借金や利息について調べていると「利息制限法」という言葉を耳にすることがあります。一体どのような法律で、借金や利息にどのような影響があるものなのでしょうか。本稿では、岡山県司法書士会の立山慶之司法書士監修のもと、利息制限法の概要や直近の改正点、利息の計算方法などについてわかりやすく解説します。

利息制限法とは

貸し付けの際の金利上限を定めた法律

利息制限法とは、貸し付けする際の金利上限を定めた法律をさします。わかりやすくいうと、お金の貸し借りにおいて高額な利息が発生しないように、利率の限度額を定めた法律のことです。

また、利息制限法はお金を貸す側よりも社会的に弱い立場となりやすい借りる側を保護する目的で定められた法律であるともいえます。

例えば、ある期日までにどうしてもお金を準備しなければならないという場合、お金を借りる側は切羽詰まった状況になりがちです。そうした状況において、もし貸し付けする側が高額な利息や厳しい取り立て条件などを設定したとしても、受け入れざるを得なくなってしまいます。

こうした状況から借金をする側を守るための法律の1つが「利息制限法」なのです。

利息制限法で定められている金利上限とは?

利息制限法で定められている金利の具体的な上限は以下の通りです。金利の上限は借り入れた元本によってそれぞれ異なります。

• 借入額10万円未満:年利20%

• 借入額10~100万円未満:年利18%

• 借入額100万円以上:年利15%

(利息制限法第1条)

例えば、10万円借りた場合の金利上限は年利18%となり、100万円を借りた場合の金利上限は年利15%となります。そのため、もし10万円借りた際に年利20%の利息を請求されたとしても、18%を超えた2%分は無効となり、返済の必要はありません。

また、返済が遅れた場合に発生する遅延損害金についても、法律によって以下のように上限が設けられています。

• 遅延損害金:上限金利の46倍(利息制限法4条)

• 貸金業者に対する遅延損害金:年利20%(利息制限法7条)

例えば、10万円借りた場合の損害遅延金の上限は上限年利18%の1.46倍にあたる26.28%ですが、貸金業者に対して遅延損害金が発生した場合の上限は年利20%となるのです。

債務整理に関わりのある法律

上記の通り、利息制限法は高額な利息の発生を防ぎ、債務者を守るための法律であることがわかります。もし違法と知らずに請求されるまま支払った借金がある場合には、法律に基づいて超過分の返還請求が可能です。

また、利息制限法は過払い金請求や債務整理にも深く関わる法律ですが、2006年に改正されたことをご存じでしょうか。

どのような点が改正されたのか、改正前と改正後での違いなどについて、以下で更に詳しく見ていきましょう。

利息制限法の改正点は?

法改正の概要

利息制限法は2006年に改正が行われ、2010年より施行されています。法改正が行われた背景には、貸金業者による貸付市場が拡大する一方で、高金利での貸し付けや返済能力を上回る貸し付けの横行などが挙げられます。

商品購入や収入減少といった目的でなく、借金返済自体が目的の借り入れへと変化することを防ぎ、債務者が多重債務に陥るリスクを軽減する目的などから利息制限法をはじめとする、借金に影響のある法律の改正が行われることとなりました。

2006年の法改正では

グレーゾーン金利の撤廃

• 損害遅延金の上限金利引き下げ

• 過剰な貸し付けや多重債務の抑制

• 貸金業の適正化、ヤミ金融への罰則強化

などが重要なポイントとなっています。

法改正による影響は?

利息制限法を含む法改正のポイントをいくつかピックアップして、その影響についても見ていきましょう。

グレーゾーン金利の撤廃

改正前の上限金利と改正後の上限金利は実は同じで、利息制限法上での上限金利に変更はありません。

しかし、改正前は上限金利を超える利息を提示され、金利について承知して支払った場合は無効にできないという「グレーゾーン金利」がありました。

グレーゾーン金利は、上限金利を定めた別の法律である「出資法」が関わってきます。改正前の出資法では、上限金利が年利29.6%と定められていましたが、改正後は利息制限法と同じ20%まで引き下げられたのです。

