賃貸マンションを経営する際の「管理会社選び」は非常に重要です。物件のスペックは悪くないのに入居が付かない、管理会社からの家賃の振り込みが遅い、管理物件の報告や連絡がない場合などは、賃貸管理会社の職務怠慢が疑われます。管理会社のためにマンション経営が不振となることを防ぐため、管理会社を選ぶ際のポイントを5つに絞って解説します。

マンション大家の仕事内容

そもそも、マンションの大家さんになったらどういった仕事があるのかを4つの項目で解説します。

1.物件の選定から売却

購入する投資用マンション物件を選ぶのも、それを売却するのも、判断するのは大家さん自身です。不動産会社をパートナーとしている大家さんは多いと思いますが、不動産会社はあくまでも参謀のような存在です。提案された物件の購入、所有している物件の売却を決断するのは大家さん自身でなければなりません。

2.入居者対応

入居者からの要望を受け付けたり、入居者からの緊急連絡などに対応したりするのも所有者(大家)の役割です。日常生活に関わる要望だけでなく、突然設備が故障したり不具合が起きたりした場合にも初動対応をすることになります。

3.建物の維持・管理

所有している物件の維持管理やメンテナンスも、大家業に含まれます。一棟物件といってマンションやアパートを一棟丸ごと所有している大家さんの場合は、その建物の維持管理を自ら行います。建物は時間の経過とともに外部だけでなく内部も劣化していくので、必要に応じて部品や設備を新しいものに更新し、機能や性能を維持することで資産価値の維持にもつながります。

4.収支管理や税務申告

大家業には、経営者としての側面もあります。家賃などの収入とメンテナンス、修繕などに必要な支出を計算し、収支を把握します。その収支状況に応じて経営方針を決め、最適な経営環境をつくり出せるかどうかは、大家さんの力量に関わる部分でもあります。

また、不動産投資は事業なので、収支を把握したうえで年に一度の税務申告も必要です。税務申告では経費として計上できる費用をしっかり理解しておかないと不要な税金まで納めることになるため、不動産の大家さんは税務にも精通していることが望ましいでしょう。

大家の仕事はほとんど委託できる

前項では、マンションやアパートを購入した大家さんがやるべき仕事について紹介しましたが、「そんなにあるのか」と思った方も多いのではないでしょうか。なかには建物のメンテナンスや税務など専門知識を要する業務も含まれているので、「自分には無理だ」と思ってしまった方もいるかもしれません。

しかし、ご安心ください。不動産投資に関連する仕事のほとんどは外部の専門業者に委託することができます。大家さんのなかには専業ではなく「サラリーマン大家」と呼ばれるような副業投資家もいます。そういった副業投資家にとってご紹介した大家業は負担が大きすぎるので、そもそも副業で不動産投資をすること自体に無理があります。

そこで活用したいのが、賃貸物件の管理会社です。大家さんに成り代わって大家業のほとんどを代行してくれるので、とても便利で頼もしい存在です。特にこれから不動産投資を始めたいと考えている初心者の方にとっては、ノウハウを提供してもらうという意味でも管理会社は必須です。

それでは、不動産の管理会社をどう選ぶべきなのか、管理を委託する場合に必要な費用の目安などについて解説します。

委託先を選ぶ際に注目すべき6つのポイント

委託先となる管理会社を選ぶには、いくつかのポイントを押さえておくとスムーズかつ確実です。以下の6つのポイントについて精査し、1つでも多く当てはまる管理会社を選ぶことをおすすめします。

1.入居者の募集業務(客付け)に強い

管理会社の業務は多岐にわたりますが、空室が発生した際に入居者を探す業務(客付け)に強いことはとても重要です。大家さんにとって空室は最大のリスクなので、少しでも空室期間を短くして不動産投資への影響を最小化したいところです。そこで重視したいのが、管理会社がどれだけ入居者の募集業務に力を入れているか、そしてノウハウを有しているかといった「力量」です。

