日本近海に「トリプル台風」が発生していることが話題になっていますが、これから台風発生のピーク時期を迎えるにあたって、台風による大規模な被害の発生が憂慮されます。そこで、備えとして入っておくべきなのが「火災保険」です。しかし、なかには、台風により想定される損害がきちんとカバーされていないケースもあります。そこで、台風等による損害をカバーするための火災保険のかけ方のポイントについて解説します。

「2018年より前」に加入した「火災保険」は要注意

火災保険においては、台風の被害は大きく分けて2種類です。風によるものが「風災」、「洪水」「土砂崩れ」「高潮」等によるものが「水災」と扱われます。いずれも深刻なものですが、近年、特に激甚化しているのが「水災」です。

インターネット上で「火災保険」で検索すると、「火災保険の支払額全体のうち水災の占める割合は低い」としている記事を目にすることがあります。しかし、このような記述は古いデータをもとにしている可能性があります。なぜなら、火災保険の「水災保険金」の支払額のデータを確認すると、2018年を境に、水災被害が激甚化していることがみてとれるからです。

【図表1】は火災保険の「水災保険金」支払額の推移をまとめたものです。2010年~2017年では147億円(2015年)が最高ですが、2018年に609億円、2019年に1,237億円、2020年に252億円と、激増しています。

2018年より前の時点で被害に遭う可能性が低かった地域や、想定される損害の程度が低かった地域も、現在では事情が大きく変わっている可能性があるということです。また、後述しますが、2018年より前の時点では、水災補償における「床下浸水」による被害の補償が不十分でした。したがって、火災保険を見直してみることをおすすめします。

風水害の激増・激甚化には「地球温暖化」が影響しているといわれており、この傾向は今後も続くとみられます。

そこで、現在加入中の火災保険について至急行っていただきたいのが、以下の2点です。

ハザードマップをチェックすること

・水災保険金の支払い条件をチェックすること

まず「ハザードマップ」をチェック

まず、水災補償が必要かどうかをチェックするために、自宅があるエリアについて、国土交通省市町村が公開している「ハザードマップ」を確認してください。

ハザードマップでは、「洪水」「土砂災害」「高潮」のリスクがあるエリアを確認することができます。もし、自宅が浸水等の被害を受ける可能性があるエリアに属しているならば、火災保険に水災補償を付けておく必要があるということです。

ハザードマップは不定期に更新されるので、折に触れてチェックし、最新の情報に気を配ることをおすすめします。

火災保険の水災保険金の支払い条件をチェック

ただし、火災保険に水災補償を付けただけでは、不十分なことがあります。

水災保険金の支払い条件で要注意なのが、「浸水条件」です。浸水条件とは、以下の3つの条件のいずれかをみたすことをいいます。

【浸水条件(※以下のいずれか)】

1. 床上浸水

2. 地盤面から45cm超の浸水

3. 再調達価格(新価)の30%以上の被害の発生

ごく大ざっぱにいえば、いわゆる「床下浸水」は基本的にカバーされないということです。しかし、もしも床下浸水がまったくカバーされないとなると、床下に置いてあることが多い重要な機械設備が損害を受けた場合に困ることになります。典型的なのは、以下のようなものです。

・エアコンの室外機

・エネファーム等の充電設備・発電設備・蓄電設備

・エコキュート等の給湯設備

・エレベーター等の昇降設備等

これらの設備が浸水被害に遭った場合、高額な修理費用、買い替えの費用が必要になる可能性が高いのです。

そこで、近年、特定の重要な機械設備に限って、浸水条件にかかわりなく、一定限度まで保険金を受け取れる特約が設けられました。保険会社によりますが、「特定設備水災補償特約」等の名前がついています。この「特定設備水災補償特約」は、2019年頃から発売されたものです。したがって、水災被害が激甚化傾向を示す2018年より前の時点では、なかったものです。

もし、ハザードマップで被害が予想されるエリアに家があるならば、水災補償を備えるだけでなく「特定設備水災補償特約」も検討することをおすすめします。

なお、2024年に、個人向け火災保険の水災補償に関する保険料の算定基準の見直しが予定されています。現在は水災補償の保険料は全国一律ですが、実際には地域ごとにリスクが異なるので、「市区町村ごと」に「5段階」に細分化される見通しです。

算定基準の見直し結果は公表されるので、それを受けて自分が居住するエリアの保険料の値上げが予想される場合は、なるべく早期に火災保険の見直しを行うことをおすすめします。

(※画像はイメージです/PIXTA)