出資法改正に加えて、利息制限法で定められた15~20%の上限金利との差異について、改正後は超過分を無効とすることができるようになりました。

改正前

• 利息制限法の上限金利は15~20%

• 出資法の上限金利は6%

グレーゾーン金利があった

• 一定条件下で上限を超える金利を支払った場合は無効にできない

改正後

• 利息制限法の上限金利は変わらず

• 出資法の上限金利を20%に引き下げ

• 20%を超えるグレーゾーン金利は事実上撤廃、超過した場合は刑事罰対象

• 15~20%の間にかかるグレーゾーン金利は超過分があれば無効、行政処分対象となる

遅延損害金の上限金利引き下げ

遅延損害金の上限金利に関する改正前後のポイントは以下の通りです。

改正前

• 遅延損害金の上限金利は元本にかかる上限金利の46倍まで

改正後

• 貸金業者の場合、上限金利は年利20%まで

なお、住宅ローンなど一部上限が14.6%となるものもあります。また、契約時に遅延損害金について特に定めていない場合は民法の規定により3%(改正前は5%)が上限となります。

過剰貸付、多重債務の抑制

過剰貸付や多重債務の抑制に関する法改正として「総量規制の導入」や「指定信用情報機関制度」などが新たに設けられました。

総量規制とは、個人に対して年収の3分の1を超える額の貸し付けを原則として行わないとする規制のことです。

100万円を超える借り入れをする際には、源泉徴収票などの収入を証明する書類の添付が義務付けられ、貸金業者が過去の個人の信用情報を共有できる、指定信用情報機関を設けることで、返済困難な額の借り入れや多重債務を抑制できるようになっています。

前章で解説した通り、債務整理に影響のある上限金利の引き下げについても、利息制限法改正によって施行されたものの1つです。

貸金業の適正化、ヤミ金融への罰則強化

貸金業法の改正により、純資産額の引き上げや貸金業務取扱主任者の配置の義務付け、契約書面の厳格化など、貸金業への参入や営業行為への規制も強化され、より適正な業務を行うように改正されています。

また、無登録営業や違法な高利での貸し付けを行うヤミ金融に対しては罰則を強化し、10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられるようになりました。

利息制限法以外にもある! 借金に関わる法律

借り入れに対する利息について定めた法律は、利息制限法以外にもあります。上記で説明した法改正には「利息制限法」「出資法」「貸金業法」の改正内容が含まれています。この3つの法律は「貸金三法」と呼ばれており、債務整理などを検討する上で必ず知っておくべき法律です。それぞれの法律におけるポイントは以下の通りです。

• 利息制限法:お金の貸し借りにおける利息を制限し、上限を超えた利息を無効と定めた法律

• 出資法:上限金利を超えた利息を徴収した場合の罰則を定めた法律

• 貸金業法:貸金業を営む際、契約や取引に関する規制を定めた法律

グレーゾーン金利の撤廃や上限金利の引き下げなども、1つの法改正だけでなく複数の法改正を同時に施行することによって実現しています。貸金三法で定めていた利息に関する矛盾などが、2006年の法改正によって解消した形です。

また、2006年の法改正では、遅延損害金の利率について定めた民法419条など、借金に関わる民法の改正も行われています。

利息制限法で罰則を設けていない行為でも、出資法や貸金業法に抵触していれば罰則の対象となります。借り入れをする債務者は、一部の民法と貸金三法によって多重債務や高利の貸し付けから守られているといえるでしょう。

【具体例】利息制限法改正で利息の計算はどう変わる?

利息制限法を含む法改正によって、利息の計算はどのように変わったのでしょうか。いくつかの具体例を見ながら、改正後の利息について確認してみましょう。

利息の計算方法

まずは、利息を計算する基本の方法について解説します。利息の計算は

借入額×利率

で求めることが可能です。

例えば、10万円を1年間借りた場合、10万円の上限金利は年利18%のため、1年間にかかる利息の上限は18,000円となります。利息を日割りで出す場合は、18,000円を365日で割って1日あたりの利息を計算し、そこに借入期日をかけて算出するのが基本です。

