道という形で復活する「BRT ひこぼしライン」が、いよいよ数日後の2023年8月28日(月)に開業を迎えます。どんな路線なのでしょうか。

九州の内陸部を南北に抜けていく「JR日田彦山線」。その南半分である添田~夜明間は、2017年に豪雨で被災し、復活が絶望的になっていました。そこで、鉄道敷地をバス専用の道路に転換することが、2020年に正式決定となったのです。

鉄道として廃止されるのは、営業キロにして29.2km。鉄道駅としての役目を終える途中駅は、歓遊舎ひこさん・豊前桝田・彦山・筑前岩屋・大行司・宝珠山・大鶴・今山の8駅です。歓遊舎ひこさん駅は2008年に開業したばかりで、実質わずか9年の営業でした。

日田彦山線の列車はすべて、夜明から久大本線へ乗り入れて、2駅東の日田駅まで走っていました。BRTも同じく、日田まで乗り入れます。

旧鉄道敷を活用した専用道を走るのは、全区間ではなく、彦山~宝珠山間の約14km。この区間は福岡・大分県境を越える山岳区間となっていて、並行道路は大きく西へ迂回する国道500号・国道211号か、恐ろしい狭隘・急カーブ・急勾配が連続する県道の山道しかありません。そこを長さ4379mの「釈迦岳トンネル」でまっすぐ一気に抜けていた鉄道ルートをバスが走ります。「BRT」としての再開業は、代替バスとは快適性・利便性が全く異なると言えます。

一般道区間は市街地を走るため、利便性を図って、新たに停留所が設けられます。その数24か所。学校や病院など生活に密着したエリアを中心に、鉄道では実現できなかった「きめ細かな足」となります。

ダイヤは、被災前の「全線通し9往復+添田~彦山3便」から、「通し10往復+添田~彦山8便+彦山~日田4便」に増加。バス車両であることから、区間便をより柔軟に設定できるようになったのがメリットと言えるでしょう。

「鉄道→BRT」となったJR路線 最初の区間は?

JRの鉄道路線が「BRT」に転換され再出発する例は、今回で2例目。最初の例は、2011年の東日本大震災で壊滅的なダメージを受けた、岩手県宮城県にまたがる太平洋沿いの「気仙沼線」「大船渡線」です。

気仙沼線は内陸部の前谷地~柳津をのぞく55.3kmが、大船渡線は内陸部の一ノ関気仙沼をのぞく43.7kmが、それぞれ鉄道による復旧を断念。鉄道敷を再利用できそうな場所は再利用し、それ以外は並行道路を走る形でBRT転換が決定され、被災の翌年から順次運行開始となりました。

その後、専用道区間も順次追加整備が続けられ、今や気仙沼線BRTはほとんどが専用道区間、大船渡線BRTも竹駒周辺で専用道化工事が行われています。

大船渡線BRTでは専用道上の「駅」新設が著しく、小友~盛で碁石海岸口・大船渡丸森・大船渡魚市場前・地ノ森・田茂山の5駅が立派な「2面2線のホーム」として誕生しています。

さらに近年では、BRTの自動運転化が積極的に進められています。すでに2022年から一部区間で営業運転へ導入され、来年秋には柳津~陸前横山~陸前戸倉の約15kmが自動運転区間となる見込み。同時に、現在の「運転士が常に注視する」自動運転レベル2から、一定の条件下で「完全無人運転」が可能なレベル4の認証をめざすとしています。

8月28日に開業を迎えるJR九州の「BRTひこぼしライン」(画像:福岡県)。