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素足になる機会が多い夏は足の爪のトラブル多発

夏はサンダルを履く機会が増え、フットネイルを楽しむ人も多いだろうが、思わぬ足のトラブルに見舞われるケースもある。

「去年の秋、ペディキュアを拭き取ったとき、足の親指の爪が緑色に変色していたので、驚いて叫んでしまいました」(50代の女性)

痛みはないので、しばらく放っておいたが、見た目が気になるので近所の皮膚科で診てもらうと「グリーンネイル(緑色爪)」にかかっていたことがわかったという。

「水回りにいる常在菌の緑膿菌が爪に感染して増殖することで、爪が緑色に見える状態をグリーンネイルといいます。健康な爪では起こりにくいといわれていますが、ジェルネイルやつけ爪をつけっぱなしで、汗で蒸れると爪と皮膚の間に緑膿菌が入り込んでしまうのです。グリーンネイル自体に痛みはないのですが、自分で爪を切れなくなると『巻き爪』が進み、爪の周囲が炎症を起こして歩くのが困難になることがあるので、足の爪に異変が現れたら放っておかないで、皮膚科にかかることをおすすめします」

そうアドバイスするのは、内科・皮膚科のひまわり医院(東京都江戸川区)の伊藤大介院長。

■素足になる機会が多い夏はトラブル多発

ふだんは気にならない「足の爪」が目につく夏。痛みを感じなくても異変がひそんでいることがあるという。

足の爪に起こるトラブルで多いものに、爪が内側に巻き込んでくる「巻き爪」や爪の端が皮膚に食い込んで炎症を起こす「陥入爪」などがあるが、菌に感染することで爪の病気にかかるケースがあるので注意が必要という。

「水虫を引き起こす白癬菌というカビ(真菌)の一種が、足だけでなく爪の角質層に入る『爪水虫(爪白癬)』にかかる患者さんもいます。爪の白い溝に縦の線が入り、爪が厚くなってポロポロとはがれやすくなり、爪の全面が白くなるという経過をたどります。市販の水虫の薬では治りません。治療には半年から1年ぐらいかかるので、一度かかるとかなり大変です。水虫は男性がかかると思われがちですが、患者さんの男女比はだいたい半々ですので、水虫にかかっている人はもちろん、家族が水虫になっていたらうつらないよう気をつけましょう」(伊藤院長・以下同)

爪水虫自体に痛みはないが、こちらも巻き爪になることで歩くと痛みが出て、歩行困難になることがあるという。

このほかに、爪の周囲にいぼができる「爪周囲疣贅」という病気は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が爪と皮膚の間に侵入して生じる。

菌の感染だけでなく、病気や体調の異変などの影響が爪に表れるケースもある。

爪の表面が混濁する「爪乾癬」は、体の免疫バランスが崩れることで、爪の表面に点状のへこみができてもろくなることで起こる。

「爪はいろんな栄養素を取っていないときれいに生えてきません。爪が薄くてもろくて割れる、ボコボコ波打つような場合は栄養不足を疑います。よく知られているのは、爪が薄くなり反り返る『スプーン爪』で、鉄欠乏性貧血が原因です。ふだんの食生活のなかでビタミンやタンパク質をしっかり取るようにして、スプーン爪の場合は鉄分を補えば、また健康な爪が生えてきます」

副鼻腔炎や気管支炎などの呼吸器疾患になると、黄色爪症候群をまれに起こすことがある。爪の下のリンパ管が拡張することで爪が厚くなり黄色く見えるというが、爪水虫など、ほかのトラブルと見分けがつかないので、顕微鏡などを使いながら検査をするという。

ごくたまに爪が黒くなることがある。多くは「黒色線条」という爪の根本にできたほくろの一種だが、幅7ミリ以上、周囲の皮膚まで黒くなったら悪性黒色腫(メラノーマ)の可能性があるので、放置しないですぐに病院に行こう。

また、肝臓は体の血液を浄化したり、毒素を分解したりする大切な臓器。 肝硬変は肝臓の組織が線維化してしまい、肝機能が低下してしまう病気だが、この病気を発症すると爪に白濁が見られることが多いそうだ。

■爪の病気と異常7

【爪水虫】

原因:水虫を引き起こす白癬菌という、人の皮膚の角質を栄養として生きるカビ(真菌)が爪に感染し発症
症状:白癬菌に感染した爪は白色や黄色に濁って見える。初期は痛みやかゆみなどの自覚症状はない

【緑色爪】

原因:ジェルネイルは爪と皮膚との間に緑膿菌が入り込む可能性が。カンジダなどの真菌に感染した爪も同様
症状:緑色に変色するが痛みはない。緑膿菌という細菌がもつ色素により色がついている状態

【爪周囲疣贅】

原因:ヒトパピローマウイルスが爪と皮膚の間に侵入。ヒトからヒトへ感染する皮膚病
症状:カリフラワー状に爪の周囲にいぼが発生する。爪と皮膚の間に沿うように出現するのが特徴

スプーン爪】

原因:鉄欠乏性貧血や栄養不足になると、爪が薄くなり反り返りやすい。爪の両端を切りすぎることも原因
症状:貧血によって薄くなった爪の中央がへこみ、先が反り返ってスプーン状に。爪が青白くなる特徴も

【爪乾癬】

原因:体の免疫バランスに異常が生じ、爪に炎症が起きた状態。約2割の尋常性乾癬患者の爪に症状が出る
症状:表面にポツポツと点状のへこみが現れたり、表面がはがれたりし、爪の色が白濁して透明感がなくなる

【黄色爪症候群

原因:副鼻腔炎や気管支炎など呼吸器疾患にかかると、爪の下のリンパ管が腫れ、爪が黄色くなる
症状:すべての爪が黄色っぽくなり、伸びない。そのほかに下腿から足背にかけての浮腫と胸水の貯留が生じる

【悪性黒色腫】

原因:紫外線や繰り返す炎症などが原因。メラニン細胞もしくはほくろの細胞が悪性化したら、皮膚がんに
症状:爪の縦方向の黒い線が初発症状。線の幅が拡大したり爪のまわりの皮膚に黒くしみ出す

■トラブル回避のため爪の両サイドは残す

足の爪にトラブルが起きると、歩けなくなったり、靴が履けなくなったりして、日常生活に支障をきたすようになる。

トラブルを避けるためには、入浴時に足の指先をよく洗うのは当たり前だが、ペディキュアもつけっぱなしにしないでこまめにケアしよう。

そして、「爪の切り方」もポイントになってくる。

「爪を切るときに切りすぎないようにしましょう。特に両端を短く切りすぎることで、爪が皮膚に食い込む陥入爪が起こりやすくなります。足の爪を切るときは、爪先を直線にして角を丸めた四角形になる『スクエアオフカット』のようにして、指先まで爪が覆うようにカットすることをおすすめします。靴による指先への圧迫もトラブルのもとになりますので、かかとが低く甲高で、きちんと固定できる靴を選ぶようにしましょう」

自分の足で歩き続けるためにも、足の爪は大事。見た目の美しさと健康の両方を手に入れるためにも毎日のケアを入念に行おう。