山本千尋が主演を務める深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」の9作品目の『埼玉のホスト』(毎週火曜深夜1:00-1:30、TBS※一部地域をのぞく)が現在放送中。テンポの良さもさることながら、個性豊かなキャストたちの中から“推し”を見つけて楽しむ視聴者が、回を重ねるごとに増えている。このたび、WEBザテレビジョンでは本作のプロデューサーを務める杉田彩佳氏にインタビューを実施。原作のないオリジナル作品である「埼玉のホスト」の誕生秘話や、出演者のキャスティング理由、そして本編では泣く泣くカットした撮影エピソードなどについてたっぷりと語ってもらった。

【写真】印象ガラリ…堂々とラップを披露する福本大晴“キセキ”

■“埼玉”が舞台のラブストーリー&青春コメディー

同作は“何もかも中途半端な埼玉のホストたち”と、“ある秘密を持つ歌舞伎町トップホスト”、そして“男だけでなく人間全般を信用しない女”が目標のために時にぶつかりあい、時に励まし合う、新しいラブストーリー&青春コメディー。

ゆりか(山本)がホストにスカウトした岩槻キセキ役を福本大晴(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)、歌舞伎町No.1ホスト・赤坂ゲンジ役を楽駆が演じる他、木村了、中沢元紀、田中洸希、濱尾ノリタカ、守谷日和、中山咲月らが出演する。

■ドラマの誕生秘話を告白「実はもっと泥臭い話だったんです」

――本作は原作のないオリジナル作品ですが、誕生までの経緯を教えてください。

私の地元が埼玉なので、地元を舞台にしたドラマを作りたいなと考えていたんです。ですが、企画を出す時に「埼玉を舞台にする」だけだと、やはりエッセンスが足りず、ストーリーが展開しないなと思いまして。

そこで、東京じゃなく埼玉で働くホストクラブの話にしたら面白いかもしれないと思い、「埼玉のホスト」を企画しました。

――ホストクラブの話となると男性が主人公になりがちだと思うのですが、なぜゆりかを主人公にしたのでしょうか?

実は最初に(企画書を)書いたときは、全く女の子は登場せず、埼玉でホストをしている男の子たちの泥臭い話だったんです。

ですが、男の子たちの背中を押してくれる存在が誰かいないといけないなと思って。それは、ホストクラブのお客さんのようなかわいらしい女の子じゃなく、むしろホストクラブに対してネガティブな印象を持っている冷徹な女の子がいいなと。

その子がホストたちの背中を押してあげるストーリーであれば、これまでのホストの物語とは少し違うものになるかなと思い、女の子を主役にしてみました。

■山本千尋の引き出しの多さに脱帽「想像の何倍も面白い」

――主人公のゆりかを演じる山本さんは今作でコミカルな演技も披露されていますが、アクションのイメージが強い山本さんをキャスティングした理由を教えてください。

Netflixオリジナルドラマ「今際の国のアリス」シーズン2や大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(2022年、NHK総合ほか)を見ていたので、私も山本さんに対してアクション女優というイメージが強かったんです。

私自身、アクション女優の方に、少しだけ近寄りがたいイメージがあったのですが、逆にそういう方がコメディーな演技をやったらどんな風に笑わせてくれるんだろうという興味からキャスティングさせていただきました

そして、山本さんを選んだもう一つの理由としては、目と、声と、佇まいが、すごくきれいだったからです。普通、「敏腕なコンサルタント」と聞くと、単純に冷たい人を想像すると思うのですが、山本さんは凛としてる印象があって。そういった部分が視聴者の方の目を引くんじゃないかなと思い、キャスティングしました。

――そんな新しい役どころを、山本さんご自身も“新境地”と表現されていらっしゃいましたが、コメディー要素のある芝居の際には山本さんから相談があるのでしょうか?

撮影の前に軽いリハーサルをするのですが、そこで山本さんからの相談はほとんどなくて。もちろん台本に対しての相談はあったのですが、演じる上でこうした方がいいのかという悩みは全く聞いていない状態でいざ段取りでやると、想像の何倍も面白いものが返ってくるんです(笑)。

ご本人はすごく真面目な方なので、そんな山本さんが全力で面白いことをしているから「これは笑っちゃいけない!」と思って。撮影中、何回も自分のお腹叩いて「笑うな笑うな」と、こらえていたのですが、「もう1回」とお願いをすると、今度は違うパターンの笑いを見せてくれて。すごく面白い方だなと思いましたし、驚きました。

■きっかけは『ラヴィット!』ロケ「興味が沸いてきた」

――そんな山本さんが「ヒロイン」と表現していた福本大晴さんのキャスティング理由も教えてください。

福本さんは、朝の情報番組「ラヴィット!」(毎週月曜~金曜朝8:00-9:55、TBS系)を見ていたら、「アルコ&ピースのオフロシュラン」に出演されていて。そのときは「怖いもの知らずな人だな」という第一印象だったんです。

それに一発ギャグを披露されていたので「根が面白い人なのかも」と思ったのですが、この人が植物としか話せない役を演じたらどんな風になるのかなと興味が沸いてきて。

何より、この物語の中でキセキは愛されなきゃいけない存在だったので、しっかりとみんなから愛されるように演じてくれるかもしれないという期待も込めて、キャスティングしました。

