夏の甲子園では慶応が107年ぶりの優勝を成し遂げた(C)CoCoKARAnext

 フィーバーはまだまだ終わりません。

 第105回全国高校野球記念大会で107年ぶりの優勝を成し遂げた慶応です。森林貴彦監督の提唱する「考える野球」のもと、サラサラヘアでいつも笑顔、上下関係もない「エンジョイ・ベースボール」を貫いたナインには「高校野球の新時代の幕が開いた」と称賛の声が相次いでいます。

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 ならば髪型を自由化し、上下関係を取り除き、みんな笑顔で野球をやれば、甲子園で優勝できるのか。

 答えは「否」でしょう。

 慶応関係者は言います。

「今回のメンバーのほとんどが、中学時代にボーイズ、シニアといった硬式野球界で名を馳せ、強豪校が勧誘に動いた選手。中でも2年生エースの小宅雅己投手、同じく2年生主砲の加藤右悟選手は彼らが中学3年生の時、バッテリーとして春のボーイズリーグ日本一に輝いた逸材です。有望株が慶応の環境にマッチしてさらに能力を高め、今回の栄冠を勝ち取ったと考えるのが自然でしょう」

 慶応といえば大学は私学最難関。かつては作新学院・江川卓や最近では中京大中京高橋宏斗といった世代NO1投手が受験しながらも、不合格になったことでも知られています。

「古い教授は講義の中で『江川でもボーダーラインを超えなきゃ落ちるのが、ウチのアカデミズムのプライド』と話していました。高橋投手は慶応に不合格となったのと同時にプロ志望届を提出。ドラフト1位指名で中日入りし、今春のWBCにも出場しました」(前述の慶応関係者)

 野球の腕に自信のある選手が一番、慶応に入りやすいのが高校の推薦入試と言われています。全国大会でめざましい実績があり、中学の内申点が45のうち38以上あること、そして作文と面接で合否が決まります。

「中学の有望選手でまあまあ勉強ができて、頭も切れれば十分に合格のチャンスがあります。でもここだけの話、トップクラスの有望選手は強豪私学から誘いがあればほぼ合格になる。特待生として入学費、授業料が免除などの特典がある例も多いです。一方、慶応はどんなに上手い子でも普通に落ちます。『不合格覚悟』でも頑張って受験できるか。今の慶応の選手たちはそんな『難関』を突破した者同士なんです」(前述の慶応関係者)

 関東の強豪私学関係者は匿名を条件に実情を明かします。

「上手い選手は中1の頃から大会を見て、チームの監督さんとコミュニケーションを密にして、『争奪戦』に備えていきます。でも慶応さんが動いちゃうと、こっちも必死に熱意をアピールするけれど、正直お手上げです(苦笑)。親御さんにとっては『慶大に100%進学できる』は最高のメリットですからね」

 こうして入学した頭脳も明晰な有望選手が自由な雰囲気の中、ハイレベルな切磋琢磨を経て、頂点に辿り着いた-。

 ただ「エンジョイ」しているだけじゃない。他の強豪私学には太刀打ちできない「慶応ブランド」の魔力が、今回の優勝の根底にはあるといえるでしょう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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