「長瀬有花がVRChatにやってくる」という報が、先週の幕開けとなった。

 バーチャルアーティスト事務所「RIOT MUSIC」所属の長瀬有花は、区分上はバーチャルアーティストだが、”生身”での活動も頻繁に、そして遠慮なく行う特異的な存在だ。「2.5次元アーティスト」として呼称されるそのあり方は、高いアーティスト性を誇る楽曲も相まって、業界でユニークな立ち位置として確立されている。

【写真】長瀬有花がVRChatに降臨

 そんな長瀬有花が6月に開催したバーチャルライブ「長瀬有花 - コンセプトライブ『Home』」のステージが、『VRChat』のワールド「NGSYK Home」として公開された。

 このバーチャルライブは、下北沢を舞台に複数回実施されたコンセプトライブ「Form」の会場を、フォトグラメトリとして記録したステージが登場したライブになったのだが、そのフォトグラメトリを『VRChat』ワールドとして公開した形だ。

 そして、ただ公開するのみならず、このワールドに長瀬有花本人が現れるというイベントも実施された。筆者も当日張り込み、遭遇することに成功。ワールド内には40人ほどの人が駆けつけていた。

 長瀬有花は自前のアバターで現れた。無言であり、かつあまり動きのないモードでのログインだった。その状態で、ワールド内を自由気ままに動きまわり、人々はそんな彼女をワイワイと追いかける。直接のコミュニケーションはなかったものの、「存在を感じる」というゆるやかなつながりを感じられた。

 かつて、『VRChat』にはミライアカリが訪れ、彼女と出会うべく『VRChat』を始めたユーザーは少なくない。いまでも、著名なVTuberの来訪に際して、「なんとか会いたい」と意気込んでログインする人は見られる。動画や配信でしか見たことない”バーチャルな存在”と遭遇する――その独特な熱気と緊張感が、あの場に漂っていた。他の来場者の反応を見ながら、VRの世界へ行くことの醍醐味をまたひとつ再確認した次第だ。

〈「リアルVket」には4万人。”定番VRイベント”は今年も開催〉

 業界動向もいくつかまとめていく。まずは「バーチャルマーケット」のHIKKYの展開と報告だ。

 8月26日より、『VRChat』にて開催される音楽作品即売会「MusicVket 5」がスタートした。特設会場ワールドには、375サークルが一般出展され、それぞれの出展作品をその場で試聴することができる。販売リンクも設置されており、気になったらその場で購入リンクを開くこともできる即売会だ。気の合う人とともにめぐり、試聴する楽しさを味わえるイベントとして、2020年より開催されてきたイベントである。

 今回は大型の企画が多い。「TuneCore」との連動企画や、「バーチャルマーケット2023 Summer」に出展したJVCケンウッドのミニゲーム復刻、オープンライブイベント、クラブイベントとのタイアップなど、音楽を軸に様々な企画・コンテンツが目白押しだ。9月3日まで、同イベントはノンストップで開催される予定だ。

 一方、HIKKY初のリアルイベントとして開催され、大盛況となった「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」の開催レポートが発表された。注目すべきは総動員数だろう。正式発表されたスコアは、「2日間で約4万人」とのことだ。

 「バーチャルイベントのリアルイベント」というニッチなジャンルで、かつ初開催という条件で、ここまでの動員があったことになかなか驚かされる。商品の販売数も8000点を超えたとのことで、バーチャルマーケットの熱気はリアルでも通用するポテンシャルが感じられる。

 「東京ゲームショウVR(TGS VR)」は、3度目の開催を発表した。今年の会場は「天空に浮かぶゲームの国」というコンセプトとなり、中心にはメインステージも設置。様々なイベントに加え、「メタバースならではのショーパフォーマンス」も実施されるとのことだ。

 そして、今年からはスマートフォンからもアクセス可能になる。スタンダードなPCからのアクセス、没入感たっぷりのVRでのアクセスに加えて、より手軽な経路からも「TGS VR」を体験できる。これはなかなかに大きなアップデートだ。どのくらい例年通りになるかはわからないものの、毎年趣向を凝らした展示や、体験を重視した会場は、ぜひ多くの人に体験してほしいところだ。

(文=浅田カズラ)

8月28日のバーチャルニュースたち