オーストラリア空軍のC-17A大型輸送機が2023年8月28日石川県の小松基地に飛来しました。同軍のC-17東日本大震災でも日本に飛来し、活動した実績があります。今回の飛来の目的をひも解きます。

石川県の小松基地で日豪共同訓練を実施

オーストラリア空軍の大型輸送機C-17A「グローブマスターIII」が、2023年8月28日午後、石川県航空自衛隊小松基地に着陸しました。目的は今月末頃からこの場所で行われる日豪共同訓練「武士道ガーディアン23」に関する人員と支援機材を運び込むためです。

武士道ガーディアン23」は今月末から来月(9月)15日まで行われる、航空自衛隊オーストラリア空軍の共同訓練です。オーストラリア空軍の最新鋭戦闘機F-35AライトニングII」が6機、初めて日本に飛来しますが、航空自衛隊側もF-35F-15F-2の3機種合計26機が参加する予定で、非常に規模の大きな訓練となるようです。

なお、今回のC-17以外にも後日、オーストラリア空軍のC-130J「ハーキュリーズ」輸送機と、KC-30MRTT空中給油輸送機が1機ずつ飛来する予定ですが、C-17は「武士道ガーディアン23」に関する最初の飛来機となったため、28日の到着時には事前入国していたオーストラリア軍人とともに、小松基地所属の自衛隊員らが隊旗を掲げて盛大に出迎えていました。

オーストラリア空軍のC-17輸送機は、これまでも日本に何度か飛来していますが、なかでも特筆すべきは2011年に発生した東日本大震災での救難支援活動があげられます。

東日本大震災の支援活動で保有数の4分の3を日本へ

2011年3月11日宮城県沖の太平洋で発生した地震は、東北地方を中心に日本の広い地域が被災する大災害になりました。この震災に対してアメリカ軍は「トモダチ作戦」と命名した大規模な災害救助・救難と復興支援活動を実施しています。

空母「ロナルド・レーガン」を始めとして、多くのアメリカ軍機や艦船が日本のために活動したのはあまりにも有名ですが、救助・支援にあたるべく日本に駆け付けたのはアメリカだけではありません。世界各国が日本の被害を目の当たりにして速やかに対応しており、それはオーストラリアも同様でした。

発災後まもなくオーストラリアは、国内の警察、消防、救急隊員で構成された「緊急サービスタスクフォース」を組織し、日本へ派遣しています。その行動は素早く、震災発生から3日後の3月14日には自国空軍のC-17輸送機在日米軍の横田基地へ飛来しています。

その後、「緊急サービスタスクフォース」とは別に、輸送を行ったC-17輸送機はそのまま横田基地に残って、日本とアメリカへの輸送支援活動を継続しました。この時期のC-17輸送機の活動は「パシフィック・アシスト作戦」と命名され、3月25日の帰国までに23回の輸送飛行を行い、車両41台、乗客135人を含む450tの物資を運んでいます。

また、3月22日には別の2機のC-17輸送機が、遠隔操作の放水装置をオーストラリアから日本まで空輸。この装置は福島第一原子力発電所での事故対応に使われています。

当時、オーストラリア空軍が運用していたC-17輸送機は4機しかありませんでしたが、そのほとんどすべてが一時的ではあるものの、日本での災害支援活動に投入されており、そこからも同国は東日本大震災において多大なる支援を行ったといえるでしょう。

今度は航空自衛隊の輸送機がオーストラリア救援へ

じつは「パシフィック・アシスト作戦」については後日談があります。

東日本大震災からしばらく経った2019年9月、オーストラリア南東部で大規模な森林火災が発生。翌年になってもその火は衰えず、約1000万ヘクタール以上の土地が延焼したため、オーストラリア国防省は消化活動支援と被災者救助を行う「ブッシュアシスト」作戦を発動します。

この作戦には海外からも支援が行われ、日本も「オーストラリア国際緊急援助空輸隊」として航空自衛隊C-130H輸送機2機をオーストラリアへ派遣し、消火活動にあたる人員輸送を行いました。

そのようななか、前出の空輸隊を指揮した航空自衛隊の太田将史1等空佐(当時)は、地元メディアのインタビューにおいて、2011年にオーストラリアが行った東日本大震災での支援に対して謝辞を述べたのです。それは、オーストラリアという国全体に対するお礼だけでなく、同じ輸送機に関わる隊員としての感謝と親近感も込められていたのでしょう。

日本とオーストラリアは2007年に安全保障に関する日豪共同宣言に署名し、多くの共同訓練や部隊交流を行っています。今月には相互の部隊訪問がよりスムーズになる「日豪円滑化協定」も発効され、今回来日したC-17Aが参加する「武士道ガーディアン23」のような共同訓練の機会も増えていくことになるでしょう。

オーストラリア空軍のC-17A輸送機は、他の国の機体と同じグレイ系の塗装となっており、見分けるポイントは胴体部分の「オーストラリア空軍」の英語文字、ハッチ上部の国旗マーク、それに垂直尾翼の部隊マークなどである(布留川 司撮影)。