東急田園都市線の駅改札に「クレカタッチ決済」「QRコード」に対応した機器が登場しました。今後、更なる拡大が予定されています。

「クレカタッチ」&「QRコード」乗車サービスの実証実験が開始

いつもの自動改札機に、交通系ICカードリーダー以外の読み取り機が複数追加されたゲートが東急田園都市線の駅に登場しました。東急電鉄が2023年8月30日(水)から開始した「クレジットカードのタッチ決済」「QRコード」を活用した乗車サービスの実証実験に対応した改札です。

運用開始の前日8月29日(火)、渋谷駅に設置された新型改札機が報道陣に公開されました。この改札機は、クレジットカードやQRコードの読み取り部が大きく張り出しているのが特徴で、遠目からでもかなり目立っています。

クレジットカードのタッチ決済は、海外の人も普段のクレジットカードで公共交通を利用できることから、世界中で普及が進んでいます。日本では一部の高速バスで先行し、鉄道では南海電鉄JR九州福岡市営地下鉄などが導入していますが、首都圏の鉄道では江ノ電のみが対応している状況でした。

しかし、8月には東京メトロも導入を表明し、今回、東急が実証実験の報道公開を行うなど、徐々に風向きが変わりつつあります。もともと東急は2022年12月より、クレジットカードのタッチやQRコードのほかiD、QUICPayWAONnanaco楽天Edyなどにも対応した“全部盛り”的なコインロッカーを、渋谷駅の一部で導入していました。

満を持して改札機に登場したクレカタッチやQRコード決済方式ですが、まだ、利用は限定的といえます。

今回の実証実験で自動改札機をクレジットカードやQRコードで利用するためには、デジタルチケットサービス「Q skip」への会員登録が必要です。「Q skip」では企画乗車券田園都市線世田谷線ワンデーパス」「田園都市線世田谷線東急バス ワンデーパス」「世田谷線散策きっぷ」が販売されます。

利用する際には、スマートフォンなどから「Q skip」公式サイトにログインしたうえで、企画乗車券を購入し、利用日に画面に表示される「利用開始」を選択。「タッチ機能に対応したクレジットカード」または「QRコード」を改札機の読取部にかざします。

「新たな乗車サービス」導入の背景とは

新型改札は、現時点では田園都市線のみに設置。今後、東横線など他線に順次拡大される予定です。また、デジタルチケットサービス「Q skip」も現時点では1日乗車券だけしか購入できませんが、将来的には東急沿線施設と乗車券のセット商品や、有料座席指定サービス「Q SEAT」の座席指定券も購入可能になります。

さらに2024年春以降、クレカタッチやQRコードによる「後払い型乗車サービス」の導入が検討されています。webサイトでの事前購入を不要とし、企画乗車券だけでなく、一般的な普通乗車券としての利用も可能になります。

今回の取組みの背景について、東急電鉄の担当者は「これからの鉄道サービスを考えた際に、都心と住宅地を一方通行で結ぶだけでなく、沿線全体を動き回っていただけるようなサービスを展開していきたいと考えていました」と話します。

これまで東急電鉄は、輸送力の増強など「通勤を中心としたライフスタイル」を支えることに注力してきましたが、今後はライフスタイルの多様化やソフト面の連携を活用したサービスを推進していく方針です。

今回の乗車サービスが、田園都市線からの導入になった理由については、全線での改札整備スケジュールの都合や、同線沿線に東急系の施設が多くあり、商業施設などと連携した企画乗車券を開発しやすい環境を考慮したことによるものだそうです。

東急田園都市線(画像:写真AC)。