「リスクとリターンは比例する関係にあり、ローリスク・ハイリターンのような投資商品はあり得ない」とされています。しかし、なかにはほぼノーリスクで利益が得られる「ミニマムリスク・ハイリターン」の保険商品も存在すると、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏はいいます。本記事では、40代女性会社員の斉藤さん(仮名)の事例とともに、節税投資目的での保険について解説します。

投資経験ゼロの40代で年収1,400万円の人材派遣会社・管理職

ここ数年で急速に業績を伸ばしてきた都内のある人材派遣会社に勤務する斉藤さんは40歳代半ばの独身女性です。いまの会社には10年ほど前に転職してきたのですが、人望も厚く管理職としての頭角を現して、現在の額面年収は1,400万円とかなりの高給取りとなりました。

そんな斉藤さんですが、金融資産運用には無関心でこれまでは銀行の定期預金程度しか利用したことがありません。というのも斉藤さんが子供のころにバブル景気がはじけ、父親が当時、株取引で大損失を負って焦燥している姿を見ており、「投資は怖いもの」という刷り込みがあったのです。

FPからの意外なアドバイス

そのような斉藤さんでも最近友人との会話でNISAの話題が出ることや、「インフレの世の中では投資をしないほうがリスク」のような話を耳にはさむ機会も多くなりました。投資には引き続きあまり乗り気ではないものの、少額でなにかを始めてみるべきとの思いで、知り合いのFPにNISAを使い、どのような商品を買うべきか相談してみることにしました。

斉藤さんが相談をしたFPからは意外な返事が返ってきました。

斉藤さんもご理解されているような理由で、基本的には私も“投資をしないことがリスク”との考え方です。しかし、NISA利用といっても、しょせんは利益が出た場合に非課税になるというだけで、損失が発生する場合もあります。まだ本格的な投資に気が進まないのであれば、来年から始まる新NISAを利用した投資商品選びには時間もあるので、まずは負ける可能性がほとんどない、ミニマムリスク・ハイリターン型のプチ投資から始めてみたらどうですか?

「ミニマムリスク・ハイリターンのプチ投資?」

そうです。斉藤さんの昨年の年末調整の書類を見て思ったのですが、斉藤さんは生命保険料控除を現在、医療保険分以外は使っていませんよね。保険に関しての私のスタンスは“必要な保障に必要な期間だけ最低限入る”です。

しかし一方で、生命保険料控除枠を使って上手く節税してくださいといわんばかりの、ほぼノーリスクの保険商品が売られていることも事実なんです。これらの多くはドアノック商品といわれていて、保険会社はその販売をきっかけに別の保険商品も売りつける材料にしています。窓口で余計な要らないものまで買わされないようにだけは注意してください

投資初心者も安心!「元本保証系商品 × 所得控除」型投資

生命保険料控除というのは所得税や住民税を軽減するための「所得控除」項目の1つで、「一般の生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類で構成されています。それぞれ年間8万円以上の保険料を支払うと、毎年所得税で4万円ずつ(合計12万円)、住民税で2万8,000円ずつ(合計8万4,000円)を課税所得から差し引くことが可能になります。

FPが斉藤さんに例示した保険商品は、「一般の生命保険料控除」用としては、国内某大手生命保険会社が販売している「無配当災害保障付積立保険」というものでした。この保険の保障内容と積立利率自体は大したことがありませんが、保険加入直後からいつでも中途解約が可能でその解約返戻金は払込み保険料の100%が保障されています。

また、「個人年金保険料控除」用の保険としては、国内某大手共済が販売している「予定利率変動型年金共済」というもので、こちらも利率は大したことがありませんし、加入してからしばらくは中途解約時の返戻金が払込保険料を下回ってします。

しかし控除を受けるための「税制適格特約」がついていて、年間8万円ピッタリの保険料にしておけば、一定以上の収入がある人にとっては途中解約の可能性は極めて低いでしょう。

年率16%の利回り、20年間で60万円以上の節税効果

斉藤さんはさっそく保障目的ではなく、節税投資目的で2つの保険に加入しました。「一般の生命保険料控除」用の保険商品は1口月5,000円でしたので、2口加入して年間12万円の保険料支払いで、「個人年金保険料控除」用の保険商品は年に1度のクレカ払いで8万円と、年間合計20万円の「投資」となります。

これによる節税効果は、高額所得者の斉藤さんの所得税率は33%で住民税は10%ですので、

所得税においては

(4万円+4万円)× 33%=2万6,400円

住民税においては

(2万8,000円+2万8,000円)× 10%=5,600円

年間合計3万2,000円です。

つまり保険商品自体の運用利率を一切考慮しなくても、年間20万円の「投資」に対しての節税額が3万2,000円ということで、年率16%の利回りということになります。しかもこの16%は節税という手取りベース換算ですので、別途配当金や利息などに課税される一般の金融商品ベースでの計算でいえば、高額所得者の斉藤さんにとっては税引き前利益が年率20%の投資商品に相当するのです。

しばらくして、加入した2つの保険証券をもって斉藤さんはFPのところを訪れてお礼をいいました。

「私はこれを退職まであと20年は続けます。もちろん年収が落ちてしまうと節税額も下がるのは理解しましたが、ミニマムリスクでハイリターン型のプチ投資、大好きです! これをきっかけに保険商品以外の本当の投資もしてみたくなりました。新NISAスタートに向けてまたアドバイスをお願いします!」

ちなみに斉藤さんのような高額所得者でなくても、たとえば年収600万円程度で所得税率が20%の会社員でも年20万円の加入で手取り2万1,600円の年間節税効果となります。さらに企業年金がない会社員の場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入して年間最大27万6,000円まで拠出することが可能です。その全額が所得控除の対象となりますので、運用益を除いた節税効果だけをみても、その投資効率は抜群に優秀なものになります。

山田 信彦

ニックFP事務所

代表

(※写真はイメージです/PIXTA)