「働くことが好き」「老後のお金が必要」という理由から、定年後も働き続けたいと考える人が増えています。しかし、シニア世代が再就職を目指すのは簡単なことではありません。本記事では、日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏が、定年後の再就職先の探し方や定年後の失業給付のしくみについて、詳しく解説します。

定年女性のための再就職活動

定年後の再就職は困難…特に事務職は高い倍率

定年まで働き続けた女性の中には、働くことが好きで定年後も仕事を続けたい方や、社会と関わっていたいから仕事を続けたい方も少なくないでしょう。男性も同様ですが、定年後の再就職先を見付けるのは、簡単なことではありません。

定年後の再就職先が見付からない場合、多くの人が活用するのが公的機関となります。現在、ハローワークのシニアコーナーで求人が多いのは、警備、マンションの管理人、ビル清掃、学校の用務員などです。中小企業の事務職の採用ニーズ自体は少なく、倍率は高くなっています。

実際、事務職にこだわり100社応募する人や、逆に、1つの事務職の求人に100人近くが応募するケースもあると聞いたことがあります。女性が希望する職種で「一般事務・サポート」が多いことを挙げましたが、どうしても職を得ることが必要な場合、希望していた事務職での就職が決まらなければ、職種転換の道も考えなければなりません。

公的機関の就職支援講習では、求人が多い業界(介護、マンション管理人、警備員、ビル清掃、調理等)の業界団体と連携して再就職支援を行っているところもあります。

人手不足の介護業界で働く

最近では、社会へ貢献しながら報酬を得たいという理由から、介護関連のコースを受講するケースも増えていると耳にします。介護業界は人手不足であり、即戦力としての活躍が求められます。

施設介護の場合は、施設で働く方々との人間関係にも気を使いますが、在宅介護の場合は、担当のお客さまのところに訪問して介護を行うことが中心となるため、ご家族や要介護者と良好な人間関係を築けると、在宅介護の仕事のほうが合っているといって、高齢になっても働き続ける人もいます。定年前の女性でも、どのような講習があるかということを定年前から調べておいて損はないでしょう。

公的機関や民間の人材派遣会社を活用して幅広く職探しを

また、職業を検索するための公的サービスとしては、ハローワークインターネットサービス※1が挙げられます。再就職活動をきっかけに、職業情報を調べることで、今まで知らなかった職業を知り、関心を持てれば、自分の可能性を広げるきっかけにもなります。

定年後のキャリアを考えたタイミングで、キャリアカウンセリングの活用をするのも一案です。定年後に焦って往訪するのではなく、どのような仕事やサービスがあるのか、早いうちに調べてみてはいかがでしょうか。

公的機関以外にも民間の人材派遣会社の活用をすることも可能です。就労を希望する高齢者を対象に、仕事を紹介しているマイスター60では、「年齢は背番号 人生に定年なし(R)」との思索を経営の基軸として、高齢者の雇用に取り組んでいます。現在に至るまでおよそ8,000名の高齢者の雇用の創出を実現しています。

同社に登録を行う高齢者の中には、部長・課長クラスの人や、早期退職して再就職を目指す人もいます。大企業出身者であれば、転職経験が全くない人も多く、初めてのキャリアチェンジとなる人が多いと聞きます。

募集している求人としては、ビル設備管理、建築・土木・施工管理、経営管理事務(経理・人事総務)、マンション管理員などが挙げられます※2。しかし、定年を機に、ポータブルスキル※3があれば、募集している職種や今までに所属していた業界にとどまらずチャレンジすることもできると考えます。

厚生労働省編職業分類によれば、職業の数は約1万7,000種類に上るといわれています。仮に60歳を区切りとしても、20年で80歳、その後の20年で100歳です。健康な体と柔軟性さえあれば、様々な仕事にチャレンジすることができるのではないかと感じます。

※1 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/

※2 小島明子『中高年男性の働き方の未来』(金融財政事情研究会、2022年)。

※3 厚生労働省「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」。

定年後に受け取れる「失業給付」の仕組み

会社員が離職した後、働く意思と能力を持って、求職活動を行っているにもかかわらず就職できない場合に、雇用保険の失業給付(基本手当)が支給されます。これは、定年退職をした人も同様です。定年まで一生懸命働いてきた女性であれば、きちんと手続を行うことで、失業給付を受け取ることができるのです。

失業給付(基本手当)を受給するためには、離職前の2年間の被保険者期間が12ヵ月以上(倒産・解雇等の理由により離職した場合は離職前の1年間に被保険者期間が6ヵ月以上でも受給資格を取得します)必要になります(被保険者であった期間のうち、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月を被保険者期間1ヵ月として計算します)。

失業給付(基本手当)の支給を受けることができる日数(所定給付日数)は、受給資格に係る離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間(算定基礎期間)や離職理由等によって決定されます。倒産や解雇の場合は、一般の離職者に比べると、制度が手厚くなっています。

60歳以上65歳未満、定年退職で辞め、20年以上雇用保険に加入をしている場合、給付日数は最大で150日となります。

このほか、雇用保険の失業等の給付の就職促進給付のうち、就業促進手当として、再就職手当や就業促進定着手当、就業手当があります。詳しくは、ハローワークインターネットサービス※4で概要を確認することができます。

※4 ※1を参照

小島 明子

日本総合研究所創発戦略センター

スペシャリスト