この例の場合、もし1年間で18,000円を超える利息がかかった場合は、利息制限法の定めにしたがって無効とすることができます。

10万円を1年間借りて3万円の利息を徴収された場合、18,000円を超える12,000円は無効として返還請求が可能です。

利息ではなく「取引手数料」といった名目であった場合も上限金利に含まれるため、手数料も合算して上限を超えた分は無効となります。

利息の引き直し計算とは

利息の基本の計算方法とは別に「引き直し計算」についても解説します。

利息の引き直し計算とは、法改正によって上限年利が引き下げられたことにより、現在の金利で再計算することをさします。引き直し計算で上限を超えて払い過ぎた利息がある場合、消費者金融やクレジット会社などへ返還請求を行うことで、払い過ぎた利息を取り戻すことが可能です。

この手続きは「過払い金請求」と呼ばれています。

引き直し計算の具体例

利息の引き直しが発生すると思われる事例と計算方法について、具体例を参考に見ていきましょう。

例1:年利29%で150万円を借り入れていた場合

1日当たりの利息は

150万×29%÷365日=1,191円(端数切捨て)

1ヵ月30日とした場合のひと月あたりの利息は

1,191円×30日=35,730円

となります。

次に、150万円の利息を現在の上限金利で計算します。法改正により、150万円の上限金利は現在15%となっているため、1日あたりの利息は

150万円×15%÷365日=616円

1ヵ月辺りの利息は

616円×30日=18,480円

となります。

実際には毎月利息と元金も返済するため、毎月の元金合計に応じて引き直し計算を行い、完済した期間までの合計を計算します。現行の上限金利で完済を迎えた期間を超えて支払っていた場合、その期間以降の返済を無効として、過払い金請求をすることができるのです。

引き直し計算をする際の注意点として「初期に返済した額は元金返済に繰り入れられる」ことが挙げられます。

例えば、150万円を29%の金利で返済した場合の1ヵ月あたりの利息は35,730円、15%の現行金利では1ヵ月あたりの利息は18,480円です。

この差額は

35,730円−18,480円=17,250円

となりますが、この17,250円は元金の返済に充てられ、翌月は新たな元金で再計算します。

毎月5万円ずつ返済した場合、引き直し計算では

1回目

29%の場合:利息35,730円 元金返済(50,000−35,730)14,270円 元金残1,485,730円

15%の場合:利息18,480円 元金返済(50,000−18,480)31,520円 元金残1,468,480円

2回目

(引き直し前:利息35,413円 元金返済14,587 元金残1,471,143円)

引き直し後:利息(1,468,480×29%)=35,002円 元金返済14,998円 元金残1,453,482円

15%の場合:利息18,104円 元金返済31,896円 元金残1,436,584円

差額:1,453,482−1,436,584=16,898円

この16,898円が新たに元金返済分として繰り入れられ、3回目の引き直し計算が行われるという流れになります。

借り入れが1種類ではなく、別の利率で複数借り入れていた場合や返済額に変動がある場合、延滞していて遅延損害金が発生していた場合には、その分の計算も必要となるため、実際の計算はもう少し複雑となります。

正確な過払い額を知るには専用の計算ソフトを使用する方法もありますが、専門家へ相談するのがおすすめです。

いずれにしても、引き直し計算の基本方法を知ることで、自身の過去の借り入れで過払い金が発生していないかを見る一定の目安となるでしょう。

過払い金請求の判断に迷った場合の対処法は?

借金を返済した過去があっても、自分の場合が過払い金請求にあたるかどうか判断するのは難しい場合もあるでしょう。

ここでは、過払い金請求の判断に迷った場合の対処法について解説します。

過払い金請求の対象となるケース

過払い金請求の対象となるポイントには、以下の2点が挙げられます。

• カード会社や消費者金融などから2008年よりも前に借り入れをした

• 完済後10年を過ぎていない

まず、利息制限法の法改正が施行される以前の契約でしか過払い金は発生しません。法改正後に上限金利を超えた利息を設定すると、刑事罰や行政処分の対象となるからです。

また、上限金利を超えた利息を支払い、完済してから10年以内である点も重要です。完済後10年以上が経過している場合は時効が成立するため、過払い利息を請求できなくなってしまいます。これは「消滅時効」と呼ばれるもので、10年が経過することで「過払い金の返還を請求する権利」が消滅することを意味します。