2.管理戸数、入居率などの具体的なデータが公開されている

入居者の募集業務が自社の「力量」を示すものであることを、管理会社も心得ています。そこで集客のために多くの管理会社は実績などを公開していますが、そういったデータにしっかりとした裏付けがあるかどうかも精査するポイントです。「入居率95%以上」と書かれている場合、その数値がどの根拠によるものなのか、それ以外のデータも含めて詳細な情報公開をしているかは、管理会社の経営姿勢を知る上でも役立ちます。

3.緊急対応のスキームが確立している

先ほど大家業を紹介したなかで、緊急時の対応が気になった方は多いのではないでしょうか。24時間いつでも対応しなければならないのは負担が大きいですし、大家業と私生活との線引きも曖昧になってしまいます。

こうした緊急時対応こそ管理会社に任せたいところなので、管理会社に緊急時対応のスキームが確立していることは重要です。「なにかあったら対応します」というだけでは具体性がないので、どんな場合に、どんな対応をしてくれるのか明示している管理会社を選びましょう。

4.担当者の印象がよい、信頼できると感じる

大家さんと管理会社の付き合いは、長く続きます。もちろんずっと同じ担当者であるかどうかは分かりませんが、少なくとも管理会社選びをしている段階で担当者の印象は重要な判断材料です。その担当者と頻繁に連絡を取ることになることを想定して、好印象であるか、信頼に足る人物であるかもしっかり精査しましょう。

5.管理料が相場から逸脱していない

管理料の相場については次項で後述しますが、どんな商品やサービスにも相場はあります。相場から逸脱して異様に安い管理会社は、その分サービスが不十分であったりとなにかの理由があると考えたほうがよいでしょう。複数の管理会社を比較検討する場合は、それぞれの管理会社の管理料から平均値を算出してみて、そこから大幅に高い管理会社と大幅に安い管理会社は避けたほうが無難です。

~委託する場合にかかる費用の目安~

不動産投資では実質的に欠かせない存在である管理会社について、その費用相場はどれくらいなのでしょうか。

管理会社は無数にあり、管理料は一定ではないため、あくまでも一般的な相場の目安となりますが、家賃に対して5%程度です。たとえば家賃10万円の物件で管理を委託すると、管理料は5,000円前後が相場となります。

6.賃貸住宅管理業者登録をしている

賃貸住宅の管理でトラブルが多発していることを受けて、国が設けた「賃貸住宅管理登録制度」があります。賃貸住宅管理法を法的根拠として、一定の要件を満たした管理会社(業者)を登録する制度です。この制度による登録を済ませている管理会社は一定の要件を満たしていると判断できるので、誠意ある対応が期待できます。

どこまでを管理会社に任せるべきか?

管理委託した場合、委託費用もかかります。無駄な支出は極力控えようとするのがオーナーの一般的なスタンスです。実際にオーナー自身でどこまで「大家さん」として管理を行えるのか、行いたいと思うのかで判断すべきでしょう。

先ほどから述べているように、賃貸物件の管理には専門的な業務も含まれます。こうした業務に関する知識や経験がないのであれば、専門的な業務のみ管理会社に委託するのがよいでしょう。具体的には建物や物件のメンテナンスや修繕、入居者対応などです。家賃の滞納が発生しても自分で回収するのであれば、管理会社に家賃の回収業務や家賃保証を委託する必要はありません。退去が発生した際の原状回復についても、大家自身がDIYで対応できるのであれば管理会社に委託する必要はありません。

このように、どこまで管理会社に委託するかは大家さんが自由に決められる部分なので、費用を抑えたいのであれば必要な業務だけ委託するのが適切です。

初心者や副業大家さんは管理会社を活用しよう

管理会社の業務は多岐にわたり、総合的に入居者や物件の面倒を見てくれます。これから不動産投資を始める初心者や別に本業がある副業大家さんは、可能な限り管理会社に任せてしまうのが無難でしょう。

全面的に管理を委託したとしても家賃に対して5%程度で動いてくれるので、コストパフォーマンスは決して悪くないと考えられます。もちろん自分でできることは自分でやるというのも、大家さんの「力量」です。経験が増えて自分でできることがあるのであれば、自主管理にもぜひチャレンジしてみてください。

山崎 博久

リズム株式会社

アセットコンサルティング事業部長

(※写真はイメージです/PIXTA)