――回を重ねるごとにキセキの魅力が出てきている印象があります。

実は、台本の中にキセキのせりふってあまり書いていなくて。人の目を見て話せないという設定なので、「…」と書かれている部分が多いんです。

ですが、福本さんは台本を読んでどう表現したらいいかということをすぐインプットして、そして自分のものにして見せていくという過程が抜きん出て力がついている人なんだなと思いました。

それはきっとお芝居に対して忠実で真面目じゃないとできないですし、お芝居が好きだからこそできたのかなと。やっぱりこの役を福本さんにお願いしてよかったなと思います。

■重要なのは「登場人物を愛せるか愛せないか」

――楽駆さん演じるゲンジはミステリアスなオーラがあります。

元々楽駆さんの出演している映画やドラマをいくつも見ていたので、いつかご一緒したいなというのはずっと思っていました。そんな中で、ゲンジという役ができた時に、パッと思いついたのが楽駆さんだったんです。

例えば、楽駆さんが1シーンしか出ていないドラマだとしても、「この人誰だろう」と目を引くと思うんです。楽駆さんがゲンジを演じてくれたら、きっとオーラのあるものにしてくれるかなと思い、キャスティングしました。

――個性豊かなキャストが集まる撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

“ザ・部活”という感じでした。お互いのいいところも、悪いところもちゃんと言い合って、そして直していくということができていたと思います。そしてスタッフも、キャストの空気に何度も背中を押してもらいました。

これは私の持論なのですが、仲が良すぎるとメリハリがつかなくなると考えていて。メリハリがつかなくなると、その空気は画に出てしまうと思うんです。だけど今回の、年齢や芸歴は関係なく、思ったことを言い合う撮影現場の空気には、何度も助けられました。みんなの熱意を感じ取ることができて、とてもありがたかったです。

――「埼玉のホスト」を作る上で一番大切にしていることを教えてください。

登場人物のキャラクター設定です。協力プロデューサーとして入っていただいた、大先輩の磯山(晶)さん、そして脚本の伊吹(一)さんと何度も話し合って、登場人物が愛せるか愛せないかに重点を置いて台本を作りましたし、それをしっかりと受け取って演じてくれたキャストの皆さんにも感謝しています。

――原作がないからこそ、キャラクター作りというはかなり重要になってきますよね。

そうなんです! それでいうと、実は福本さんがキセキの裏設定を考えて来てくれたんです。家族構成や、学歴とか細かい部分まで。こういうことが好きで、こういうことは苦手で、こういうことがあったから植物としか話せなくて、というのを自分なりに作ってきて「すごい!」と思いました。

もちろん私たちでも作るのですが、それを渡してしまうと設定通りに演じてしまうかなと思い、私はあまり考えた裏設定を見せないようにしてるんです。

ですが、福本さんはクランクインをした次の日ぐらいにご自身で考えてた裏設定を教えてくれて、さらに福本さんが考えてきたものと、私たちが作っていたものがほとんど合っていたんです。今まで、こんなに細かい役作りをしている人は見たことなかったので、驚かされました。

■「皆さんの推しを見つけて応援していただきたい」

――印象に残っている撮影の裏話があれば教えてください。

終盤に登場するシーンの撮影中、設定上全くそんなシーンではないのですが、キセキが突然言葉を詰まらせていて。ふと見てみたら、キセキがすごく泣いていて。それで、「えっ!泣いてる!」と思い、パッとゆりかを見たらゆりかも泣いていて。

なんで泣いているのか理由を聞いたら、福本さんいわく、今までのストーリーもそうですが、「エーイチ」のみんなを思い出したら泣けてきたっておっしゃっていて。ゆりかもそれにもらい泣きしてしまったらしいんです。

それを見たら私もなぜか泣いてしまいました(笑)。そこまで熱量を持ってやってくれていたんだという感謝で泣いてしまったのですが、そのシーンは泣く場面じゃなかったので「すみません、このシーン、泣くシーンじゃないんです」と心を鬼にして言いましたね(笑)。申し訳ない気持ちです。

――では、ゆりかとキセキが思わず涙を流したカットは、本編では使われていないのですね?

そうですね、カットしています。ですが、私ももらい泣きしてしまうなんて、あの時のあの気持ちはもう二度と味わえないだろうなと思い、印象に残っています。

――いよいよ第5話の放送となりますが、後半戦に向けて見どころを教えてください。

現段階だと、まだいろんな謎が残っていると思います。例えば、ゆりかに依頼した人は誰なのか、キセキとゆりかの関係や、「エーイチ」はどうなるのか。ゲンジの秘密とは…などなどたくさんの謎がどんどん明るみになっていくので、そういった部分を楽しみに見ていただきたいなと思ってます。

あとは、ぜひ皆さんの推しを見つけて、応援していただきたいです。後半戦になるにつれて、みんながより一層輝いていくので、楽しむ要素の一つにしていただければと思います!

“埼玉”が舞台のドラマストリーム「埼玉のホスト」の杉田プロデューサーにインタビュー!/ (C)『埼玉のホスト』製作委員会