春先から快投を続けてきた大谷。判明した右肘の怪我は彼のキャリアにいかなる影響を及ぼすだろうか。(C)Getty Images

 大谷翔平エンゼルス)は投手として再起できるか。予期せぬアクシデントに見舞われた天才の今後は小さくない注目を集めている。

 現地8月23日に行われたレッズとのダブルヘッダー初戦に大谷は「2番・指名打者兼投手」として先発。初回を三者凡退に抑えて迎えた2回のマウンドで異変は起きた。1死一塁という局面で、クリスチャンエンカーシオン=ストランドへの5球目、94.2マイル(約151.6キロ)の4シームを投げた瞬間、背番号17は突如として顔をしかめ、自軍ベンチへ合図。咄嗟に駆け寄ったフィル・ネビン監督らとしばらく話し込み、そのまま降板となった。

【動画】敵打者が「様子がおかしい」と語った大谷翔平の緊急降板シーン

 結局、試合後の検査の結果は右肘側副靭帯の損傷。今季の登板を諦めなければならない大怪我となった。ちなみにこの日の4シームのMAXは最速94.4マイル(約151.9キロ)。大谷にとってメジャー86登板で最も遅い球速であり、肘の状態が深刻だったのは言うまでもない。

 現状は「まだ検査をしている」(フィル・ネビン監督談)という大谷。仮にトミー・ジョン手術をするとなれば、2018年10月以来キャリア2度目となる。本格的な投球再開には最低でも18か月は要すると見られており、少なくとも2025年までは彼のピッチングは見られない。

 では手術をすれば、大谷は完全復活を果たせるのか。これについて数多のアスリートの執刀医を務めてきたロバート・ケラー医師が興味深いデータを出している。

 米紙『Washington Post』で「再起する可能性ある」と指摘するケラー医師は、2度目のトミー・ジョン手術を受けた選手の65.5%がメジャー復帰を果たせているという研究結果を発表。そのうえで自らの見解を語っている。

「やはり一度目であれば、チャンスは大いにある。以前のように投げることも可能だろう。しかし2回目は完全あるカムバックをできない可能性がある。そして復帰をしても多くの試合、そして長いイニングを投げることは難しくなるかもしれない」

 あくまで個人の肘の状態によるものの、2度目は負担の大きさからリスクは高いというわけだ。一方でメジャーリーグには見事に復活を遂げた例もある。

 現在レンジャーズに所属するネイサン・イオバルディは、2度のトミー・ジョン手術経験者ながら快投を披露。とりわけ今季は圧巻だった。今月に右上腕部の張りで戦線を離脱するまで、19先発で11勝(3敗)、防御率2.69、WHIP1.01とサイ・ヤング賞級のピッチングで球界を沸かせた。

 さらに大谷と同様に5年の間で2度のメスを入れた投手もいる。カブスに所属するジェイムソン・タイオンは2014年と2019年にトミー・ジョン手術を経験。昨年にヤンキースで規定投球回(177.1)を投げ、14勝をマーク。見事に再起を遂げ、昨オフにはカブスとの4年6800万ドル(約99億2800万円)の大型契約を勝ち取った。

 無論、2人はあくまで一部に過ぎない。以前のように投げられない投手の例もある。それでも29歳と比較的若く、耐性も見込める大谷ならば、時間を要してもトミー・ジョン手術を乗り越えられる可能性は小さくないはずだ。

 はたして、大谷はいかなる決断を下すのか。いずれにしても、彼の挑戦を信じて見守りたい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

大谷翔平、2度目のTJ手術なら再起は可能? 米医師が語った“リスク”とMLBでの成功例は――