2008年6月よりも前の契約となると、2023年6月時点で約16年が経過しているため「昔の借金だから時効なのでは」と考えがちです。

しかし、時効の起算日は「最終取引日」となる点も重要です。

完済から10年以上経過しても過払い金請求できるケースがある

完済後すぐに新たな借り入れを行った場合、連続した取引とみなされる可能性があります。1度目の借り入れを完済して10年以上が経過していても、すぐに行った次の借り入れの返済が終わった日から10年以内であれば、合算して過払い金の請求ができる場合もあるのです。

完済してから1年後に再び借り入れを行った場合は個別の取引とみなされる場合もありますが、諦めずに専門家へ相談し、確認してみるとよいでしょう。

過払い金請求の対象とならないケース

上記の2点に該当する場合でも、以下のようなケースでは過払い金請求の対象とならない可能性があります。

銀行や公的機関からの貸し付け

法改正が施行される2010年より前の借り入れであっても、住宅ローンや自動車ローン、メガバンクなどの大手銀行や日本政策金融公庫、奨学金などの各種貸し付けについては、そもそも上限金利を上回ることがない数パーセントや1パーセント以下程度に低く設定されているため、過払い請求の対象とはならないと考えてよいでしょう。

みなし弁済

みなし弁済とは、旧貸金業規制法にあった制度の1つで、上限金利を超えた利息を受領していても、貸金業者が一定要件を満たしていれば有効となってしまう制度です。

みなし弁済が有効となる要件としては、以下が挙げられます(順不同)。

1. 貸金業登録されている貸金業者である

2. 貸し付けをする際に,貸金業規制法17条で定めた要件を満たした書面を債務者へ交付している

3. 返済を受け取った際に,貸金業規制法18条で定めた要件を満たした書面をただちに債務者へ交付している

4. 債務者が「利息の支払いである」と認識して契約に定めた利息を支払っている

5. 債務者の任意で契約に定めた利息を支払っている

みなし弁済は現在では撤廃されており、新たな契約でみなし弁済のリスクを考える必要はありません。また、過去の裁判事例からも、よほどのことがない限り、みなし弁済が適用されるケースは少ないと考えてよいでしょう。

しかし、貸金業者の中には過払い金請求を行った際にみなし弁済を持ち出してきて、上限金利を超えた利息であっても有効であると主張される場合があるので注意が必要です。

ケースによっては、みなし弁済が認められる可能性もゼロではないため、不安な場合は専門家へ相談するようにしましょう。

カードのショッピング利用

カード会社に対しても、要件を満たしていれば過払い金請求をすることが可能です。

しかし、ショッピング利用分については過払い金請求の対象とはなりません。過払い請求ができるのはキャッシングなど、現金を借り入れた場合に限られます。過去にショッピングリボルビング払いや分割払いなどで高額な手数料を払っていても、過払い利息と認められない点は注意しましょう。

また、キャッシングで過払いが認められる場合でも、同じカード会社でショッピング利用をしている場合、過払い金はショッピング利用した金額と相殺されることも覚えておくとよいでしょう。

例えば、過去のキャッシング返済で5万円の過払い金が判明した場合、もし3万円のショッピング利用があれば相殺され、残りの2万円のみ返還を受けることが可能となります。

過払い金請求以外にもある! 借金を大幅に減額できる債務整理とは?

過払い金請求以外にも、借金を大幅に減免できる債務整理には以下のようなものがあります。

任意整理:複数の借入先と交渉して行う債務整理です。利息の減免や月々の支払い額変更、返済期間の延長などについて、裁判所を通さず交渉します。

個人再生:返済意思がある場合に、借金の総額を最大5分の1まで減額し、3年間で完済する方法です。裁判所を通して申請し、一部財産を残したまま債務整理することが可能です。

自己破産:借金返済が困難な場合に、裁判所を通して借金を全額免除してもらう方法です。借金の支払いが免除される代わりに、持ち家などの財産は失うこととなります。

「過払い金請求の対象ではないが返済が苦しい」「持ち家を失わずに返済を軽くしたい」といった場合には、過払い金請求以外の債務整理が選択できる可能性もあるのです。

債務整理で迷ったら専門家へ相談を

自身の借金が過払い金請求に該当するかわからない場合はもちろん、該当しない場合でも債務整理が検討できる場合があるため、借金返済で迷ったらまずは専門家へ相談してみましょう。

立山 慶之

岡山県司法書士会

司法書士

画像:PIXTA