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振付師・夏まゆみが6月に死去したことに伴い、「夏まゆみ 魂に出会う会(お別れ会)」が本日8月28日に東京・ホテルニューオータニ 芙蓉の間で行われた。

【写真】保田圭、矢口真里、市井紗耶香らお別れ会の参加者。

夏は1993年にアメリカ・ニューヨークアポロシアターに日本人初のソロダンサーとして出演。98年には長野オリンピック閉会式での振付を考案、指揮した。またダンス未経験者の多かったモーニング娘。AKB48 の“育ての親”として知られ、現在のアイドル文化に大きく貢献。モーニング娘。LOVEマシーン」は老若男女誰もが楽しめる振付も相まって大ヒット曲となった。そのほか、吉本印天然素材ジャニーズ宝塚歌劇団など、夏が携わってきたアーティストや芸能人は300組以上。延べ200万人以上にダンス指導を行ってきた。「NHK紅白歌合戦」では20年以上にわたりステージングを担当し、ジャンルを越えたアーティスト同士のコラボを演出した。

今年3月には数々の教え子を成長させてきた“72の言葉”を収録した著書「人はいつでも、誰だって『エース』になれる!心とからだが輝く72の言葉」が刊行され、指導者経験の集大成となる言葉を直接伝える出版パーティがホテルニューオータニ 芙蓉の間で計画されていたが、夏は開催前に帰らぬ人とに。本日のお別れ会には夏の言葉に育てられ、今もその言葉を胸に生きる教え子、関係者がおよそ400名参加。夏に向けて「魂の会話(語りかけ)」を行った。

ライブステージの床に貼られるナンバリングは、夏がいち早く日本に導入したものだという。このナンバリングが「魂に出会う会」の会場にも施された。元モーニング娘。のOGメンバーからは飯田圭織保田圭矢口真里が参加し、大きなスクリーンに映し出された夏の写真に向けて言葉を紡いでいく。モー娘。のオリジナルメンバーである飯田は「何も知らない、北海道の田舎から出てきた私をイチからご指導していただき……あきらめずに心と心を通わせ、飯田圭織の魅力を引き出してくださり、そしてダンスも何もできなかったモーニング娘。を初期メンバーとして育ててくださって。(モー娘。が)25年も続いてるのは、心を込めて愛情豊かにご指導いただけたからだと思っています」と嗚咽し、「『個性がバラバラで意志が強い、まとまりのない君たちをまとめ上げるのはとっても大変』だと、『(指導できるのは)世界中探しても私しかおらへんで』と言ってくださって……こんな大変な私たちをいつも愛情を込めてご指導いただき、愛してくださり、たくさんの作品を作り出し、たくさんの皆さんに感激してもらったあの時間、一生忘れません」と力強く語った。

保田も頬を涙で濡らし、「寝っ転がって、脚を上げるだけの腹筋をみんなでしたことがあって。でも、当時の私は根性がなくて、先生が『止め』と言う前に脚を下ろしてしまったことがありました。そのときに『なんで自分であきらめるんだ。なんで自分と戦わないんだ』と、自分と戦うということをまず最初に教えていただきました」とデビュー当時を回想。「モーニング娘。を卒業して、1人で活動するようになってからも、夏先生が私の舞台に足を運んでくださる機会があり、初めて先生からお手紙をいただきました。そこには『保田』と呼んでいた私のことを『圭ちゃん』と書いてくれていて、ステージを観たお褒めの言葉が書いてありました。普段は厳しくて、お褒めの言葉をいただく機会はなかなかなかったのですが、そのお手紙が本当に本当にうれしくて、今も私の宝物ボックスの中に大切にしまってあります」と夏とのエピソードを噛み締めるようにして振り返った。

矢口は「もう一度お会いして、抱き締めてほしいです」と感情をあふれさせながら涙し、「夏先生はとても怖くて厳しい先生でしたから、プライベートでお誘いすることは、私みたいな者が誘ったらいけないと思ってできませんでしたが、今思うと、先生としてではなく、育ての親として一緒にごはんに行ったり、プライベートなお話をたくさんしたかったです」と嘆く。そして「夏先生の遺してくれた熱い思いと人を幸せにするダンスは、これからも後輩たちとOGで大切につないでいきたいと思います。お暇があれば見守っていてください。手を抜いている子がいたら怒ってやってください」と呼びかけた。

