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 今から約2億5000万年前の三畳紀、現在の中国南部の浅瀬には、ずんぐりとした人間サイズのトカゲのような亀のような海洋爬虫類が泳いでいた。

 新たに発見され「Prosaurosphargis yingzishanensis(プロサウロスファルギス・インズシャネンシス)」と名付けられたこの生物は、丈夫な装甲でおおわれた海洋爬虫類の系統図を塗り替える可能性があり、生物進化に新たな知見をもたらしてくれるかもしれないという。

【画像】 トカゲのようなカメのような新種を発見

 「Prosaurosphargis yingzishanensis(プロサウロスファルギス・インズシャネンシス)」と名付けられた新種の化石は、2019年に中国湖北省の洋山採石場で発見された。

 サウロスファルギス(Saurosphargidae)科の仲間で、ずんぐりとしたトカゲのような姿で、亀のようにも見える。事実、サウロファルギスは、ギリシャ語の”トカゲ”と”オサガメ”を組み合わせたものだ。

 体長は1.5mほどで、その体は「皮骨板」(爬虫類や恐竜に見られる骨鱗や骨板)におおわれていた。当時、その環境では大型の海洋爬虫類の部類だったと考えられている。

 P・インズシャネンシスは、これまでに発見されたサウロスファルギス科最古の仲間で、約2億4500万年前(中期三畳紀)の浅瀬を泳いでいたと考えられている。

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プロサウロスファルギス・インズシャネンシスの骨格の一部は、中国の洋山採石場で発見された / image credit:Wolniewicz et al ., doi: 10.7554/eLife.83163.

海洋爬虫類の系統樹を塗り替える可能性

 だが、もっとも驚くべきは、その体の全体な特徴が、こうした海の爬虫類グループの分類がこれまで間違っており、書き換えるべきだろうことを示していることだ。

「鰭竜類(きりゅうるい:Sauropterygia)」という大昔の海の爬虫類を象徴するようなグループがある。2億5000万年前の中期三畳紀に登場したグループで、これまでは大きく「板歯類ばんしもく:Placodontia)」と「正鰭竜類(Eosauropterygia)」の2系統にわけられてきた。

 板歯類はまるでカメのような姿が特徴的なグループで、正鰭竜類はプレシオサウルスといった首長竜が属すグループだ。

 そしてサウロスファルギス科は、この鰭竜類とは別のグループとされてきた。

 ところが中国、合肥工業大学の研究チームは、P・インズシャネンシスとプレシオサウルスのような首長竜には共通点が多く、両者が非常に近いことを明らかにしている。

 このことから、鰭竜類の下にサウロスファルギスと正鰭竜類でなるサブグループを設けるべきだと、研究チームは提案している。

 さらに、この鰭竜類や魚竜形類(魚竜やタラットサウルスなど)は、これまで考えられていたよりもカメ・ワニ・鳥類のグループ(広義の主竜様類/Archelosauria)に近い可能性があることも判明したという。

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プロサウロスファルギス・インズシャネンシスの骨格の一部 / image credit:Wolniewicz et al ., doi: 10.7554/eLife.83163.

鎧をまとった海洋爬虫類が誕生した理由

 このことは、鰭竜類のように”鎧"を身にまとった海洋爬虫類が誕生した理由を伝えているのかもしれない。

 鳥類を除けば、このグループの仲間は丈夫な装甲でおおわれている。このことから当時の浅瀬で生きるには、この装甲が重要だったことがうかがえるのだ。

 それはだた外敵から身を守るだけでなく、水の浮力に打ち勝つためのウェイトだった可能性がある。そのおかげでエサが豊富な海底に楽々潜ることができたのかもしれない。

 研究チームは、P・インズシャネンシスの化石が発見された地域から、今後も進化史の空白を埋めてくれる古い種が発見されることを期待しているそうだ。

 この研究は『 journal eLife』誌(2023年8月8日付)に掲載された。

References:Ancient human-size sea lizard rewrites history of early armored marine reptiles | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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新たに発見された三畳紀の生物が、海洋爬虫類の歴史を塗り替えるかもしれない