かつて「乗り継ぎの地」として日本人に馴染み深かったアンカレッジ空港。ここへ着陸するコクピットの景色はどのようなものなのでしょうか。同空港を拠点とするNCAのパイロットに、シミュレーターで実演してもらいました。

現在は大・貨物空港に NCAも拠点

現在日本と欧米間をむすぶ国際線は、ほぼすべての便が直行便ですが、かつては米アラスカ州・アンカレッジ空港を経由したのち、目的地へ向かうことが一般的でした。「乗り継ぎの地」として日本人に馴染み深かったアンカレッジ空港への着陸はどのようなものなのでしょうか。今回、NCA(日本貨物航空)協力のもと、パイロットに同空港への着陸を”実演”してもらうことができました。

アンカレッジ空港と称される「テッドスティーブンス・アンカレッジ国際空港」が、かつて乗り継ぎの聖地だったのには、主に2つの理由があります。アジア~アメリカ線では旅客機の航続距離の問題、アメリカ~欧州線ではソ連(現在のロシア)上空を飛行できない問題があったためです。

そんなアンカレッジ空港は、現在貨物機の一大拠点空港となっており、NCAもアンカレッジ空港を利用する航空会社のひとつ。同社はこの空港を北米の拠点とする国内唯一の航空会社で、世界中に航空貨物を輸送しています。

今回、NCA施設内にある、ボーイング747のフルフライトシミュレーター内に実際に入ることができました。NCAでは2023年8月現在、同社が実機を運用している747-8Fのシミュレーターと、かつて実機を運用していた747-400Fのシミュレーターを保有しており、パイロットや整備士が訓練を行っています。このシミュレーターは、計器類はもちろんのこと、操縦動作にあわせて映像や振動で実機を再現するものとなっています。

今回は東西に伸びる滑走路2本のうちの1本に、東側から着陸進入するシーンを実演してもらいました。

コクピットから見ても違う!「アンカレッジ空港」へ疑似着陸

日本の空港では、豪雪地帯に設置されている場合は、雪のなかでの視認性を高めるべく、中心線などがオレンジで描かれていることが一般的ですが、アンカレッジ空港のそれは白で書かれています。また「7R」と描かれたアンカレッジ空港の滑走路番号(方角を示す)も、日本では「07R」と表記されるので、ここも異なる点です。

シミュレーターでは、雪の積もる中での同空港への着陸を実演してもらいましたが、空港周辺はまさに銀世界。視界もクリアではありません。今回は滑走路には積雪がない状況だったものの、パイロットによると「滑走路に雪が積もっているケースもある」とのこと。

ただ、この滑走路への着陸進入は、パイロットの着陸をサポートする無線着陸援助装置「ILS(計器着陸装置)」を用いて、視界不良でも着陸できる設備が備わっているため、そういったケースでも安全な着陸が実現しています。

ちなみに雪が降っていないシチュエーションも見せてもらいましたが、背後にはアラスカの山々がそびえ立ち、明らかに日本の空港の光景ではありませんでした。

NCAの飛行機(乗りものニュース編集部撮影)。