続いては、夏と40年来の付き合いだったパパイヤ鈴木が「これからも日本のエンタメ業界を見守っててください。みんながんばってるからね。あと最後に、もしこれから先、僕が振付で悩んでいたらこっそり助けてね。よろしくお願いします。じゃ、待たね」と親しげに言葉をかける。AKB48の初期メンバーである大島麻衣はしたためてきた手紙を取り出し、「何もかもが初めてだった私に、ダンスはもちろん、ステージに立つときの心得やアイドルとしてのすべてを丁寧に、そして厳しくも愛のある言葉で教えてたくさん教えていただきました。『ステージに1人で立っていると思うな。あなたたちがステージに立つために準備をしてくれている縁の下の力持ちがたくさんいること、時間を割いて観に来てくれている、応援してくれているファンの方たちがいること、そしてがんばっている姿を見てくれている人は絶対にいるからあきらめずに努力をすること』、夏先生からいただいたメールは鍵を付けて大切に保管していて、今でも自信がなくなったとき、がんばらなくてはならないとき、ガラケーを取り出して見返しています。『いつも感謝。冷静に、丁寧に、正確に』夏先生にいただいたこの言葉をモットーに生きています」とメッセージを読み上げた。

保田、矢口と同じく、モー娘。2期メンバーである市井紗耶香も語りかけを行い、「夏先生からいただいた1つひとつが、25年経った今もこの体の中に染み込んで、決して消えません。表現をする楽しさを教えてくださり、ありがとうございます」と感謝の思いを口に。モー娘。卒業後も夏に振付を依頼したことを振り返ると、「ダンスは必ず夏先生にお願いしたいと思い、勇気を振り絞ってお手紙を書かせていただきました。そこからまた始まる、夏先生とのかけがえのない時間。あの時間があったから、私はまた舞台に立つ喜びと25年の思いを噛み締めることができています」と言葉を続けた。なお、ほかにもモー娘。OGの石黒彩福田明日香熊井友理奈Berryz工房)、矢島舞美(ex. ℃-ute)らがお別れ会に姿を見せた。

さらにモーニング娘。'23もお別れ会に参加し、メンバーを代表して石田亜佑美マイクの前へ。石田は「先生と私石田は、2011年のオーディションで初めて出会いました。そのとき、人よりも踊れるかなと慢心していた私に、『モーニング娘。になったらもっと広い世界を見ることになる。あなたはまだまだ全然だ』って、私の鼻を折ってくださいましたね。そのときから、もっとうまくなれる、もっと表現できるって自分を試し続けて。2022年に先生が審査員を務められたダンスの番組に出演させていただいたとき、私のダンスをひさしぶりに見て褒めてくださいましたね。『見ていてワクワクした』と一番うれしい言葉をくださいました。モーニング娘。として歩んできた道が間違ってなかったんだと、すごくうれしかったです。これからも限界はないんだと、ブレイクスルーするモーニング娘。をつないでいきますので、どうか見守っていてください」と決意を伝えた。

また、お別れ会では夏がかつてバックダンサーを務めていた中山美穂からの手紙が代読される場面も。今年3月にテレビ番組を通じてひさびさに夏と再会した中山は、「病気のことを誰にも告げなかったと聞いて、なっちゃんらしいなと。もちろん、一番悔しいのはなっちゃんだよね。その悔しさを受け止めて、払拭して活躍してくれる人、アーティストがたくさんいると思います。もちろん私もそうです。一緒にステージに立っていたときはいつも私を支えてくれて、守ってくれて、本当に心強かったです。強くて、優しくて、カッコよくて、明るいなっちゃん。これからも、ずっと私の胸の中でなっちゃんは笑っています」というメッセージを手紙にしたためた。

お別れ会のあとには山本リンダがマスコミの囲み取材に応じ、「初めてお仕事でご一緒したのはNHKの歌番組で。振付をしてくださって、ダンサーさんと一緒に踊ってくださって、それから何回かお仕事をご一緒させていただきました。お会いするといつもさわやかで、情熱があって、愛情の深い方でした」と夏との思い出や印象を語った。

「夏まゆみ 魂に出会う会(お別れ会)」の様子。